「最低賃金」が“1226円”に引き上げられたのに「昇給」しなかった! 企業の義務だと思っていたのですが、なぜでしょうか…?

配信日: 2025.11.19
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「最低賃金」が“1226円”に引き上げられたのに「昇給」しなかった! 企業の義務だと思っていたのですが、なぜでしょうか…?
最低賃金が引き上げられても、自分の給与は変わっていない、昇給しなかったと疑問を感じる方もいるでしょう。最低賃金とは労働者の最低限の生活を守るための制度であり、企業はこれを遵守する義務があります。
 
ただし、あくまで賃金の最低ラインを示すものであり、最低賃金が引き上げられても昇給に直結しないケースがあるため注意が必要です。
 
本記事では、最低賃金の引き上げと昇給の関係を整理し、自分の給与水準をどう確認すべきかを解説します。
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10月3日から東京都の「地域別最低賃金」は“1226円”に引き上げ

厚生労働省 東京労働局は、「東京地方最低賃金審議会」からの回答を経て、令和7年10月3日より最低賃金の時間額を「1226円」に改正しました。これまでの1163円から、引き上げ率5.42パーセントの63円引き上げになっています。
 
今回の改正では、初めてすべての都道府県で最低賃金が1000円を超えることになりました。全国加重平均は、1055円から1121円と過去最高の引き上げとなりました。また、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」を見ると、東京都は神奈川県の「1225円」と僅差ながら、全国トップの水準です。
 

従来から「最低賃金」を上回っていた場合は「昇給」しないケースも

最低賃金には「地域別」と「特定」の2種類があります。特定(産業別)最低賃金とは、鉄鋼業や船舶製造、修理業などの特定の産業に定められている最低賃金です。
 
最低賃金を下回った場合、企業に対しては「地域別」あるいは「特定」最低賃金に定められた法的根拠による罰則規定が存在しています。
 
地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わないケースでは、「最低賃金法」に罰則(50万円以下の罰金)、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には「労働基準法」に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
 
しかし最低賃金は、厚生労働省が「使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度」と定義しており、賃金計算において必ずしも根拠となる数値ではなく、昇給の根拠となる仕組みではありません。
 
入社直後の社員と2年目・3年目の社員との格差を防ぐために昇給する「玉突き」で昇給する例もあるものの、そもそも従来の賃金が最低賃金を上回っていた場合は、最低賃金が上がっても昇給しないケースもあります。
 

正社員の場合「最低賃金以上」か、どうやって確認するの?

厚生労働省のホームページでは「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」を示しています。自分の給与が最低賃金額以上になっているかどうかを調べるには、以下の方法で比較してみてください。


(1)時間給制の人:時間給≧最低賃金額(時間額)
(2)日給制の人:日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)。ただし、日額が定められている特定最低賃金が適用される人は、日給≧最低賃金額(日額)
(3)月給制の人:月給÷月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
(4)出来高払制や請負制によって定められた賃金の人:出来高払制や請負制によって計算された賃金の総額を、労働した総労働時間数で除して1時間当たりの金額に換算
(5)(1)~(4)の組み合わせを合算する方法。例えば、基本給が日給制で、各手当が月給制などのケースでは、それぞれ上記(2)、(3)の式から時間額に換算し、すべてを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較する

不明点があれば都道府県労働局、または最寄りの労働基準監督署に相談してみましょう。
 

まとめ

最低賃金の引き上げは、働く人の生活を支える試みでもあります。しかし、最低賃金が上がっても昇給がなく、疑問や不満を感じる人もいるでしょう。
 
最低賃金は賃金の最低ラインを保証する仕組みであり、企業が自主的に決定する昇給制度や評価制度とは別のものになります。自分の給与水準を最低賃金と照らし合わせて現状に問題がある場合は、上司と自身の職務評価や昇給の機会を明確化する対話をすることも大切です。
 

出典

厚生労働省 東京労働局 東京都最低賃金の63円引上げを答申
厚生労働省 令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧
厚生労働省 最低賃金額以上かどうかを確認する方法
厚生労働省 最低賃金制度とは
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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