親が医師でなければ「医師になる夢」を叶えるのは難しい? 学費に「数千万円」…収入格差から見えた“厳しい現実”とは
しかしその一方で、医学部への進学には非常に高いハードルが立ちはだかります。学力や忍耐力といった本人の資質に加え、家庭の経済力が大きく影響するという現実があるのです。
果たして、「親が医者」であれば、子どもも医者になりやすいのでしょうか? 本記事では医学部の学費や親の収入の面から見る、現実的な壁について解説します。
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目次
医学部の学費はどれくらいかかる?
まず押さえておきたいのは、医学部に進学する際の学費です。
国立大学は国が入学金と授業料の標準額を決めており、医学部であっても、国立大学では学費は他学部とほぼ同額です。具体的には、入学金は約28万円、授業料は年間約54万円ですので、6年間で合計350万円前後に収まります。
しかし、私立大学医学部の場合は学校によって差がありますが、6年間の合計が約2000~4500万円とされています。これに加え、教材費や実習費、生活費も考慮すると、さらに大きな経済的負担となるでしょう。
平均年収の家庭では、私立医学部進学は厳しい?
国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者の平均年収は約460万円です。これに対して、私立医学部の6年間でかかる学費が安めの2000万円としても、単純計算で年収の4~5年分に相当する金額です。共働きで両親ともに平均年収だったとしても世帯年収920万円で、学費は年収の2倍を超えます。
教育ローンなどの利用を前提にしても、平均的な収入の家庭がこの費用を捻出するのは、相当に難しいのが実情です。学費だけでなく、受験対策としての予備校費用、模試・検定などの諸費用も加わることを考えると、本人のやる気だけではどうにもならない場面もあるかもしれません。
もし親が医者だったら? 医師の平均年収は約1338万円
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は約1338万円とされています。これは先ほどの給与所得者の平均年収の約3倍におよびます。
この収入水準であれば、私立医学部への進学費用も比較的現実的な選択肢になります。加えて、親自身が医師であれば、医療現場や受験情報へのアクセスもしやすく、教育環境としても有利といえるでしょう。
親が高収入だと、子どもも高収入に?
親が高収入だからといって子どもも高収入になるとは限りませんが、ある程度の相関関係はあると考えられます。
一般的に、親が高収入のほうが塾や家庭教師などの教育環境は整えやすくなります。学習環境の良さは学歴にもつながり、結果的に高収入につながることもあるでしょう。
医師を目指す道は「親が医者」でなくても開ける
ここまで見てくると、「親が普通のサラリーマンでは医者は厳しい」と思うかもしれませんが、経済的な不安を抱える学生でも医師を目指せる道は存在します。代表的なものが、奨学金制度、自治医科大学や防衛医科大学校への進学です。
例えば奨学金としては、東京都では将来、医師として東京都の地域医療に従事する強い意志を持つ医学部生(都が指定する大学が実施する「東京都地域枠入学試験」に合格し入学する人)に、奨学金を貸与する制度があります。もちろん、このような「地域枠」制度は東京都だけでなく、ほかの自治体でも導入されています。
自治医科大学は入学金・授業料などが全額貸与され、卒業後は出身都道府県に戻り、へき地を含む地域医療に一定期間従事することで返還免除となります。
また、防衛医科大学校では学費がかからないだけでなく、在学中に給与が支給されます。これは、在学中でも防衛省職員という身分に該当するためです。なお、防衛医科大学校も卒業後、一定の期間の自衛隊勤務で学費の返還は免除されます。
このように、進学先や将来の進路に応じて、さまざまな支援制度を活用することで、「親が医者でないから医学部は無理」とあきらめず、努力が報われることもあるでしょう。
まとめ
医師になるには長い学びの期間と多くの学費が必要で、特に私立医学部では数千万円にのぼる費用がかかるケースもあります。そのため、親が医師などの経済的に余裕のある家庭の子どものほうが有利であるのは否めません。
しかし一方で、自治医科大学や防衛医科大学校のように学費がかからず、将来の勤務を条件に奨学金の返還が免除される制度も整備されています。
こうした支援制度を活用すれば、努力と情報収集次第で、夢へのハードルを乗り越えられることもあるでしょう。
出典
文部科学省 国公私立大学の授業料等の推移
国税庁 令和5年分民間給与実態統計調査
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

















