「昇給したのに手取りが減った…?」年収800万円ラインで“損する人”の共通点とは
この記事では、「年収800万円前後にあり、昇給しても逆に手取りが減ってしまうケース」や、その原因となる仕組みについて考察します。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
まずは社会保険料の影響が考えられる
昇給したにもかかわらず、手取りが減ったと聞いて真っ先に想定できるのは、社会保険料の存在です。特に健康保険料と厚生年金保険料は、収入を一定の区分に区切った標準報酬月額によって決まるため、人によってこうしたことが起こることがあります。
例えば、月収が63万4000円(報酬月額が60万5000円以上63万5000円未満、標準報酬月額62万円)で、厚生年金保険料が5万6730円に当たる人が、63万6000円(報酬月額が63万5000円以上、標準報酬月額65万円)になったとすると、厚生年金保険料が5万9475円となります。
昇給額が月2000円にもかかわらず、保険料は厚生年金保険料だけで2745円も増えるため、手取りが減るということになるのです。
所得税の累進課税の影響も考えられる
年収800万円前後の人の場合、所得税の税率はおおむね20%となるでしょう。しかし、昇給したことで、所得控除の内容など個別の事情によって、所得税の税率が高くなることもあります。
なぜかというと、日本の所得税は累進課税であるため、収入が多ければ多いほど、その税率も高くなる仕組みだからです。
例えば、所得税の税率が20%のライン(課税所得金額330万円から694万9000円まで)に収まっていた人が、昇給したことで所得税率が23%(課税所得金額695万円から899万9000円まで)にアップするなどです。
ただし、所得税を計算する際には、課税所得金額にそれぞれの税率を乗じるほか、控除額も設けられています。これにより、税率が上がっても、税金の上昇率はなめらかになっています。
手取りが減ったと思ったら節税を検討すべき
節税といえば、個人事業主や会社経営者が考えること……と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。会社員であっても、節税は可能です。
例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)がひとつの例です。iDeCoに拠出した掛け金は、全額所得控除となるため、課税対象となる所得の額を抑え、税金を安くすることができます。そのほか、ふるさと納税も節税に大きく役立ちます。
また、会社から通勤手当が支給されているような場合、会社の近くに引っ越して交通費を下げるのも手です。実はこの通勤手当は、健康保険料や厚生年金保険料の計算において、標準報酬月額の対象に含まれるのです。
先に述べたように、健康保険料と厚生年金保険料は、一定の区分で収入が区切られているため、交通費を数百円削減するだけで、保険料が数千円減額されるということも珍しくはありません。
引っ越し代などのコストもかかるため、単純に損得の判断はできませんが、ひとつの方法として知っておくとよいでしょう。
まとめ
年収800万円では、昇給による税金・社会保険料の増加などで、手取り増が見えにくくなることがあります。
年収800万円前後の収入帯の人は、所得税の累進課税や社会保険料の負担の影響などで、昇給によって手取りが減るケースもあるでしょう。
昇給によって手取りが減る、いわば損をする状況が起こらないよう、あるいは起こってもすぐに対応できるよう、税金や社会保険料の仕組みについて知っておくことをおすすめします。
執筆者 : 柘植輝
行政書士
