更新日: 2021.09.03 贈与

暦年贈与を上手に利用するためのポイントって?

執筆者 : 柘植輝

暦年贈与を上手に利用するためのポイントって?
相続税対策でよく利用されることがある暦年贈与は、手軽で確実な節税方法です。しかし、その仕組みを正しく理解しないままでは効果的に節税できないこともあります。
暦年贈与で相続税対策をする場合のポイントについて解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

暦年贈与とは

暦年贈与とは、毎年110万円ずつ財産を贈与していくことで、相続税の支払いを最小限に抑える節税方法の1つです。なぜ110万円かというと、そこには贈与税との関係があります。

贈与税は、毎年110万円を超えて贈与を受けた部分に発生します。せっかく相続税を抑えたにもかかわらず、贈与税が発生してしまっては節税効果が薄れてしまうため、暦年贈与は110万円以内で行われることが多いのです。

暦年贈与をする必要があるか計算する

そもそも相続税が発生しなければ、わざわざ暦年贈与をして相続税を節税する必要はありません。
相続税は、相続財産の総額が3000万円+法定相続人×600万円を超えた場合にかかります。つまり、少なくとも相続対象となる財産が3600万円以下である場合は、暦年贈与で相続税対策をしなくてもいいのです。

暦年贈与で相続税対策を考えているのであれば、まずは相続税が発生するのかどうかという点から考えてみてください。

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暦年贈与を上手に利用するポイントと注意点

暦年贈与を上手に利用するためには、次のポイントに気を付けた上で贈与を行う必要があります。

相続開始前3年以内の贈与に相続税が発生することがある

相続税は被相続人の死亡日からさかのぼり、3年前の日までの間に贈与した財産も含めて計算されることになります。仮に贈与した時点では贈与税がかからなくても、相続税の課税対象となります。

ただ、相続の開始前3年以内の贈与であっても、贈与税の配偶者控除の特例を受けている、または受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する部分など一定の場合は相続税の対象とならないことがあります。
暦年贈与をするのであれば、できる限り早めに贈与が終わるようにするか、前述の特例を利用するとより効果的です。

相続争いが起きる可能性がある

暦年贈与を相続人となるであろう特定の方のみに行っていると、他の相続人となり得る方との間で不公平が生じたり、感情的に納得できない方も出てくるなど、相続争いの原因になる可能性があります。
場合によっては相続の際、自身に最低限保証された相続分である遺留分が侵害されたとして、遺留分侵害額の請求を行使する相続人が現れ、泥沼の相続争いに発展するかもしれません。

暦年贈与を行う場合、贈与が相続争いの原因とならないよう、できれば相続人となるであろう全ての方に公平になるような配慮をしておきたいところです。

税務署に認められない可能性がある

ただ単に毎年110万円を渡していただけでは、暦年贈与として税務署から認めてもらうことができず、相続税を課せられる可能性があります。
暦年贈与であることを証明するためには、贈与のたびに契約書を作成し、贈与を受ける方が管理する口座に送金するというように、毎年きちんと行っていた贈与である証拠を残しておく必要があります。

また、毎年同じ金額で贈与を行っていると、一括で贈与できるものを贈与税逃れで分割していると判断されることもあるため、110万円にこだわらず、毎年必要な金額での贈与をすることも大切です。

暦年贈与は簡単に行えるからこそ、慎重な対応を

暦年贈与は誰でも簡単に行える基本的な相続税対策です。しかし、ただ毎年贈与をしているだけでは思わぬ落とし穴にはまり、暦年贈与の恩恵を最大限に受けられないこともあります。

暦年贈与での相続税対策をより効果的にしたいのであれば、あらかじめポイントをしっかりと押さえておき、必要に応じて専門家に相談しながら慎重に行うことをおすすめします。

参考
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

執筆者:柘植輝
行政書士

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