郊外にマイホームを買って通勤時間が「2倍」に…その分「通勤手当」も増えたので安心していたのですが、今月から手取りが減っていた! 一体なぜ?

配信日: 2025.10.17 更新日: 2025.10.21
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郊外にマイホームを買って通勤時間が「2倍」に…その分「通勤手当」も増えたので安心していたのですが、今月から手取りが減っていた! 一体なぜ?
郊外にマイホームを構え、職場までの通勤時間が倍近くになっても、「通勤手当が増えたから大丈夫」と安心していたら、手取りが前より減っていた――このようなことが起こるのは、実は制度の“カラクリ”によるものかもしれません。
 
通勤手当には所得税・住民税の非課税枠がある一方で、社会保険料を算出する際の基礎となる「報酬」に含まれるため、通勤手当が増えると手取りが目減りするケースも起こり得るのです。
 
本記事では、なぜ通勤手当が増えたのに手取りが減るのか、その理由と確認ポイントを分かりやすく解説します。
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なぜ通勤手当が増えても「手取りが減る」可能性があるのか

通勤手当は、基本給とは別に支給されることが多いため、「手当が増えれば手取りも増える」と考えがちです。しかし、実際の手取り額は税制および社会保険制度のルールに左右されます。
 
まず、所得税・住民税の計算上、通勤手当には非課税となる上限があります。例えば国税庁によると、電車・バスなど公共交通機関だけを用いる通勤であれば、「最も経済的かつ合理的な経路および方法による」ものに限って、1ヶ月あたり15万円を上限として、その範囲内の通勤手当は課税対象から除かれます。
 
ところが、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)の計算上は、支給される通勤手当の全額を「報酬(給与など報酬として受け取る額)」に含めて計算するのが原則です。つまり、所得税や住民税で非課税とされる範囲内の通勤手当であっても、社会保険料の計算にはその部分も含まれてしまいます。
 
このため、通勤手当が増えると、標準報酬月額(社会保険料を決める報酬基準)の等級も上がる可能性があります。標準報酬月額の等級が上がれば、健康保険料・厚生年金保険料などの負担額が増えることになります。
 
つまり、通勤手当の増加によって差し引かれる社会保険料が増え、その結果として“手取り額が減る”という逆説的な現象が起こり得るのです。
 

通勤手当の扱いを正しく理解するためのポイント

このような問題を回避・理解するためには、以下の点を押さえておくとよいでしょう。
 
まず、自身の通勤手当が「非課税枠内かどうか」を確認することです。もし公共交通機関を使っていて月額の定期代相当額が15万円以下であれば、その範囲は原則として所得税・住民税の計算から除かれます。逆に、15万円を超える部分は給与として課税されます。
 
次に、社会保険料の計算対象に通勤手当が含まれる点を理解することです。非課税枠かどうかにかかわらず、通勤手当は標準報酬月額の対象となる報酬額に含められて計算されるため、通勤手当の増加がそのまま社会保険料の増加をもたらす可能性があります。
 
最後に、通勤手当を含めた総額で標準報酬月額がどう決まるか、保険料率の変動、扶養家族数、税控除などとの兼ね合いが手取りに与える影響をシミュレーションしておくと安心です。
 

まとめ

結論として、郊外にマイホームを購入して通勤距離が伸び、通勤手当が増えたにもかかわらず手取りが減ったのは、通勤手当の「税制上の扱い」と「社会保険制度上の扱い」の違いによるものと考えられます。
 
通勤手当は所得税・住民税の計算では一定額まで非課税ですが、社会保険料の計算ではその全額を標準報酬月額の対象となる報酬とみなします。
 
そのため、通勤手当が増えると標準報酬月額の等級が上がって保険料負担が増え、その差し引きが大きくなると、手取り額が逆に減るケースも出てくるのです。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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