「医療機関」の倒産が過去最多!「医師=高収入・安定」のイメージは崩壊? 背景にある“構造的リスク”とは
この話を聞くと、「医者は高収入でもうかると思っていたけどなんで?」と疑問を感じる人も多いのではないでしょうか。本記事では、医療機関の倒産、休廃業の現状や医師の平均年収、なぜ倒産や休廃業が多くなっているのかを解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
医療機関の倒産・休廃業件数が過去最多
帝国データバンク(TDB)の調査によると、2024年の医療機関の「倒産件数」は64件、「休廃業・解散件数」は722件に上り、いずれも過去最多を記録しました(負債額1000万円以上かつ法的整理となった「病院」「診療所」「歯科医院」の経営を主業とする事業者数)。
内訳としては、特に診療所の増加が全体を押し上げています。なお、負債総額は282億4200万円でした。
倒産や休廃業が増えている一因として、診療所の経営者の高齢化が挙げられます。TDBによると、診療所の経営者は半数以上が70歳以上です。高齢化に加え、後継者候補のなさもあり、倒産や休廃業に追い込まれるケースが増えています。
また、同調査では、受診者数の減少やコロナ禍での公的支援の減少、材料費・人件費の高騰、そしてコロナ関連の融資返済開始など、経営を圧迫する多くの要因が重なっているため、倒産件数は今後も高水準で推移することが予想されています。
医師の平均年収はどれくらい?
続いて、医師の平均年収を見てみましょう。厚生労働省の「令和6年 賃金構造基本統計調査」によると、従業員数10人以上の病院などで働く勤務医の平均年収は約1338万円であり、一般労働者の平均を大きく上回ります。
このように、医師は平均的にはかなり稼いでいるといえますが、倒産・休廃業件数が増えている理由としては、前記した高齢化問題に加え、医師といっても収入の状況が働く条件によって異なることが考えられます。
勤務医と開業医
医師による状況の違いの一例として、勤務医と開業医の違いをみていきましょう。
勤務医とは、病院やクリニックに雇われて働く医師のことです。年収の高い医師も多いですが、経験・性別・診療科・勤務地・病院の規模・地域などによって幅があります。平均年収は1338万円ですが、実際にはこれより大きく上振れる場合もあれば、下がるケースもあるでしょう。
開業医は、自らクリニックを運営する医師のことです。収入は売り上げから経費(人件費、設備費、家賃、ローンなど)を差し引いた後の利益です。当然、経営がうまくいかなければ赤字になる可能性もあります。
つまり、開業医=高収入という構図は必ずしも成立せず、むしろ経営リスクを伴う存在ともいえるでしょう。例えば、開業当初は設備投資や広告宣伝に多額の費用がかかり、黒字化まで数年を要するケースも珍しくありません。
さらにスタッフの確保や離職率の高さに頭を悩ませる院長も多く、医師でありつつ、経営者としての能力が収入を大きく左右するといえます。
まとめ
「医師=全員高収入」というイメージは、あくまでも統計上の平均に基づく一面であり、現場では多様な事情が絡み合っています。特に医療機関の経営においては、高齢化や後継者不在、競争激化、コスト上昇などが経営を圧迫しており、「もうかる」と単純化できない構図があります。
友人の「倒産件数が過去最大」という発言は、最新のデータで確かに裏付けられており、それを踏まえつつ「医師は稼げる」とする印象を改めて検証すると、意外な事実が分かることもあるでしょう。
出典
株式会社帝国データバンク 医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
