賞与の“給与化”で月の手取り10万円増! その分、社会保険料は上がってしまう? ボーナスを給与扱いにするメリット・デメリットとは
この記事では、「賞与の給与化」が私たちの暮らしにとってプラスになるのか、気になるポイントを整理しました。
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「手取り月10万円増」は現実的か? 賞与の給与化で手取りが増える仕組みとは
まず、「賞与の給与化」とは、通常年2回支給される賞与(ボーナス)をカットし、同じ総額を月給として均等に上乗せする仕組みです。例えば、ある大手企業では、2025年から冬の賞与を廃止し、月給を最大14%増額したと報じられています。これは年収を維持したまま月々の収入を安定化させる手法です。
月10万円の手取り増は、例えば賞与200万円(年間)を月換算(+約16万7000円)して見た場合、社会保険料や税金を差し引いて、手取り増が10万円程度になる可能性はあります。ただし、地域や保険料率、扶養状況などによって実際の手取り額は変動します。
賞与の給与化で社会保険料はどう変わる?
賞与にも税金や社会保険料はかかりますが、給与と仕組みが異なります。社会保険料に関しては、以下のように算定方法が分かれています。
・健康保険・介護保険・厚生年金保険
「標準賞与額」に保険料率を乗じ、その半額を本人負担とする方式。
※標準賞与額:税引き前の支給額から1000円未満を切り捨てたもの
・雇用保険
賞与総支給額(切り捨てなし)に保険料率をかけて計算する。
さらに、賞与には社会保険料の上限が設けられている点も特徴です。日本年金機構によれば、標準賞与額の上限は、健康保険では年度累計額573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限です(同月内に2回以上支給される場合は合算)。一方、給与は標準報酬月額に応じた等級計算で上限が異なります。
月給が上がると標準報酬月額の等級も上がり、その結果として社会保険料の負担が増える可能性があります。一方で、給与と賞与の配分を見直すことで、場合によっては社会保険料の負担が軽減されるケースもあります。ただし、これらの調整は適正な報酬設定が求められ、法令に適合した範囲で行う必要があります。
賞与の給与化によるメリット・デメリットを比較してみる
賞与を給与に組み込むことは、従業員にとっても企業にとっても一長一短があります。そこで、具体的なメリットとデメリットを整理してみましょう。
(1)メリット
従業員にとっては、月々の手取りが安定することで家計の管理がしやすくなり、精神的な安心感も得やすくなります。企業側は、給与ベースを引き上げることで初任給も上がり、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
(2)デメリット
月給が上がると標準報酬月額の等級も上がり、その結果として社会保険料の負担が増える可能性があります。また、業績に応じた報酬を求める従業員はモチベーションが下がるかもしれません。さらに、賞与を給与に組み込むと、業績が悪化しても賃金を容易に引き下げられなくなる可能性があります。
このように、賞与の給与化には安定した収入や人材確保といった利点がある一方で、社会保険料負担の増加や賃金調整の困難さといった課題も残ります。導入にあたっては、自社の経営状況や従業員のニーズを踏まえた慎重な判断が必要です。
まとめ
「賞与の給与化」は、収入の安定化を望む従業員にとって魅力的な制度になり得ます。とはいえ、社会保険料の負担がトータルでどうなるかは、標準報酬月額の等級変化や標準賞与額の上限適用などの制度要件に左右される重要なポイントです。
給与化の前には、具体的なモデル事例やシミュレーションを行い、「手取り+社会保険料」双方の観点で得になるかどうかの検証が必須です。
月給換算と年間賞与のバランスを慎重に調整し、労使双方にとって納得感のある設計を目指す必要があるでしょう。
出典
日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
