更新日: 2020.09.26 贈与
あと半年で終了予定! 子・孫への贈与が非課税になる〈教育資金の一括贈与制度〉とは?
平成30年度の文部科学省の調査によりますと、幼稚園から高校まで、すべて公立に通った場合の学習費総額は約540万円、すべて私立に通った場合では約1830万円になっています。その後、大学も自宅通学か下宿か、国公立か私立か、私立の場合も文系か理系かによって費用はまったく異なってきますが、大学まで国公立に自宅から通うと仮定しても約800万円。これだけの金額を捻出するのは大変ですね。
そこで今回は、来年3月で終了予定の「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税(教育資金の一括贈与制度)」の対象となる費用と変更点についてお話します。
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
教育資金の一括贈与制度とは?
教育資金の一括贈与制度とは、親や祖父母から30歳未満の子や孫へ「教育資金」を非課税で贈与できる制度です。非課税限度額は、受贈者(子や孫)1人につき、1500万円まで(学習塾など学校以外への支払いは内500万円まで)です。
平成25年4月から始まった制度は当初、平成31年3月31日まででしたが、平成31年度の税制改正により、その期間が2年間延長となり、令和3年3月31日までとなりました。
この制度の背景には、「高齢者世代の保有する資産の若い世代への移転を促進することにより、子供の教育資金の早期確保を進め、多様で層の厚い人材育成に資するとともに、教育費の確保に苦心する子育て世代を支援し、経済活性化に寄与することを期待する」ということがあります。
どのような教育資金が認められるの?
この制度の対象となる教育資金は以下のような費用が認められます。
1.学校等に直接支払うもの
(1)入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費または入学(園)試験の検定料など
(2)学用品費、修学旅行費、学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
2.学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で社会通念上相当と認められるもの
(イ) 役務提供または指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの
(3)教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
(4)スポーツ(水泳、野球など)または文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他
(5)(3)の役務提供または(4)の指導で使用する物品の購入に要する金銭
(ロ) イ以外(物品の販売店など)に支払われるもの
(6)(2)に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの
(7)通学定期券代
(8)留学渡航費、学校等に入学・転入学・編入学するために必要となった転居の際の交通費
このうち非課税枠は、(1)~(8)の合計が1500万円まで、うち(3)~(8)の合計が500万円までとなっています。
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期間延長に伴って変更となったのは次の4点です
(1)受贈者の所得が1000万円を超える人は、この特例が受けられなくなります。つまり、もうすでに高所得者の子や孫に贈与することはできなくなりました。
(2)受贈者が23歳以上になると教育資金の範囲が限られ、学校ではない習い事等の費用については非課税の対象外となりました(教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用は従来どおりです)。例えば、学校教育法上の製菓学校に通うのであれば非課税枠内ですが、お菓子教室は対象外となります。
(3)30歳以上になっても、学校に在籍もしくは教育訓練受講中であれば残高があっても贈与税はかからず、在学中・受講中ではなくなった年の年末または40歳になった時点で贈与税が発生するようになりました。
(4)教育資金の贈与を行って3年以内に、贈与者が亡くなった場合は、贈与した金額のうち相続開始時点で使い切れていない金額には、相続財産に足し戻して相続税が課税されることになりました。ただし、これは受贈者が23歳未満または在学中・受講中の場合はこの適用は受けませんので、20歳未満の方に教育資金の贈与をする場合には当てはまりません。
将来のご自身の資金計画とバランスを考えて
相続税を軽減する意味でも、この制度は高齢者にとってもメリットのある制度です。しかし、教育資金同様3大支出の1つに老後資金があります。
ご自身の今後の生活に影響のあるような高額の贈与や、複数人の子や孫がいる場合の贈与のバランス、さらに子の配偶者の親御さんもこの制度を利用しようとしている場合のバランスなど、制度利用時には専門家や税務署に相談等するなどして決定するのが望ましいと思われます。
(出典)
文部科学省 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置 Q&A(「教育資金」及び「学校等の範囲等」)
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表