2020年代に最低賃金を「1500円」へ… 実現のためには毎年いくらずつ最低賃金を上げる必要がある?
政府は目標の達成時期を「2020年代中」に前倒しするとしていますが、2024年時点の全国加重平均額はまだ1055円です。残された時間で、どれだけのスピードで引き上げが必要なのか? 本記事ではその現実に迫ります。
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2020年代に「最低賃金1500円」は本当に達成できるのか?
政府は近年、「2030年代半ばまでに最低賃金(全国加重平均)を時給1500円へ引き上げる」という目標を掲げてきましたが、現政権はこの達成時期を「2020年代中」に大きく前倒しする方針を打ち出しています。
2024年度の全国平均最低賃金は1055円となり、前年より51円高い過去最大の引き上げ幅を記録しました。東京都ではすでに1163円に到達しています。一方、全国加重平均で1500円を目指すとなれば、数年間で約445円の上昇を実現しなければならず、かつてないスピード感が求められています。
年ごとに必要となる最低賃金の引き上げ幅は?
仮に「2029年度末」に1500円を達成するとします。現在の全国平均は1055円(2024年)であるため、2025年から2029年までの5年間で445円の上昇が必要です。単純計算すると、1年あたり約89円、率にして8.4%程度の上昇となります。
2024年は約5%の上昇であり、過去最大幅となりましたが、過去10年の平均的な引き上げ率は年3%前後です。そのため、1500円までの道のりは急勾配であり、目標達成には過去の水準をはるかに上回るペースで賃金を引き上げる必要があるでしょう。
最低賃金の大幅引き上げが「家計」と「経済」にもたらす影響とは
最低賃金引き上げは、低所得層の生活改善や消費拡大につながると期待されています。例えば、時給50円が上がると、週20時間働くパートタイマーで月4000円、年間4万8000円の賃金増となります。家計への直接的な恩恵が生まれ、消費活動の活発化にもつながるでしょう。
一方、企業側、特に中小企業には人件費増加による経営圧迫という課題があります。経常利益への影響や、人材確保の難しさ、倒産リスク増大などの懸念もあります。また、賃上げによって「106万円の壁」や「130万円の壁」など社会保険や税金の負担増問題にも注意が必要です。
経済全体では、賃金上昇が消費・生産を押し上げる好循環も期待できる一方、企業負担増による価格転嫁・雇用調整といった副作用にも丁寧な対策が必要です。
まとめ
最低賃金1500円を2020年代に実現するためには、賃上げ余力の小さい中小企業への生産性向上支援、設備投資や価格転嫁を後押しする公的助成、雇用調整の柔軟化など多角的な政策が不可欠です。
家計にポジティブな影響を広げつつ、企業負担にも配慮した「持続可能な経済成長」の実現には、国・自治体・民間の連携や、社会保険・税制の見直しも同時に進める必要があるでしょう。最低賃金の引き上げをきっかけに、日本経済が新たな成長循環へと進むことが期待されます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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