ボーナスが給与化されると「社会保険料」はどう変わる? 年収1000万円でボーナス×年2回もらう場合と比較
本記事では、年収1000万円を前提に、ボーナスを年2回受け取る場合と給与化された場合の社会保険料(特に健康保険・厚生年金保険)の違いをシミュレーションします。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
社会保険料の仕組み
知らない人も多いかもしれませんが、社会保険料(以下、介護保険を含む健康保険と厚生年金保険の保険料とします)は、給与と賞与で別々に、かつ、異なる計算式で計算されます。つまり、毎月の給料と賞与を年間で同じ額を受け取ったとしても、それぞれにかかる社会保険料の額は異なるというわけです。
では、まず給与分の社会保険料から見ていきましょう。給与にかかる社会保険料は、4月から6月に支払われる給与を基に等級と社会保険料の額が決まり、その額が9月から翌年8月まで1年間適用されます。
なお、健康保険料も厚生年金保険料も上限額があります。全国健康保険協会(協会けんぽ)東京支部の場合、健康保険料の上限額は50等級の7万9925円、厚生年金保険料は32等級の5万9475円となります(いずれも折半額)。
続いて賞与分です。賞与にかかる社会保険料は、実際に支給された税引き前の賞与から1000円未満の端数を切り捨てた金額(標準賞与額)に保険料率をかけた額で算出されます。ただし、標準賞与額の上限は支給1回につき150万円と決められているので、それを超える金額は切り捨てられます。
このように、両者の違いから、同じ年収でも「ボーナスで分ける」か「月給に均す」かで、社会保険料の計算基準が変わるのです。
年収1000万円でシミュレーション
では、年収1000万円を「月給+賞与」で受け取る場合と「月給のみ」にした場合とで、社会保険料の額を比較してみましょう。
まず、年収1000万円を給与と賞与とに分けて受け取った形で考えていきましょう。計算に当たっては、月給(報酬月額)50万円と年2回の賞与(200万円ずつ)で考えます。健康保険は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入、東京都にある企業に勤めているとします。
この場合、給与分にかかる健康保険料が年間で34万5000円、厚生年金保険料が54万9000円となり、合計で89万4000円です。
それに加えて、賞与の額は支給1回につき200万円で上限額の150万円を超えているため、150万円に保険料率をかけることになり、厚生年金保険料は13万7250円の2回分で27万4500円となります。そして、健康保険料は2回分で17万2500円です。給与分と合計して134万1000円となります。
続いて、年収1000万円を12ヶ月で割って、毎月83万円を受け取ったケースで考えましょう。この場合、健康保険料は57万2700円、厚生年金保険料は71万3700円となり、合計で128万6400円です。
手取りへの影響はなぜ起こった?
シミュレーションから分かるように、同じ年収1000万円でも給与化すると、年間で5万円ほど社会保険料が軽くなる可能性があります。理由は以下の通りです。
賞与が給与化されると、社会保険料の上限を超えた額には保険料がかからないため、その分負担が軽くなります。例えば、厚生年金保険に関しては、保険料が月給63万5000円以上を上限に頭打ちとなり、結果的に負担が抑えられます。
しかし、給与の一部を賞与化することで、上限の範囲内に給与が収まってしまい、別途賞与としても社会保険料がかかり、負担が重くなったという具合です。
まとめ
年収1000万円の場合、今回のケースではボーナスを給与化することで、社会保険料が年間で5万円程度軽くなる可能性があります。
一方で、今回は主題から外れるため触れませんでしたが、社会保険料が減るということは、将来受け取る年金などの額も減少することの裏返しでもあります。
そのため、ボーナスの給与化は一見お得に見えますが、老後資金やライフプラン全体を踏まえ、総合的に判断することが重要になるでしょう。
出典
全国健康保険協会ホームページ
執筆者 : 柘植輝
行政書士
