更新日: 2021.11.16 贈与
世代を飛ばして孫に贈与。どんなメリットがある?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
相続開始前3年以内の贈与分の加算を避けることができる
相続や遺贈などによって財産を取得した人が、亡くなった方から相続の開始前3年以内に贈与を受けていた場合、その贈与によって受けた財産については、贈与時の価格を相続財産に加えて相続税が計算されます。
しかし、あらかじめ子ではなく孫に贈与をしておけば、通常は子が相続人となって、遺贈を受けていない場合は孫が相続人となるケースは少ないため、相続開始前3年以内の贈与が相続財産に加算されることがなくなり、相続税を節税することができます。
効率よく暦年贈与できる
贈与税は、受けた贈与が年間で110万円を超えた部分について課税されます。つまり、年間110万円までの贈与であれば、税金が課税されることなく財産を移転でき、間接的に相続税を節税できることになります。このように、贈与税が非課税となる範囲で毎年贈与していくことを暦年贈与といいます。
しかし、この方法では仮に子が2人いる場合でも、年間で220万円ずつしか非課税で暦年贈与できず、財産の移転に時間がかかります。
そこで、孫も1人加えて暦年贈与ができれば、年間330万円とかかる時間は1.5倍、孫が2人なら年間440万円と2倍になり、孫に贈与することで加速度的に非課税での財産移転が可能になります。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
財産をより多く残すことができる
基本的に相続財産は、世代交代のたびに小さくなっていきます。相続財産が課税対象となる場合、相続のたびに相続税が発生するからです。相続税の税率は10%から55%と、決して無視できるものではありません。
そこで一世代を飛ばし、子ではなく孫に財産が移転するよう贈与を行うと、相続税の課税対象となる機会を減らすことができます。要は、親から子へ、子から孫へという2回の相続を、孫への1回の贈与で終わらせられる場合もあるということです。
もし、孫への贈与で全ての財産を移転することができなくても、相続税の対象となる財産を減らすことができ、場合によっては相続財産にかかる相続税が非課税となる範囲に抑えることもできるため、結果的により多くの財産を残すことが可能になります。
各種特例を最大限利用できる
贈与には、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度や、教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度、結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度などがあります。
これらの特例は、子や孫のどちらも対象となる上、1000万円を超える贈与についても上限の範囲で非課税とすることができます。
贈与を受ける方の年齢制限が定められていたり、制度ごとに贈与を受けた財産の利用目的が学費など一定範囲に限られていますが、こうした贈与を孫に対して行うことで、相続税の節税と間接的な子への金銭支援ができるようになります。
相続対策になる
子に相続させたい財産、相続させる必要がある財産を除いた、ある程度の部分について、先に孫へ贈与しておくことによって、財産の整理ができ、相続争いを防ぐこともできます。
また、孫への贈与を機に、相続の内容や相続分などについて子と話し合っておくことで、よりトラブルの可能性が少ないスムーズな相続とすることにもつながります。
相続対策は孫への贈与も選択の1つに
孫への贈与は相続税だけではなく、相続争いの防止など、相続全般の対策として有効なものになります。しかし、個別の事情によっては孫に贈与することで相続争いが起きてしまったり、贈与が否認されるなどして、今回紹介したようなメリットを得られなくなってしまう恐れもあります。
世代を超えて孫へ贈与をする際は、制度について十分調べて実行するか、専門家へ相談した上で行うことをおすすめします。
出典
国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
執筆者:柘植輝
行政書士