東京の会社で正社員として働いています。「手取り18万円」は最低賃金以下ですよね…? それとも正社員は対象外なんでしょうか?
本記事では、最低賃金制度の仕組みを整理したうえで、月給制・正社員の立場から「手取り18万円が最低賃金以上といえるのか」を考え、もし下回っていた場合に読者自身ができる対応策についても解説します。
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目次
最低賃金とは? 正社員も対象になる制度なのか
まず、最低賃金制度について整理しましょう。最低賃金制度とは、使用者(会社など)が労働者に支払う賃金の最低額を都道府県別に定めた制度であり、雇用形態(正社員・契約社員・アルバイトなど)を問わず適用されます。
つまり、正社員だから最低賃金の対象外になるということは原則ありません。例えば東京都の地域別最低賃金(時間額)は令和7年10月3日から1226円となりました。
そして厚生労働省によれば、固定給制(月給・日給)であっても、月給の場合は「月給÷1ヶ月平均所定労働時間」で時間単価を算定し、その額が最低賃金以上かを確認します。
また同じく厚生労働省によると、最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金であり、通勤手当・家族手当・時間外割増賃金・賞与などは対象外です。
以上を踏まえると、「正社員だから最低賃金制度は関係ない」というのは誤りで、正社員でも月給制でも、所定労働時間や手当の構成を含めて判定されます。
月給制の正社員で「手取り18万円」は最低賃金を下回るのか? 計算のポイント
では、東京都内で「手取り18万円」という給与が、最低賃金を下回るかどうかを見てみましょう。ただし、ここでは“手取り”ではなく“月給(毎月支払われる基本的な賃金)÷1ヶ月平均所定労働時間”で時間単価を算定し、最低賃金と比較することが正しい手順です。
具体的に仮定すると、例えば月給18万円が毎月支払われる基本的な賃金(手取りではない)で、1日の所定労働時間が8時間、年間所定労働日数を240日とすると、1ヶ月の平均所定労働時間は(240日×8時間)÷12=160時間となります。
この場合、時給換算すると「18万円÷160時間=1125円」となります。東京都の最低賃金1226円と比べると明らかに下回っています。
さらに、この月給の中に「通勤手当」や「家族手当」など最低賃金の対象とならない手当が含まれていれば、対象となる賃金(基本給+対象手当)の金額はさらに低くなり、時給換算額はさらに下がる可能性があります。
つまり、「手取り18万円」という数字だけでは判断がつきませんが、月給18万円で1ヶ月の平均所定労働時間が8時間×20日程度の場合、多くのケースで東京都の最低賃金を下回る可能性が高いといえます。
もし最低賃金を下回っていたら? 読者が取るべきステップ
もしご自身の給与が最低賃金を下回っている可能性があると感じたら、以下のステップで確認・対応を進めることをおすすめします。
まず、雇用契約書や賃金規則で「所定労働時間」「所定労働日数」「月給(支給総額)」を確認します。
次に、毎月支給される基本給と諸手当のうち、通勤手当や家族手当など最低賃金の比較から除外できるものを除いた額を算出し、それを月の所定労働時間で割って時間単価を出します。これが地域別最低賃金以上かチェックします。
もし「低い」と判断できる場合、会社と話をする前に給与明細の控え・契約書・賃金規則の写しなどを整理しておくとよいでしょう。会社が改善しない場合には、最寄りの労働基準監督署に相談するという選択肢もあります。
また、「手取り18万円」という数字だけでは控除(社会保険料・税金など)後の額であるため、まずは支給総額を把握することが必要です。
まとめ:給与の見直しと働き方を考えるために
最低賃金制度では、正社員・月給制という雇用形態だから最低賃金の対象外ということはなく、月給(毎月支払われる基本的な賃金)を1ヶ月の平均所定労働時間で換算して比較する必要があります。
もし実際に下回っていれば、まず支給総額・所定労働時間・手当の構成などを確認し、会社に相談、あるいは労働基準監督署などの相談窓口を活用することが現実的なステップです。
今回の事例では「手取り18万円」ということですが、手取り額は控除(社会保険料・税金など)後の額であるため、まずは支給総額を把握することが必要です。
給与は生活の根幹に関わるだけに、不透明なままにせずあらためて数字を整理してみることで、働き方や待遇改善を検討するきっかけになるでしょう。
出典
厚生労働省 最低賃金額以上かどうかを確認する方法
厚生労働省 最低賃金の対象となる賃金
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
