更新日: 2021.09.03 贈与

相続対策は教育資金贈与が良いって聞いたんですが、本当ですか?

執筆者 : 柘植輝

相続対策は教育資金贈与が良いって聞いたんですが、本当ですか?
相続対策に用いられる制度に「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」があります。この制度は、本当に相続対策としてベストな選択肢になり得るのでしょうか。
 
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度を利用した相続対策について考えていきます。

【PR】オンライン完結する不動産の名義変更サービス

【PR】そうぞくドットコム不動産

おすすめポイント

・戸籍謄本など必要書類の取得、全国対応
・各種申請書一式の自動生成、法務局郵送
・不動産が何筆でも、相続人が何人でもOK
・Webからの資料請求で特別価格85,000円

柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度とは

「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」(以下、教育資金贈与の特例)とは、30歳未満の方が父母や祖父母など直系尊属から教育資金に充てる目的で贈与を受けたお金について、最大1500万円まで贈与税が非課税となる制度です。
 
ここでいう教育資金には学校の学費だけではなく、塾や習い事など教育費といえる幅広い用途が含まれます。
 
しかし、教育資金贈与の特例を利用するには金融機関での手続きが必要であったり、利用用途が教育資金に限定されるほか、贈与した方が亡くなると、その時点で教育費として使われずに残ったお金は一定の例外事由に当たらない限り、相続などによって取得したと見なされて相続税の対象になるといった大きなデメリットも存在しています。
 
特に相続税の対象となると、贈与を受けた方が贈与した方の子以外(孫、ひ孫)である場合は相続税が通常の2割増となるなど、非課税の金額の大きさにつられて安易に利用すると後悔することにもなりかねません。
 

相続税対策としての教育資金贈与の特例は最適解ではない

確かに教育資金贈与の特例は相続税対策として有効な方法の1つです。しかし、必ずしもベストな選択肢ではありません。
 
そう言い切れる最大の理由は、教育費がそもそも非課税である点にあります。祖父母や父母が孫や子に都度必要な範囲で贈与する教育費や生活費は、税法上、非課税とされているからです。
 
さらに将来、贈与した方が亡くなったタイミング次第では、相続税が2割増になる可能性も残っています。せっかく相続対策をしたのに、手間と制約と税金が増えたのでは意味がありません。
 
そういった点を考えると、よほど莫大な財産があるような場合でもない限り、教育費は必要な時々で贈与し、教育費以外は暦年贈与によって非課税の範囲で毎年贈与していく方が相続税対策としては有効でしょう。
 

【PR】相続する土地・マンションがあなたの生活を助けるかも?

相続争い対策や相続財産確保の手段としては有効

遺産分割をめぐる相続争いを事前に防ぎ、確実に子や孫に一定の財産を残すという意味での相続対策として、教育資金贈与の特例は役に立ちます
 
相続税の加算リスクは気になるものの、あらかじめ特例によって贈与された部分は基本的に遺産分割の対象となることはなく、贈与された方のものになります。贈与した方が亡くなる前に教育資金として使い切ってしまえば、相続税が増加するデメリットもありません。
 
また、相続争いとは少し離れますが、一括で最大1500万円まで非課税で贈与できることから、例えば自営業や会社経営をしている方が、収入に余裕があるときに子や孫の教育資金を確保しておきたいという場合は特に有効な手段になり得ます。
 

教育資金贈与の特例は、よく考えてから利用を

教育資金贈与の特例は、一括で1500万円まで非課税で贈与できるものの、利用用途が限られるほか、相続税が割り増しされる可能性もあります。相続対策として有効な手段の1つであるのは事実ですが、必ずしも最適解というわけではありません。
 
教育資金贈与の特例について利用を考えているのであれば、他の相続対策とも比較し、十分に検討してから利用するようにしてください。
 
出典
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
 
執筆者:柘植輝
行政書士