もめやすいといわれる「二次相続」。どんな状況で起こる? トラブルを防ぐ方法は?
配信日: 2022.02.13
二次相続が起こる状況と、想定されるトラブルにはどのようなものがあるのか。そして、そのようなトラブルを事前に防ぐ方法について解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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二次相続はなぜトラブルに発展する?
両親のどちらか1人が亡くなった時点での相続手続きを一次相続といいますが、その時点では、もう片方の親(配偶者)が生存していることから、遺産分割に関しては配偶者の意思や置かれている状況を尊重して行われるのが一般的です。
例えば、遺(のこ)された配偶者が引き続き居住している不動産については、そのまま住み続けられるよう、配偶者が相続するケースが多く、それ以外の預貯金や有価証券などといった比較的分けやすい財産を配偶者以外の相続人で分け合うことで、話し合いがまとまることも珍しくありません。
しかし、二次相続となると、分割しにくい不動産などについて、相続人同士でどのように分けるかを話し合う必要が生じ、また、長男や次男、長女など相続人の属性によって優劣がつけられやすくなってしまう点もトラブルに発展する原因といえるでしょう。
■相続税額が大きくなる
一次相続では、配偶者の税額軽減が使えるため、それを最大限利用することで相続税の負担を軽減できます。相続税における配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続した財産については、「1億6000万円」もしくは「法定相続分」までが非課税です。
例えば、夫が5億円の財産を残して亡くなり、法定相続人が配偶者(妻)と子ども2人だった場合で、法定相続分で遺産分割を行った際の妻(配偶者)の課税財産額は以下のとおりとなります。相続税の基礎控除額は3000万円+(600万円×法定相続人の数)で算出します。
5億円-(3000万円+600×3)×1/2=2億2600万円
1億6000万円を超えていますが、法定相続分までは非課税となるため、2億2600万円に対する相続税は発生しません。しかし、二次相続となると配偶者の税額軽減は利用できなくなるため、遺された相続人に対する相続税の負担が一次相続よりも大きくなります。
また、二次相続においては相続人が1人減ることになり、基礎控除額も少なくなります。このことも相続税額を大きくする原因となることから、二次相続では遺産分割内容さらにはそれに伴う相続税額の負担がもとで、トラブルに発展しやすいといわれています。
■小規模宅地等の特例の適用要件が厳しくなる
相続税の節税効果を高めるものには、「配偶者の税額軽減」の利用以外にも「小規模宅地等の特例」を利用する方法があります。
この小規模宅地等の特例を利用するには、要件を満たす必要があり、居住用の宅地であれば配偶者は無条件で利用できますが、それ以外の親族の場合は、定めらえた要件をすべて満たす必要があります。
この特例が適用されることにより、相続税の課税評価額が最大80%減額されるため、この要件が使えなくなると、さらに税負担が増える結果になります。
二次相続のトラブルを防ぐ方法
では、このような二次相続のトラブルを防ぐ方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
■相似相続控除の活用
相似相続控除とは、一次相続と二次相続の間が10年以内だった場合、二次相続における相続税額から一定額が控除される制度です。具体的には、一次相続の相続税から二次相続までの年数(1年未満切り捨て)に10%を乗じた額が控除されます。
■生前贈与の活用
年間110万円までは非課税となる贈与税の暦年課税制度を活用し、生前に財産を贈与しておくこともトラブルを防ぐ方法として有効です。ただし、その際には連年贈与とみなされないように、あらかじめ契約書を交わしておくなどの対応を取ることも忘れないようにしましょう。
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まとめ
二次相続におけるトラブルを防ぐためには、一次相続があった時点で二次相続を見据えた対策を行っておくことがポイントです。両親のどちらが先に亡くなるかはわからないことから、それぞれの場合において事前にシミュレーションしておきましょう。
特に両親の資産がどちらかに偏っている場合は、一時相続前からの準備が必要です。両親が亡くなった後の子ども同士の相続は、話し合いがなかなかまとまらないケースもあり、そのためにも一次相続が発生した時点で対応しておくことが重要です。
特に節税効果の高い小規模宅地等の特例については、適用される要件が配偶者とそれ以外の人では大きく異なるため、一次相続の時点で配偶者ではなく子どもに相続させておくことで、最終的に税負担が軽減される可能性もあります。
生前贈与や相似相続控除ももちろん有効的な対策ですが、相続開始前3年以内の生前贈与は相続税の課税対象となる点や、相似相続控除を受けられる期間が限定されている点も考慮しながら対策を行うようにしましょう。
出典
(※1)国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
(※2)国税庁「相似相続控除」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員