8月の世帯収入平均が「60.8万円」に。前年+6%でも“実質賃金”はどこまで追いついた?

配信日: 2025.11.06
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8月の世帯収入平均が「60.8万円」に。前年+6%でも“実質賃金”はどこまで追いついた?
「8月の平均世帯収入60.8万円、前年同月比+6%」一見すると景気回復のサインのように見えます。しかし、物価上昇を差し引くと実質賃金は依然マイナスです。この「プラスのようでマイナス」な状況、私たちの生活にどのような影響をもたらすのでしょうか。
 
この記事では、最新の統計データをもとに、収入増でも生活実感が変わらない理由などについて分かりやすく解説します。
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8月の勤労者世帯「実収入60.8万円」名目+6.0%

総務省統計局の「家計調査報告-2025年(令和7年)8月分-」によると、二人以上の勤労者世帯における1世帯当たりの実収入は60万8578円で、名目では前年同月比6.0%増となりました。
 
名目収入の増加には、賃上げや夏の賞与の増加が影響していると考えられます。特に、ボーナスの支給額が前年を上回った業種が多く、企業業績の回復が家計に反映された形です。
 
ただし、すべての人の生活が等しく楽になったわけではなく、雇用形態や産業による格差は依然として残っています。
 

実質賃金は-1.4%、物価高が賃上げ効果を打ち消す

一方、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、名目賃金が増加していても、物価の影響を加味した「実質賃金」(名目賃金指数を消費者物価指数で除したもの)は依然としてマイナスが続いています。例えば、2025年8月分では実質賃金が前年同月比1.4%減となりました(事業所規模30人以上)。
 
これは、賃上げのペースを物価上昇(光熱費、食料品、サービス料金の値上げなど)が上回ったことが主な要因と考えられます。
 
「収入が増えた」という一面的な見方だけでなく、「名目賃金-物価上昇=実質賃金」という視点まで押さえることが、家計改善を理解する上で欠かせません。
 

収入増でも生活実感が変わらない理由:支出構造と物価の関係

では、世帯収入が6.0%も伸びているにもかかわらず、なぜ生活実感が伴わないのでしょうか。主な要因として、前述の物価上昇の影響や支出構造の変化が挙げられます。
 
実質賃金がマイナスまたは横ばいで推移している背景には、消費者物価の上昇があります。2025年8月分の「家計調査報告」では、消費支出項目のうち、光熱・水道、被服および履物、保健医療、交通・通信、教育、教養・娯楽が実質増につながる結果となりました。
 
また、収入が増えても、住宅ローン返済、子育て関連支出、サービス利用料の上昇などにより固定支出が増えれば、収入の増加がそのまま家計のゆとりにはつながりません。「可処分所得」がどれだけ残るかが重要です。
 
こうした点から、「収入は増えているのに実感がない」という現象は、物価高と支出増という二重の負担によるものといえます。
 

まとめ

8月の家計統計が示す「収入増」は、必ずしも家計のゆとりを意味するわけではありません。名目収入は上がっても、実質賃金は物価上昇に追いつかず、支出の構造変化なども重なって可処分所得は伸び悩んでいます。
 
今後の家計改善には、収入アップだけでなく、固定費や物価上昇への対策を含めた支出管理が重要です。家計簿や光熱費の見直し、無駄な契約の整理など、「実質的な手取り」を増やす工夫が求められます。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告-2025年(令和7年)8月分- 2 消費支出とその内訳(2ページ)、実収入(3ページ)
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果確報(5ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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