ニュースでよく聞く「実質賃金」の「実質」ってどういう意味? 「通常の賃金」との違いは?

配信日: 2025.07.31 更新日: 2025.10.21
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ニュースでよく聞く「実質賃金」の「実質」ってどういう意味? 「通常の賃金」との違いは?
経済ニュースや新聞で登場する「実質賃金」という言葉。賃金と聞くと、多くの人は給与明細の金額や口座に振り込まれる額を思い浮かべることでしょう。
 
賃金には「名目賃金」と「実質賃金」という2つの異なる指標があり、それぞれが示す意味は異なります。
 
そこで本記事では、実質賃金の「実質」とは何なのか、名目賃金と何が違うのか、計算方法をまとめました。
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実質賃金とは何か

一般的に、給与明細に記載されている額面、つまり税金や社会保険料が差し引かれる前の金額を名目賃金といいます。
 
実質賃金とは、名目賃金から、物価変動の影響を差し引いて算出した指数です。給与の額面だけでなく、そのお金でどれだけの商品やサービスを購入できるか、すなわち「購買力」を示すものです。物価が上昇すれば、同じ金額でも買えるものが減り実質賃金は下がることになります。
 

実質賃金の計算方法

厚生労働省の「毎月勤労統計調査における賃金の伸び率について」によれば、実質賃金は以下の式で算出されます。
 
実質賃金=名目賃金÷消費者物価指数×100
 
・名目賃金:現金給与総額(基本給、残業代、各種手当などを含む)
・消費者物価指数:物価の変動を示す指数。
 
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」では「持家の帰属家賃を除く総合指数」が用いられています。
 
名目賃金が30万円、消費者物価指数が105(基準年=100)の場合を計算してみましょう。
 
実質賃金=30万円÷105×100=28万5714円
 
この計算から、物価が上昇すれば実質賃金は下がり、物価が下がれば実質賃金は上がることが分かります。
 

日本における実質賃金の動向

経済ニュースでは「実質賃金が〇ヶ月連続でマイナス」といった報道がされることがあります。これは、名目賃金の上昇が物価上昇に追いついておらず、私たちの生活に少なからず影響を与えている状況を示していると考えられるでしょう。
 
日本経済は長らくデフレーションからの脱却を目指してきましたが、ここ数年は円安や国際的な原材料価格の高騰、供給制約などにより、物価上昇が顕著になっています。
 
一方で、賃上げは緩やかであり、結果として多くの期間で実質賃金がマイナスで推移する状況が見られました。
 
実質賃金の停滞は個人の消費意欲を冷え込ませ、経済全体の成長を抑制する要因ともなり得るでしょう。
 
企業がコスト増を価格に転嫁することで物価は上昇する可能性が高くなりますが、それが従業員の賃金に十分反映されない場合、働く人々の生活は苦しくなり、消費を控えるようになると考えられます。
 

実質賃金の上昇には何が必要?

実質賃金の伸びは、経済成長と密接にかかわっています。生産性が向上し、企業が利益を上げ、その利益が従業員の賃金として還元されれば、実質賃金も上昇するでしょう。
 
実質賃金の上昇は人々の購買力を高め消費を刺激し、企業のさらなる生産活動を促す好循環を生み出すといえます。
 
しかし日本の場合は、企業が内部留保を積み上げる一方で、賃金の上昇が十分でなかった期間が長く続きました。これは、企業の慎重な経営姿勢や労働組合の交渉力の変化など、さまざまな要因が絡み合った結果と考えられています。
 
労働力の質向上、業務効率化による生産性向上、政府による対策の重要性が一層増すでしょう。
 

購買力や生活水準を表す実質賃金は、私たちの生活の実態を示すものといえる

実質賃金は、日々の生活でどれだけの豊かさを感じられるか、将来に向けてどれだけの希望を持てるかを示しているといえるでしょう。
 
名目賃金の動きだけではなく、物価変動も考慮して実質賃金がどう動いているのかを常に意識することが大切です。そうすることで、家計状況をより正確に把握でき、適切な消費行動につながるでしょう。
 
政府や企業、私たち一人ひとりが実質賃金の重要性を認識し、その向上に努めることが、持続的な経済成長と豊かな社会の実現に欠かせないといえます。
 

出典

厚生労働省 毎月勤労統計調査における賃金の伸び率について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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