独立した友人がついに年収1000万円に到達したそうです。個人事業主の場合、手取りはどれくらいになるのでしょうか?
しかし同時に、「実際にはどれくらい手元に残るのか? 」という素朴な疑問も湧いてきます。会社員の年収1000万円と、個人事業主の売上1000万円は、実はまったく意味が異なります。
ここでは、個人事業主として年収1000万円を達成した場合の手取りについて、わかりやすく整理してご紹介します。
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目次
年収1000万円=“売上”であり“収入”ではない
個人事業主の年収(または年商)1000万円は、あくまで「売上」の金額です。ここから仕事に必要なさまざまな経費が差し引かれます。パソコンやスマートフォンの購入費、通信費、交通費、家賃の一部、外注費、広告費など、経費として計上できるものは業種によって大きく違います。
一般的には、フリーランスの経費率は20~40%程度とされることが多いです。たとえば経費率30%と仮定すると、売上1000万円から300万円が経費として差し引かれ、残り700万円が「課税対象となる所得(利益)」になります。この所得を基準に、税金や社会保険料が計算されます。
所得税・住民税・社会保険料を引くとどうなる?
所得が700万円あった場合、そこから所得税・住民税・国民健康保険・国民年金など、個人事業主としての負担が一気に発生します。
【所得税と住民税】
所得税は700万円の所得であれば、税率は20%の区分に入ります。そこから基礎控除や青色申告特別控除などが引かれ、実際の課税額が決まります。また、住民税は所得に対して一律10%が課されます。これらを合わせると、控除を考慮しても年間で100万円前後が税金として納める金額になるケースが多いです。
【社会保険(国民健康保険・国民年金)】
個人事業主になると、会社員と違って社会保険料を会社が負担してくれません。国民健康保険と国民年金を全額自己負担するため、年間で50~70万円ほどになることもあります。地域や所得によって金額が変わるため、想定より高く感じる人も多いでしょう。
最終的な手取りは「およそ600万円前後」に落ち着くことが多い
以上の項目を踏まえると、個人事業主として売上1000万円を達成した場合、手取りはおおむね550~650万円ほどに収まることが一般的です。経費率や控除の活用次第で変わるとはいえ、会社員の「年収1000万円」のイメージよりも、実際に手元に残る額は小さくなります。
一方で、独立して収入を伸ばした友人の成果は、本当に素晴らしいものです。個人事業主は収入がダイレクトに税金や保険料に影響するため、手取りは少なく感じるかもしれません。しかし、働き方や収入の上限を自分でコントロールできるという大きな魅力があります。
これから独立を検討している方は、売上の数字だけに注目するのではなく、「最終的に手元にどれだけ残るのか」という視点を持つことで、より健全で長く続けられる事業運営が可能になるはずです。
個人事業主の年収1000万円は「手取り600万円前後」が現実
個人事業主として年収1000万円を達成すると聞くと、一見大きな成功に見えますが、実際に手元に残るのは経費や税金、社会保険料を差し引いた550~650万円ほどです。
売上と手取りの差を理解し、経費の最適化や控除の活用などを意識することで、より健全で安定した事業運営につながります。独立を目指す方は、数字の本質をつかむことが長く活動を続けるための重要なポイントになります。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
東京都主税局 個人住民税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
