「年収の壁」を意識して働き控えをしている人ってどれくらいいる? 「年収の壁」の種類とそれぞれの違いについても詳しく解説!
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目次
働き控えの現状は? 「年収の壁」を意識する人の割合
「年収の壁」とは、パートやアルバイトなどで働く人が、社会保険料や税金の負担により手取り収入が減らないように意識する年収のボーダーラインのことを指します。家計の手取り収入を少しでも多く残すための選択肢となっており、多くの人が関心を寄せているテーマのひとつでしょう。
総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」によれば、パートやアルバイトで働いている人のおよそ3分の1にあたる約33.2%、約487万人が就業調整をしていると回答しています。
特に年収が50万円から99万円の層では約48.0%(約246万人)、100万円~149万円の層でも約42.9%(約173万人)が就業調整を行っており、年収の壁が多くのパートやアルバイトの方の働き方に影響を与えていることがうかがえます。
106万円・130万円の壁【社会保険料の負担増に直結】
「年収の壁」のうち、社会保険料に関連するのが106万円の壁と130万円の壁です。
まず、106万円の壁とは、勤務先の従業員数が51人以上かつ週の労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額8万8000円以上(年収換算で約106万円)などの条件を満たす場合に、勤務先の社会保険に加入する必要がある年収のボーダーラインです。
年収が106万円を超えると、条件に該当するパートやアルバイトの方は社会保険への加入が義務付けられるため、給与から社会保険料が天引きされ、収入によっては手取りが一時的に減少するという「逆転現象」が生じる場合があります。この現象が、働き控えを引き起こす理由のひとつです。
一方、130万円の壁とは、勤務先の規模や条件にかかわらず、年収が130万円を超えると配偶者の社会保険の扶養から外れるボーダーラインです。扶養から外れると、健康保険料や年金保険料を自身で負担しなければならないため、手取り収入が大幅に減少します。
なお厚生労働省によると、106万円の壁については、最低賃金の状況を踏まえて、令和7年6月から3年以内に撤廃される予定となっています。
配偶者の所得控除に関係する年収の壁【税金上の優遇が減る】
社会保険料の壁に加えて、配偶者の所得控除に関係する年収の壁も存在します。
まず、配偶者控除を受けられる年収上限は123万円、配偶者特別控除を最大38万円受けられる年収上限は160万円です。自身の年収が160万円以下であれば、配偶者は38万円の所得控除を受けられますが、160万円を超えると控除額は減少していきます。
また、配偶者特別控除が完全に適用できなくなるボーダーラインは年収201万6000円です。自身の年収が201万6000円以上になると配偶者特別控除はゼロになります。
自身の手取り収入が減るわけではありませんが、配偶者が所得控除を受けられなくなることで世帯全体の税負担が増し、家計に少なからず影響を及ぼす壁として認識されています。
税制上の「年収の壁」は123万円・160万円の壁になる?
令和7年12月1日からは令和7年度税制改正が施行され、税制上の年収の壁の基準が大きく変わる見込みです。
国税庁によると、今回の改正では、まず給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられ、基礎控除額も増額します。
合計所得金額が2350万円以下であれば基礎控除は従来の48万円から58万円に引き上げられ、そのうち合計所得金額が132万円以下の場合はさらに37万円が加算され、基礎控除が95万円まで拡大します。
さらに、令和7年と令和8年分の時限措置として、合計所得金額が132万円を超え655万円以下の場合には、5万円から30万円が上乗せされ、基礎控除額は63万円から88万円の範囲で適用されることになります。
この改正によって、所得税の「年収の壁」は最大で160万円になり、これまで年収の壁を意識して就労時間を抑えていた人にとっては、より長時間働ける環境が広がることが期待されます。
年収の壁は「種類」と「影響」を理解することが大切
「年収の壁」には、社会保険料に直結するものや配偶者の税金上の優遇にかかわるもの、税制上の壁が存在します。特に社会保険料に関連する壁と税制上の壁は、自身の手取り収入の減少に直結するため、多くの人が働き控えをする理由のひとつとなっています。
これからの税制改正によって選択肢は広がりつつありますが、まずは制度の仕組みをしっかりと理解したうえで、自分にとって最適な働き方を選んでいきましょう。
出典
政府統計の総合窓口(e-Stat)総務省統計局 就業構造基本調査/令和4年就業構造基本調査/全国編 人口・就業に関する統計表 表番号 66 有業者の就業状況に関する表 男女、配偶関係、年齢、所得(主な仕事からの年間収入・収益)、就業調整の有無、従業上の地位・雇用形態別人口(非正規の職員・従業員、フリーランスの者(本業))-全国
厚生労働省「年収の壁」への対応
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)(2ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
