教育資金贈与の仕組みと税金を抑える方法って?
配信日: 2021.04.28
ただし、内容を正しく知っておかないと、課税対象となってしまい、本来の目的を果たせない結果となってしまうこともあります。そのようなことがないように、教育資金贈与についての仕組みをしっかりと理解しておきましょう。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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教育資金贈与とは?
教育資金贈与とは、正式には「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」と呼ばれており、親、祖父母などの直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合に、一定の要件を満たすと贈与税が非課税になるというものです。その詳細は、以下のとおりです。
0~30歳までの方で、前年の年間所得金額が1000万円以下であること。
受贈者の直系尊属であること。つまり、受贈者の配偶者の親もしくは祖父母からの贈与は対象とはなりません。
受贈者1人につき1500万円まで。
(参考:国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」(※1))
教育資金とは?
この教育資金贈与で利用できる教育資金とは、どのようなものがあてはまるのでしょうか。
1.入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費または入学(園)試験の検定料など
2.学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
※ここでいう「学校等」とは、学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、専修学校および各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園または保育所などをいいます。
1.教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料などのほか、これらに使用する物品の購入に要する金銭
2.スポーツ(水泳、野球など)または文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)、教養の向上のための活動に関わる指導への対価などのほか、これらに使用する物品の購入に要する金銭
※ただし、23歳以上の受贈者の場合は教育訓練給付金対象の受講費用に限ります。
通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費。
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教育資金贈与の制度を利用するメリットとは?
教育資金贈与の制度を利用するメリットは、以下のとおりです。
■贈与税の節税効果がある
通常の贈与(暦年課税)の場合、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円までであれば贈与税がかかりませんが、110万円を超えた部分については贈与税が課税されます。この制度を利用すれば、年間110万円までという金額を気にすることなく、まとまった金額を一括贈与できます。
■死亡時から3年前の贈与であっても相続税の対象とならないケースがある
通常、死亡前3年以内に贈与があった場合、それは相続税の対象です。しかし、この制度を利用した贈与であって、贈与者の死亡時に以下の要件に該当する場合は相続税の対象とはみなされません。
1.23歳未満である
2.学校等に在学している場合
3.教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
教育資金贈与の制度を利用する際の注意点
この制度を利用する際の注意点は、以下のとおりです。
■教育資金口座の開設が必要
教育資金贈与の制度を利用するためには、専用の口座を作り、さらに金融機関を通じて申告書を提出する必要があります。以下に手続きの流れを記載しておきますので、参考にしてください。
1.贈与者(曾祖父母・祖父母・父母等)と受贈者(ひ孫・孫・子等)の間で、贈与契約書を交わす
2.受贈者が金融機関で「教育資金口座」を開設する
3.金融機関を経由して納税地の所轄税務署長に「教育資金非課税申告書」を提出する(この申告書を提出することで、受贈者の贈与税が非課税となります)
4.贈与者が口座へ入金する(原則一括で振り込む)
また、教育資金非課税申告書は入金をする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
■30歳の誕生日の時点で口座にお金が残っていた場合は贈与税の対象になる
受贈者が30歳になった時点で口座にお金が残っていた場合、その分は受贈者の財産とみなされ、贈与税が課税されることとなります。ただし、贈与税を支払った後は、どんな用途にでも使うことができます。
また、30歳の誕生日までに口座のお金を使いきれなかったとしても、その口座に残っているお金を払い戻すことはできません。また、30歳になるまで口座を解約することができない点にも注意が必要です。
■領収書などの書類が必要
学校等への支払いの際は、まず受贈者である子どももしくは孫等が学校に対して授業料などを支払い、領収書を受け取ります。そして、教育資金口座を開設した金融機関へ領収書を持参し手続きをすることにより、お金を引き出すことができます。
もちろん、金融機関によって手続きは異なることから、口座から先に引き出せるケースや請求書を金融機関へ渡すことで、金融機関から直接学校等へ振り込んでもらえるケースなどもあります。
■教育資金以外の用途に使うことはできない
制度の特質上、教育以外の目的に使用することは禁じられています。もし、別の目的で引き出した場合は、教育資金管理契約の終了時に贈与税が課税されることとなります。
2021年の税制改正によってどう変わる?
教育資金贈与の制度の内容は、2021年に税制改正により一部内容が変更となりました。その変更内容について、以下にまとめていますので、参考にしてください。
■適用期間の2年延長
現在の適用期限である2021年3月31日が2年間延長され、適用期限が2023年3月31日までとなりました。
■贈与者死亡時の相続税課税対象の拡大
改正前は祖父母等が亡くなった場合、贈与者死亡前3年以内の贈与に関わる残額についてのみ相続税の課税対象となっていました。しかし今回の改正により、祖父母等が亡くなった場合、贈与からの年数に関係なく、使い残し残高が相続税の対象となります。
つまり、非課税措置の終了事由(受贈者が30歳に達する等)に該当する前に、贈与者が亡くなったら、教育資金の使い残しの残高を相続したものとして、相続税が課税されることとなります。この改正は2021年4月1日より適用されます。
■孫に対しては2割加算となる
改正前の教育資金の一括贈与に関わる贈与税の非課税措置においては、孫に対する贈与についても相続税額の2割加算の対象外とされていました。
今回の税制改正によって、受贈者が孫もしくはひ孫の場合(子ども以外の場合)、すべての贈与に関わる残額が相続税の対象となり、相続税額の2割加算が適用されることとなります。
(参考:財務省「令和3年度税制改正の大綱」(※2))
まとめ
教育に必要な資金の取り扱いでは、「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」については贈与税がかからないとされています。とはいえ、この要件にあてはまるには、「必要な都度直接これらに充てるためのもの」でなければなりません。
教育資金贈与の制度は、あらかじめまとまった額を非課税で贈与できることから、手間を省きながら節税することが可能です。したがって、子どもや孫の教育資金を用意しており、贈与税対策や相続税対策を考えておられる方には非常に有効な制度といえるでしょう。
(※1)国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」
(※2)財務省「令和3年度税制改正の大綱」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員