昇進のお誘いが来ましたが、部長になっても「年収850万円」止まりのようでした。課長のままいたほうがいいでしょうか?
そこで、本記事では「昇進を断る前に考えるべきポイント」について解説します。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
課長と部長の「年収差」は一般的には大きいものである
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和6年のデータ)によると、企業規模にもよりますが、課長と部長の平均賃金の差は年間でおおむね140万円程度です。
ここでいう賃金は、調査実施年6月分の給与や残業代などを差します。そのため、賞与などを含めた年収差はさらに大きいものになることが想定されます。場合によっては、200万円を超える年収差がつくことも十分あり得ます。
仮に、現在ですでに年収800万円近くあり、部長になっても年収850万円にしか増えないという場合、その上昇幅は一般的に比べて小さく、後述する責任なども踏まえると、昇進するメリットはそう大きくはないのかもしれません。
とはいえ、近年では、成果主義や役職定年制が導入されている企業も増えています。それゆえ「肩書だけ上がっても手取りはほとんど変わらない」「役職手当が数万円しか増えない」ということは決して珍しい話ではないため、賃金だけで判断するべきではないといえます。
見えない負担を考慮する
一方で、仮に提示された年収がこれまでより増えたとしても、実際に昇進すると年収減となる可能性もあります。その一つが残業代です。課長から部長になれば残業代が付かない管理監督者扱いになることも珍しくはありません。
仮に、課長時代が年収800万円+残業代80万円だったような場合で考えてみましょう。その場合において、部長昇進後の年収が850万円で残業代なしとなると、実質的な年収は30万円の減少です。
加えて、部長になると、管理監督する部下の数も増えるなど責任も増加します。このような部分は外部からは見えにくかったり、本人の性格などによって自身の体質に合わない業務内容が増えるといった問題もあります。
それゆえ、課長時代は苦労に見合った年収だと満足できていた場合、部長になって携わる業務が変わり、年収が増えても割に合わないと感じてしまうこともあり得るでしょう。
お金以外も考慮するべきである
部長への昇進に伴い、着目すべきはお金だけではありません。昇進によって携われる業務や外部から見た「部長」という肩書と、それらで得られる経験は、課長では絶対に得ることができないものです。
今現在の年収という点においては、それほど魅力を感じなくとも、部長から役員というさらなる昇進や転職時の評価、定年後の進退など、これからのキャリアを踏まえると、どのような働き方をするかに関係なくプラスとなる可能性が高いです。
それらはお金には代えることができず、後から取り戻そうともそれが叶わず後悔してしまうことにもなりかねま代えることができずせん。
まとめ
部長になって年収が850万円止まりで、想定よりも低い年収だからと感じても、直ちにそれだけをもって昇進を断るのは早計です。
大切なのは、今との収入差が最終的にどれくらいの額になるかに加えて、どんな働き方をしたいのか、そして将来のキャリアをどう見据えるかです。
もし、年収額だけを見て昇進を受けるかどうか悩んでいる場合、一度お金から離れ、お金以外の経験やキャリアの指向などを踏まえ、部長という役職の本質から考えてみることをおすすめします。
出典
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況 役職別
執筆者 : 柘植輝
行政書士
