飲食店で正社員として働く21歳の友人。手取りは「25万円」ほどあるそうなのですが、飲食店って20代前半でそんなにもらえるんですか?
本当に飲食業でそれだけ稼ぐことは可能なのか、現実にはどうなのかを、データや実例をもとに分かりやすく解説します。給料の仕組みや業態・地域差も押さえておけば、友人の話が“例外”なのか“あり得なくはない水準”なのか、判断できるようになるでしょう。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
飲食店正社員の平均水準
まず、統計データから“飲食業の給与水準”を見てみましょう。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」を基にすると、宿泊・飲食業の平均月収は約26万9500円です。年齢別に見ると、20~24歳の平均月額給与は約22万1000円であるため、若手正社員が「手取り25万円」という水準は、統計上はかなり高い部類といえるでしょう。
実際、飲食店専門の求人情報サイトによれば、調理スタッフなど一般従業員クラスの正社員月給は20万円台後半〜30万円前後という例もあります。ただし、これらは「店長候補」や「管理職手当あり」「残業込み」「繁忙店」「都市部勤務」といった条件が付くことが多く、20代前半でこれを手に入れるには、かなり条件がいい環境である可能性が高いです。
また、求人情報を見ていると、未経験可の飲食店正社員募集で「月給26万円以上」という条件を出している例もあります。ただ、こうした高めの募集は都市部やブランド力のあるチェーン、あるいは裁量や責任を伴うポジションを期待されるケースが多いようです。
結論として、「20代前半で正社員、手取り25万円」というのは統計的には“やや上振れ”の部類ですが、条件が揃えば十分あり得る範囲であると考えられます。
手取り25万円を実現する条件
では、なぜそのような高めの手取りになることがあるのか。主に以下の要因が関係しています。
(1)基本給+役職手当・管理手当
「店長見習い」「管理者ポジション」「チーフ」「副店長」など、店の運営に関わる責任を負う立場になると、基本給に加えて手当がつくことがあります。特にチェーン展開している飲食企業では、役職手当やマネジメント手当が給料に反映されやすいです。
(2)残業代・深夜手当の充実
飲食店は夜間営業や繁忙時間が多いため、残業や深夜勤務が発生しやすい業態です。これらがきちんと支払われるなら、額面がかなり上がるでしょう。ただし「残業代込み」「固定残業制」といった名目で、実際の残業が評価されないケースもあるため、契約内容を確認する必要があります。
(3)勤務地・都市部であること
東京・大阪・名古屋など人口が多く、飲食需要が高い都市部では、家賃・物価も高いため人件費水準も高めに設定されがちです。地方都市や過疎地域に比べて、給与条件が厚くなる可能性があります。
(4)ブランドチェーン・資本力のある企業
規模が大きくコストを吸収できる企業、成長企業・外食チェーンでは報酬体系が整っており、正社員待遇や報酬の上限も高めになることが多いようです。個人店や零細規模では、そもそも賃金を引き上げる余力がない場合も珍しくないようです。
(5)経験・スキル・実績
調理スキル、マネジメント経験、売上目標達成実績、お客さま対応力などが認められていれば、20代前半でも高待遇を受ける可能性があります。特に「即戦力採用」「ポテンシャル重視採用」ならば、若くても昇給・待遇面の優遇を受けることもあります。
これらの要因が複数重なれば、20代前半で手取り25万円に届くケースも出てくるわけです。
注意点と見極めポイント
友人の「手取り25万円」という話をそのままうのみにするのは危険なので、見極めるためのポイントを押さえておきましょう。
まず、「手取り」がどういう意味かを確認する必要があります。額面月給(基本給+手当)から健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税などの控除が差し引かれて支給される金額が手取りです。控除額が大きければ、額面との差がかなり出るでしょう。一般的には、手取りは額面の7~8割程度といわれています。
したがって、「手取り25万円」を得るには、額面では30万円弱ある水準であることが望まれます。
次に、勤務時間・残業・休日なども聞いておきたいところです。たとえば給料が高く見えても、長時間労働・休日出勤が常態化していれば、その分の対価として残業代や手当がかさんでいる可能性があります。また、固定残業代制度が採用されていて、実際の残業時間分がきちんと払われていないというケースもあるため注意が必要です。
さらに、企業の規模・業態・地域・ブランド力・福利厚生なども重要な判断材料です。全国で展開する人気チェーンなら待遇も厚くなることが多く、小規模店ではそこまで高くならないことが一般的のようです。
最後に、昇給実績や過去の給与履歴も聞いておくといいでしょう。「入社から何年で何万円上がったか」「役職が変わるごとにどれくらい手当が増えるか」がわかれば、その企業がどのくらい“もうけを人件費に回すか”を予測できます。
まとめ
20代前半で飲食店正社員として手取り25万円という水準は、統計的には平均を上回るものです。ただし、条件が良く複数の有利な要素がそろっていれば、決して夢物語ではないでしょう。店長手当や残業代、立地、企業規模、実力や役割などが揃えば、高待遇が実現するケースも存在するのです。
とはいえ、一般的な飲食店・一般社員クラスであれば、20代前半の正社員手取りは20万円前後〜23万円台あたりが相場というのがデータに表れているところです。
友人の話が「額面」「基本給のみ」「手当込みかどうか」などをきちんと確認し、実態を見てから「本当にそうなのか」「例外的な好条件なのか」を判断することも方法の一つでしょう。そしてもしその待遇が本当であれば、就職先としてもかなり恵まれた環境と考えられます。
出典
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概要 産業別
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
