大企業の夏のボーナスが「100万円」と聞きショック! 自分は中小企業で「40万円」くらいでしたが、なぜこんなに違うのでしょうか?“支給水準の差”が生まれる理由とは
実際、日本経済団体連合会(経団連)が、「従業員500人以上の大手企業247社」を対象に2025年夏の賞与・一時金の妥結状況をまとめた調査によると、ボーナスの平均支給額は97万4000円となりました。この金額を見て「そんなに出るのか」と驚いた人も多いかもしれません。
一方、中小企業に勤める人からは、「うちは40万円程度」「そもそもボーナス自体がない」となどの声も聞こえてきます。同じ「ボーナス」という呼び名でありながら、なぜここまで大きな差が生まれるのでしょうか。
本記事では、企業規模別のボーナスの平均値や、支給水準の差が生まれる理由について解説します。
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大企業と中小企業のボーナス実態
経団連の調査は、一部の大手企業の労使交渉結果をもとにしたものです。そのため、この数字は、大企業の一部の実態に過ぎません。
そこで、より幅広い企業を対象にしたデータとして、厚生労働省が公表している「令和6年賃金構造基本統計調査」をみていきましょう。同調査では、年間賞与の平均額が労働者数の企業規模別に次のように示されています。
・10~99人の小企業:107万円
・100~999人の中企業:159万円
・1000人以上の大企業:231万円
これは年間の賞与の合計額なので、夏と冬を合わせた水準と考えられます。単純に2で割れば、夏のボーナスはそれぞれ約54万円、約80万円、約116万円となる計算です。なお、この数値は役職者のみの平均値ですが、非役職者の場合も、小企業と大企業では賞与の支給水準に倍以上の差があります。
なぜここまで差がつくのか?
なぜ、大企業と中小企業でこれほど支給水準に差が出るのでしょうか。主な理由をみていきましょう。
1. 企業の収益力の違い
大企業は売上規模が大きく、安定した取引先や海外展開などから高い収益を確保しやすい傾向があります。
利益の一部を従業員に還元する余力があるため、ボーナスも高水準となります。中小企業の場合、景気変動や取引先の発注状況に左右されやすく、安定した高額支給が難しいこともあるでしょう。
2. 労働組合の交渉力
大企業には、企業内に労働組合があり、労使交渉を通じて「ボーナスは前年より増額」といった取り決めが行われやすい環境があります。一方、中小企業では労働組合がない場合もあり、経営側の判断で支給額が決まることが少なくありません。
その結果、景気や業績が良くても、ボーナスの金額に反映されないケースがあります。
3. 業種・職種の違い
経団連調査の対象は製造業が中心であり、その中でも輸出関連の大手メーカーなどは業績次第で高額ボーナスが期待できます。対して中小企業は、サービス業や小売業といった人件費率の高い業種が多く、人件費率が高いと利益率が低くなりやすいためボーナスの原資も限られることがあるでしょう。
企業の規模による格差は縮まる?
ボーナスの水準は、景気や業種によって変動しますが、平均的には大企業と中小企業の差は大きく残っています。
ただし、働く側にとって重要なのは、「ボーナスの額」だけではありません。中小企業には、柔軟な働き方や裁量の大きさといったメリットもあり、固定給が安定していれば賞与が少なくても生活の見通しを立てやすい場合もあります。
また、最低賃金の引き上げが中小企業の賃金改善を後押ししています。最低賃金の上昇は基本給の底上げにつながり、結果的にボーナス支給額にも波及していく可能性があるからです。政府は毎年最低賃金を引き上げており、その影響は大企業よりも人件費率の高い中小企業に強く及ぶ可能性があります。
とはいえ、大企業と中小企業の収益力の違いが根本にある以上、短期で差が解消されるとは言い難いかもしれません。
まとめ
厚生労働省の統計を見ても、大企業と中小企業の間には、依然として大きなボーナス格差が存在します。その背景には、収益力や労働組合の有無、業種の特性といった要因があります。
格差は簡単にはなくならないかもしれませんが、まずは自分の働く環境や給与体系を理解することが、納得感を持って働くために大切だといえるでしょう。
出典
一般社団法人日本経済団体連合会 2025年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果(加重平均)
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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