年収が高いのは損!? 年収「850万円」を超えると「税金」や「社会保険料」の負担はどう変わるの?
この記事では、年収850万円を超えると具体的にどのような変化が起き、また税金や社会保険料の負担が増える場合にどのような対策が考えられるのかをまとめました。この記事が年収の壁の理解につながれば幸いです。
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年収850万円の壁とは
日本の税制において、年収850万円はひとつの分岐点といえます。なぜなら、この金額を境に、税金や社会保険料の負担が大きく変化し、場合によっては手取り収入の増加率が鈍化する現象が発生するためです。
年収850万円の壁は、主に所得税の給与所得控除の上限設定と密接にかかわっています。2020年の税制改正により、この水準を超えると税負担が段階的に重くなる仕組みが導入されました。具体的には、以下のような変化が挙げられます。
・所得税・住民税の負担増加
・社会保険料の増加と負担率の変化
・遺族年金や加給年金などの資格喪失
これらにより、年収850万円を超えた時点で、手取り額の伸びが鈍化する可能性があります。
年収が850万円を超えると負担はどう変わる?
年収が850万円を超えると、所得税や住民税、社会保険料などの負担がどう変わるのかを見ていきましょう。
給与所得控除・配偶者控除
給与所得者の場合、年収850万円を超えると、所得から控除される金額は一律195万円に固定されます。そのため、それ以下の年収と比べて課税対象となる所得が増え、実質的な税負担率が上昇することになるといえます。
また、合計所得金額が900万円(給与収入のみの場合、年収1095万円)を超えると、配偶者控除や配偶者特別控除が段階的に縮小し、1000万円(同上、1195万円)を超えると適用されなくなります。
所得税
日本の所得税は超過累進課税が採用されており、これは課税所得が高くなるほど税率が上がる仕組みです。年収850万円を超えると、より高い税率区分に該当する可能性が高まります。
所得税の税率は、課税所得が695万円超〜900万円以下が23%、900万円超〜1800万円以下が33%です。つまり900万円を超えると、一気に10%税率が上がることになります。
社会保険料
厚生年金保険料や健康保険料、介護保険料は標準報酬月額を基に計算します。標準報酬月額とは、複数月の給料平均から算出した金額です。収入が増加すれば、それに伴って保険料は増加することになりますが、上限が設定されています。
雇用保険料は年収に関係なく一定の料率で計算されるため、年収850万円を境とした特別な変化はありません。ただし、年収が増加するとともに保険料の絶対額は基本的に増加します。
年金
年収が850万円以上ある場合、遺族年金や加給年金の受給資格は原則としてありません。ただし、近い将来収入が減少する見込みがある場合や収入が不安定な場合は、例外的に受給が認められる可能性があります。その場合は状況に応じて、必要な書類を提出して証明しなければいけません。
年収850万円の人の損を減らす対策
年収が高くなるほど、ふるさと納税による税金の控除効果は大きくなります。最大限活用することで実質的な負担を軽減できるでしょう。
また、所得金額調整控除(収入から850万円を引いた部分の10%が給与所得から控除できる制度。条件あり。)を利用したり、年末調整時にはiDeCoの拠出金、生命保険料、地震保険料などをもれなく申告したりすることで、税負担を軽減することも大切です。
年収850万を超えると、税負担が増えたり各種控除を受けられなくなることがある
年収850万円を超えると、控除が受けられなくなったり、税金や社会保険料の負担が大きくなったりすることで、手取り額の増加率は鈍化するといえます。
資産を守るためには、税制や社会保険の仕組みを理解し、自分の状況に合わせた最適な対策を講じることが大切です。目先の「損得」だけにとらわれず、長期的な視点でキャリアと資産形成を考えていきましょう。
出典
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
