妻が「4月から昇給したのに、手取りはあまり増えていない」と落ち込んでいます。税金だけでなく“社会保険料”も上がっているようですが、給料が増えると負担はどれくらい変わるのでしょうか?
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
昇給しても手取りが増えない理由
昇給しても手取りがあまり増えないのは、給与が上がると引き落とされるものが増えるからです。具体的には、以下に示す社会保険料と税金の負担が増えますので、詳しく解説します。
1. 社会保険料の増加
社会保険には、健康保険・介護保険、厚生年金保険があります。この保険料は、原則として毎年4~6月までの3ヶ月間に支払われる給与(報酬)の平均額から決定される「標準報酬月額」に基づき算出されます。
したがって、昇給により給与が増えた場合には、標準報酬月額が上がり、その分の保険料が増え、給与から天引きされる社会保険料が上がり、結果として手取りがそれほど増えないことになります。
なお、標準報酬月額は、報酬月額に応じて健康保険では第1等級から第50等級、厚生年金保険では第1等級から第32等級に区分されますので、昇給により給与が増えれば増えるほど社会保険料の負担が増えることになります。
2. 税金の増加
昇給により給与が増えると、社会保険料の負担増に加え、所得税と住民税の税率分がさらに上乗せされます。
所得税率は、年収から各種控除を差し引いた課税所得に応じて税率が5~45%の7段階に区分されますので、該当税率分が増加することとなります。これに復興特別所得税(2.1%)と住民税(一律10%)が加算されることになります。
以上から、昇給によって給与(額面)が例えば、3万円増えても、社会保険料と税金で1万円近く負担が増え、結果として手取りが2万円ほどしか増えないといった現象が発生することになります。
負担が増えたことによるメリット
以上解説したように、昇給したのに手取りはあまり増えていない現象が発生します。しかし、社会保険料が増えるという一方で、将来のリスクへの対応や万が一のときの保障が厚くなるというメリットもあります。
1. 将来もらえる年金(老齢厚生年金)が増える
厚生年金の保険料を多く払えば払うほど、将来もらえる年金額が増えます。しかも、社会保険料は企業と折半なので、半分は企業が支払ってくれるので、その点もメリットといえます。
2. 万が一のときの保障が手厚くなる
病気やけがで働けない期間(傷病手当金)や、出産で仕事を休む期間(出産手当金)に支給される手当の額は、厚生年金同様に支払った保険料に連動して増えます。したがって、昇給によって保険料が上がった分は、休業中の生活保障が手厚くなります。
3. 遺族・障害年金が増える
ご自身が障害状態になったときの「障害厚生年金」や、万が一の際に遺族が受け取れる「遺族厚生年金」の受給額も、支払った保険料と連動します。したがって、万が一の際に受け取れる年金が増額されます。
まとめ
「昇給したのに、手取りはあまり増えていない」という現象は発生します。
理由としては、税金だけでなく“社会保険料”が収入に連動して増えるためです。一方で、社会保険料を多く納めることで、将来のリスクへの対応や万が一のときの保障が厚くなるというメリットもありますので、必ずしも払い損にはなりません。
出典
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 社会保険加入のメリット
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和8年度保険料額表
国税庁 No.2260 所得税の税率
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー

