更新日: 2022.04.07 相続

祖父母が孫の学費を払うとき「贈与」で知っておきたいポイントとは?

祖父母が孫の学費を払うとき「贈与」で知っておきたいポイントとは?
かわいい孫のために学費を援助したい、と思う祖父母は多いようです。また住宅ローンや生活費など、なにかと支出の多い子育て世代の「子」にとっても、親からの援助はありがたいものです。
 
ただし、原則として、資金援助は「贈与」にあたります。自分の財産を「無償であげる」という意思表示と、「もらう」という承諾によって成立する契約です。受け取った受贈者には、贈与税という税金が発生します。
 
そのため、税金面での負担を考慮した贈与を考える必要性があります。非課税となる制度や特例もありますので、くわしく見ていきましょう。
 
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP🄬認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

孫のために資金援助してあげたい

祖父母から孫への教育資金の援助として、代表的な手段は以下の3パターンが挙げられます。


(1)贈与税の非課税枠年間110万円を活用した贈与
(2)都度贈与
(3)教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の活用

それぞれの特徴や注意したいポイントは以下の通りです。
 

(1)贈与税の非課税枠年間110万円を活用した贈与

1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。この場合、贈与税の申告は不要です。言い換えると、1年間に贈与された財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対しては、贈与税が発生するため申告が必要です。


例)祖父から50万円+祖母から50万円 ……合計100万円 であれば非課税
祖父から60万円+祖母から60万円 ……合計120万円 の場合は、
120万円 - 基礎控除110万円 = 10万円に対して課税されます。

なお、父母や祖父母といった直系尊属から贈与を受けた場合、贈与を受けた人が20歳(2022年4月以降は18歳)以上であれば、特例税率を適用することができ、贈与税率が優遇されます。
 

(2)都度贈与

贈与税には、贈与を受けても課税されない、つまり「非課税財産」が認められています。例えば、生活に必要と認められる生活費や教育費、祝い金・香典・見舞金などが該当します。
 
「祖父に入学金を負担してもらう」「祖母に塾代を負担してもらう」「学用品を買ってもらう」など、都度の資金援助であれば必要な費用として非課税になります。
 
ただし、相当に高額な場合には認められない可能性もありますので、常識で考えられる金額の範囲内にとどめるよう注意が必要です。
 

(3)教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の活用

教育資金の贈与の特例制度(正式名「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」)を活用すれば、30歳未満の子や孫に教育資金を贈与する場合に、子・孫1人につき1500万円まで非課税での一括贈与が可能です。
 
国は、金融資産の大半を高齢者が保有している現状から、子育て世代への資産移転を促進することで経済の活性化を見込んでおり、税制改正によりこの特例制度は2023年3月31日まで延長されました。
 
入学金や授業料、施設設備費、修学旅行費、学用品の購入など、学校等に支払う費用のほか、スイミングスクールやピアノ教室などの習いごとに使うこともできます。ただし、学校以外への支払いはこのうち500万円までに限定されています。
 
教育資金の贈与の特例制度は、信託か預金で贈与を行う必要があります。具体的には、
 
1、金融機関と贈与者(祖父母)が教育資金管理契約を結んだうえで、贈与者は口座を開設し、金融機関は「教育費に使う」という目的に従って口座を管理します。
2、受贈者は教育資金の支払いに充てた金銭の領収書等を金融機関に提出しなければなりません。
 
取扱金融機関は、受贈者から提出された領収書等によって、教育資金の口座から払い出された金銭が教育資金に充てられたことを確認し、その金額や支払年月日を記録します。領収書がない場合には、教育費として認められないことに注意しましょう。
 
教育資金の贈与の特例は、以下のいずれか早い日に終了することとされています。
 
1、受贈者が30歳に達した日
2、受贈者が死亡した日
3、教育資金口座の残高がゼロになった場合で、受贈者と金融機関の間で教育資金管理契約を終了させる合意があったときは、その合意により終了する日
 
受贈者が30歳になった時点で、残高が残っている場合には、残高に対して贈与税がかかることに注意が必要です。
 
なお、「事前に1500万円の一括贈与が可能」とは、一括で行う、もしくは、一度しかできないということではなく、限度内であれば何度でも贈与を繰り返すことができるということです。つまり、使い切れずに贈与税の対象になるよりも、必要な金額での贈与をすることが有効です。
 
贈与者が亡くなった場合の相続税との関連性についても注意が必要です。2021年4月1日以後の一括贈与契約では、受贈者が(1)23歳未満、(2)学校等に在学中、(3)教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合であれば相続税の課税はありませんが、そうでない場合には、死亡時期にかかわらず贈与者が亡くなったときの残額が相続財産に加算されます。
 
つまり残高については、贈与ではなく相続で受け取ったものと見なされ、さらに法定相続人でない孫などの場合には相続税額について2割加算が適用されます。
 

相続対策も視野に入れて、総合的に判断する

祖父母から孫への教育資金の援助について、税金面でメリットがあるとされる手段についてお伝えしましたが、特に、教育資金の贈与の特例制度については、非課税枠が大きいため、検討する価値はありそうです。ただし、贈与者(祖父母)、受贈者(孫)の年齢や学費が必要となる期間などについて、慎重に検討したいものです。
 
元気なうちに、必要なときに、必要な人に財産を贈与できることは理想的と言えます。将来の相続を考えれば、財産を贈与により減らすことで課税金額が減り、相続税負担を抑えることも可能です。しかしながら、自身の生活費を切り詰めてまで贈与する必要はなく、また枯渇してしまうリスクは避けたいものです。
 
さらに、すべての孫に平等に贈与できればよいのですが、ありがたい資金援助のはずが、不公平感からもめる火種となっては本末転倒です。「非課税」という単語にひかれ、よく分からないまま金融機関からの勧誘で契約してしまった、領収証の提出が面倒くさいというトラブルも散見されます。
 
くれぐれも総合的に判断することが重要です。中立的な立場でサポートできる専門家に相談してみることもおすすめします。
 
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合(暦年課税)
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士

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