年収1000万円を超えると“損する”って本当? 「高年収」ならではの負担増のリアルとは

配信日: 2025.07.22 更新日: 2025.10.21
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年収1000万円を超えると“損する”って本当? 「高年収」ならではの負担増のリアルとは
年収1000万円を超えている、と聞くと、「裕福」「勝ち組」といったイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。しかし実際には、税金や社会保険料などの負担が増加し、生活の余裕を感じにくいケースも少なくありません。
 
そこで本記事では、年収1000万円を超えているなど、「高年収」ならではの負担増のリアルについて解説します。
柘植輝

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年収1000万円を超えてきて見える「税金と社会保険料」の負担増

まず所得税において、日本では累進課税制度を採用しているため、原則として年収が上がるほど負担する所得税額も上がります。
 
また給与所得者の場合、所得税の計算の際に収入金額から差し引かれる控除のひとつに「給与所得控除」がありますが、年収が850万円を超えると控除額が上限に達し、それ以上の年収があったとしても一定の金額しか控除されなくなります。
 
所得税は各種所得控除を差し引いた後の課税所得金額に応じて税率が変動するため、引かれる控除が少なくなればその分課税所得金額が高くなり、所得税も高くなるというわけです。
 
加えて、社会保険料(健康保険、年金保険など)も、基本的に収入に比例して増加するため、税金と社会保険料を合計すると、年収の30%もの額が天引きされるケースも珍しくありません。年収1000万円の場合、手取り額が700万円程度になってしまうこともあり得るのです。
 
とはいえ、基本的に手取りがマイナスになったり、年収400万円や500万円の方より手取りが小さくなったりするわけではないので、厳密にいうと、損をしているわけではありません。
 

配偶者控除も少なくなる

年収が1000万円を超えてくると、先に述べた給与所得控除以外の所得控除も少なくなってきます。
 
例えば、所得税法上の一般の控除対象配偶者がいる場合に受けられる配偶者控除は、満額で38万円であるところ、合計所得金額が900万円を超えると、26万円に減ります。さらに収入が上がり、合計所得金額が950万円を超えると、その控除額は13万円にまで減少します。
 
さらに、配偶者控除を受けられない場合に適用される配偶者特別控除も、段階的に小さくなっていきます。
 
とはいえ、基本的に多くの控除が年収1000万円を超えても引き続き受けることができるため、控除の観点から見ても、負担こそ増えるものの、損をするわけではありません。
 

公的支援が減少する

年収1000万円を超えると損をする、といわれることには、公的支援の減少もあります。かつては「高校無償化」や児童手当の支給要件などを中心に、所得制限が設けられていました。
 
しかし、2025年度より、「高校無償化」の所得制限の一部が事実上撤廃されています。
 
また現在では、児童1人につき月額1万円から1万5000円(第3子以降は3万円)が支給される児童手当の所得制限も撤廃されています。
 
さらに、2025年度からは、「大学無償化」も拡充され、子どもを3人以上同時に扶養している世帯では、所得制限なく、国の定める一定額まで大学などの授業料・入学金が無償となります。
 
これらの流れを踏まえると、子育て支援という観点においては、「高年収だから損をする」とは一概にいえないと考えられます。
 
ただし、給付型奨学金や各種給付金などにおいては所得要件が設けられている場合もあり、高年収であることによって「損をしている」と感じるケースもあるでしょう。
 

まとめ

年収1000万円を超えると、確かに税金や社会保険料の負担は大きくなり、想定より手取りは増えにくいのが実情です。しかし、稼いだお金以上に税金や社会保険料がかかることは基本的にはなく、収入に応じた負担を負っているにすぎません。
 
高年収者には高年収者ならではの負担があるのは事実ですが、損をしているとまでは言い切れないのもまた事実です。
 
ここはひとつ、年収1000万円を超えると「損をする」というのではなく、稼いでいる分、いざというときの保障や将来への備えが増えると考え、前向きにとらえてみてはいかがでしょうか。
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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