「暦年贈与」が終了するってホント? 改正法についておさらい!
配信日: 2022.03.03
この「暦年贈与」の終了案について、今回の改正においては、最終的にどうなったのでしょうか。2022年の税制改正の内容とあわせて解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
聞くのは耳ではなく心です。
あなたの潜在意識を読み取り、問題解決へと導きます。
https://marron-financial.com
2022年税制改正
2022年の税制改正における資産課税の主な改正点は、以下のとおりです。
■住宅資金贈与の非課税特例
従来からある住宅資金贈与の非課税特例の内容が変更となりました。この住宅資金贈与の非課税特例は正式名称を「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等」といい、要件を満たした場合における住宅資金のための贈与については一定額まで非課税とするものです。
今回の改正により適用期間が2年間延長され、2023年12月31日までになったほか、要件の1つであった受贈者の年齢についても、現行の20歳以上から18歳以上へと変更になりました。
また、要件の中に合った既存住宅における築年数が廃止され、新耐震基準を満たしていることへの要件が加わっています。この改正の内容については、2022年1月1日より適用されていますが、年齢要件だけは2022年4月1日からの適用になる点に注意が必要です。
「暦年贈与」については?
暦年贈与の廃止については、要望として提出されていたものの、今回の改正では見送りとなりました。したがって、2022年においても、年間110万円までの贈与は非課税扱いとなります。
■今後の見通し
暦年贈与は相続税対策としてよく利用される制度ですが、特に高所得者や相続財産が多い人にとって有利な内容であることから、不公平さが問題視されています。したがって、今後は何らかの形で見直されることが予想されます。
■そもそも暦年贈与とは?
暦年贈与とは、1月1日から12月31日までに贈与を受けた合計額が110万円以下であれば非課税となり、逆に110万円を超えるとその金額に応じた贈与税が課税されるというものです。
税率はどのような人からの贈与かによって異なり、兄弟間や夫婦間、さらには親子間などの贈与は「一般贈与」とされ、直系尊属である両親や祖父母から受けた贈与などについては「特例贈与」とみなされます。そして、一般贈与のほうが特例贈与よりも税額負担が大きくなるよう設定されています。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
贈与に関する特例措置
贈与においては、住宅資金等の非課税特例以外にも以下のような制度があります。今一度、その内容についておさらいしておきましょう。
■相続時精算課税制度
原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子や孫に対する贈与において、選択することで累計2500万円までは暦年課税の対象外とし、相続が発生した際に精算するというものです。
ただし、この制度を利用するには、税務署への届け出が必要です。そして、いったんこの制度を選択すると暦年課税には戻れない点に注意が必要です。また、途中で贈与額が2500万円を超えた場合は、その超えた部分について一律20%が課税対象となる点にも注意しておきましょう。
■その他の非課税特例
「結婚および子育て資金」の贈与についても非課税となる制度があります。20歳以上50歳未満の人が直系尊属から結婚および子育て資金において一括贈与を受けた際には1000万円までが非課税です。また「教育資金」においても同様の制度があります。
どちらも金融機関への届け出が必要ですが、制度を利用したいと思った際には、ぜひ活用してみましょう。
まとめ
この度の税制改正の要望で注目されていたのは、暦年課税を廃止し、相続時精算課税制度に統一させるということでした。今回の改正には反映されませんでしたが、この問題については引き続き議論がなされることが予想されます。
この問題で影響を受けるのは、相続対策をどのように行おうかと思っている人ではないでしょうか。もちろん、引き続き暦年課税の制度を利用しながら生前贈与を行うことも大切ですが、相続時精算課税制度にも活用すべきメリットがあります。
例えば、相続財産の評価は贈与時点のもので行われますので、今後価値が上昇すると考えられる財産については早めに贈与しておくなどといった対策も有効です。また、累計額である2500万円を超えた部分については一律20%が課税されますが、現在の贈与税の最大税率が55%であることを考えると、納める税額は半分以下となります。
相続における生前贈与などの対策を考える際には、他の非課税特例の併用も考え、最終的に有効となる方法を見いだすようにしましょう。
出典
(※1)財務省「令和4年度税制改正の大綱」(2/8)
(※2)国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
(※3)国税庁「相続時精算課税の選択」
(※4)国税庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
(※5)国税庁「教育資金非課税申告の手続」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員