来春、妻が第1子を出産予定です。夫の私が育休を取ると、手取りやボーナスはどのくらい減るのでしょうか?
本記事では、子育て世代が知っておくべき育休中に利用できる制度や給付金について解説します。
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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目次
育休中の「給料」はなし。ただし「育児休業給付金」が支給される
育休中は、会社からの給与は原則支給されません。しかし、その代わりに雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。これは、休業前の給料の一部を補てんする仕組みです。
支給額は、次のとおりです。
・育休開始から180日間:休業前賃金※の67%
・育休開始から181日目以降:休業前賃金の50%
※育児休業に入る前の6ヶ月間の平均賃金
例えば、育児休業に入る前の休業前賃金の月収が30万円だった人が12ヶ月の育休を取る場合は、以下のようになります。
・育休開始から180日間の支給額:30万円×67%= 約20万1000円/月
・育休開始から181日目以降:30万円×50%=約15万円/月
※支給額には上限と下限があり、賃金が高い場合は実際の支給率が67%を下回ることがあります
なお、育児休業を取得できるのは「子どもが1歳になるまで」が原則です。ただし、保育所に入所できないなどの事情がある場合、子どもが最長2歳まで延長できます。また、要件を満たせば、夫婦で育児休業を延長することも可能です。
実際の手取りは「7~8割程度」が目安
ここで注目したいのが、「給付金には税金や社会保険料がかからない」という点です。つまり、手取りベースでは思ったより収入が減らないケースもあります。給与から引かれていた「所得税」「住民税」「社会保険料」が育休中はかからないため、手取りベースでは実質7~8割程度の水準になることが多いです。
月収30万円(手取り約24万円)の人であれば、育休中の給付金が20万円ほど。生活はやや苦しくなるかもしれませんが、極端に厳しくなることもないでしょう。
ただし、育休中も「住民税」は前年度の所得に応じて課税されるため、翌年の6月以降も住民税の支払いがあることには注意が必要です。住民税の支払いは、会社の給与天引きがない場合、自分で納付する「普通徴収」に切り替わります。
ボーナス(賞与)は会社次第。減額や支給なしのケースも
ボーナスについては、会社の就業規則により異なります。「育休中は支給対象外」とする企業が多く、満額支給されることはほとんどないようです。ただし、休業期間が一部の月にかかっているだけなら、「在籍期間分のみ」や「評価期間の実働日数に応じて」一部支給される場合もあります。
一方で、企業によっては「育休中も在籍扱い」として、賞与の減額幅を抑えてくれるケースもあります。これは会社次第ですので、育休前に人事部や上司などに確認しておくことが大切です。
社会保険料の免除で「将来の年金」にも影響しない
もう一つのポイントが、「社会保険料免除制度」です。育休中は厚生年金や健康保険の保険料が全額免除されますが、将来の年金額にはマイナスの影響がありません。免除期間も「保険料を納めた」とみなされるため、安心して休むことができます。
通常の育児休業制度以外にも利用できる制度とメリット
通常の育児休業制度だけでなく、他にも育児中に利用できる制度もあります。その他の制度について、図表1にまとめました。
図表1
| 制度 | メリット |
|---|---|
| パパママ育休プラス制度 | ・夫婦ともに育休を取る場合は最長「1歳2ヶ月」まで延長できる |
| 産後パパ育休制度 (出生時育児休業) |
・子どもの出生後8週間以内に、最大4週間(28日間)まで休める ・2回まで分割取得が可能(例:出産直後+退院後など) ・通常の育休とは別枠(この後に通常の育休も取れる) ・給付金は「育児休業給付金」と同じく、休業前賃金の67%(最初の180日まで)および50%(181日目以降)が支給されます。 |
厚生労働省「早わかり!男性の育児休業ここがポイント」より筆者作成
育児に関する新たに設けられた給付制度
さらに、2025年4月から、育児に関する新たな給付制度として「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」も設けられています。
出生後休業支援給付
「出生後休業支援給付」とは、「出生時育児休業給付金」または「育児休業給付金」の支給を受ける人が、夫婦ともに一定期間内に通算して14日以上の育児休業(産後パパ育休を含む)を取得し、一定の要件を満たした場合に、最大28日間分の給付金が支給される制度です。
支給額の計算式は、以下のとおりです。
休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×給付率(13%)
育児時短就業給付
「育児時短就業給付」は、2歳未満の子どもを養育するために所定労働時間を短縮して就業し、その結果、賃金が低下するなど一定の要件を満たす場合に、育児時短就業給付金が支払われる制度です。
支給額は育児時短就業中の各月に支払われた賃金額の10%ですが、時短後の賃金と給付額の合計が時短前の賃金を超える場合、給付率が調整されます。
手取り減少に備える「家計対策」
育休中は、出費が増える時期でもあります。ベビー用品、検診費用、一時的な光熱費の増加など、月数万円ほどの支出増になることもあります。そのためには、次の3点を意識しておきましょう。
・育休前に6ヶ月分の生活費を貯めておく
・家計簿アプリなどで固定費を見直す
・給付金の支給サイクル(2ヶ月ごと)を把握しておく
特に給付金は2ヶ月ごとに支給されるため、最初の入金が遅れると一時的に現金が不足する事態になることもあります。事前に生活資金を準備しておきましょう。
まとめ
育児を支援するための給付金などのある制度を解説してきましたが、図にまとめると図表2のようになります。
図表2
出典:厚生労働省「育児休業等給付について」
育休を取ると、一時的に手取りやボーナスは減ります。しかし、給付金や保険料免除の仕組みを活用すれば、実質的な収入減は2~3割程度に抑えられます。お金の不安を正しく理解し、計画的に準備しておけば、育休は家族にとって大きなプラスになります。
何より、育児のスタートを家族で共有し、夫婦で育児を分担できることは、妻の負担を軽減できるだけでなく、その時期にしか経験できない「かけがえのない時間」を過ごすことができるでしょう。
出典
厚生労働省 早わかり! 男性の育児休業ここがポイント
厚生労働省 育児休業等給付について
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

