“公務員は安定しててずるい”は本当? 実際の平均年収はいくらなの? 待遇・激務のリアルを整理
さらに、安定した雇用の裏側には業務量の多さやスキル形成への不安など、現場特有の課題も存在します。
本記事では、公的データに基づき、公務員の年収・待遇・働き方の実像を整理します。
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国家公務員の平均年収
人事院給与局が公表する「令和6年国家公務員給与等実態調査報告書」によれば、全俸給表における平均給与月額は41万4801円です。
「令和6年人事院勧告・報告の概要」によると、年間のボーナス(期末手当・勤勉手当)は4.60月分とされているため、国家公務員の平均年収は688万5700円程度と推測できます。とはいえ、これは全年齢・全職種を含めた平均値であり、20~30代の若手職員の年収は300万円~400万円台にとどまるケースもあります。
給与は俸給表に基づき決定され、地域手当、住居手当、通勤手当、扶養手当、超過勤務手当などが加算されます。景気変動に左右されにくく、一定の昇給制度が維持されている点は公務員給与の大きな特徴といえます。
地方公務員の平均年収
総務省の「令和6年4月1日地方公務員給与実態調査結果」では、地方公務員(一般行政職)の給与月額は全国平均で40万2761円、ボーナスは161万4265円とされているため、平均年収はおよそ644万7400円です。
しかし、地方自治体は財政状況や人口規模に大きな差があるため、年収水準には地域差が生じます。大都市圏では比較的高い傾向がある一方、地方では抑えられるケースもあります。
地方公務員も国家公務員と同様、若手職員の給与は必ずしも高水準ではなく、年齢や経験による昇給を経て徐々に安定した収入を得るしくみとなっています。
公務員の待遇と働き方
俸給表と各種手当を基盤とした給与制度、定期昇給、退職金、福利厚生など、公務員の待遇は制度面での「安定性」に優れています。しかし、その一方で働き方に関する課題も指摘されています。
内閣人事局の「令和6年度 国家公務員の働き方改革職員アンケート」では、勤務継続意向について、以下の結果が出ています。
・継続して勤めたい:48.2%
・勤務を継続したいが、継続に不安がある:29.3%
・数年以内に辞めたい:9.5%
特に非管理職職員では「勤務を継続したいが不安がある」と回答した割合が30.8%にのぼり、その理由として、能力・スキルが蓄積できている実感の乏しさ、仕事以外の活動とのバランスがとりづらい点、育児や介護との両立の難しさ、そして収入が低い(生活への不安)といった点が挙げられています。
こうした結果は、公務員の働き方が必ずしも「楽」「恵まれている」といったイメージとは一致しないことを示しています。
公務員の安定性をどう評価すべきか
公務員は、民間企業に比べ景気変動の影響を受けにくく、昇給・退職金・福利厚生など制度上の安定性は明確です。また、社会的信用も高く、住宅ローンなどで有利になる場合もあります。
一方で、業務の専門性や責任の重さ、人員不足による繁忙、スキル形成への不安など、現場特有の課題を抱える職員も少なくありません。特に若手の給与水準は民間と大きく変わらないケースもあり、必ずしも「待遇が特別に良い」と言えるわけではないようです。
安定して働ける環境であることは事実ですが、掲題にあるように「安定していてずるい」というような評価は過剰であり、実態は職種・組織・個々人の状況によって大きく変わります。
まとめ
国家公務員および地方公務員の平均年収はおおむね640万円~690万円とされていますが、年齢や職種などにより実際の収入は大きく異なります。
一方で、内閣人事局のアンケートでは、約3割の職員が「働き続けたいが不安がある」と回答しており、業務負荷やスキルの課題、生活への不安など、安定性の裏側にある悩みも明らかです。
公務員の魅力は制度的な安定性にありますが、それが即「特別に恵まれた立場」を意味するわけではありません。データに基づいて実像を理解し、安定と課題の双方を適切に評価することが大切だといえるでしょう。
出典
人事院給与局 令和6年国家公務員給与等実態調査報告書 職員数、平均年齢、平均経験年数及び平均給与月額(2ページ)
人事院 令和6年 人事院勧告・報告の概要 本年の給与改定(勧告)(2ページ)
総務省 令和6年地方公務員給与の実態 令和6年4月1日地方公務員給与実態調査結果 第2 統計表I 一般職関係 第4表~第9表の4 第5表 職種別職員の平均給与額 (1)全地方公共団体(253~254ページ)
内閣人事局 令和6年度 国家公務員の働き方改革職員アンケート IV 勤務継続意向~全体~(8ページ)、IV 勤務継続意向~勤務継続に不安がある要因~(9ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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