更新日: 2022.04.20 贈与

生前贈与にはどんなメリット・デメリットがある? 相続税対策になるって本当?

生前贈与にはどんなメリット・デメリットがある? 相続税対策になるって本当?
相続税対策の一つとして、生前贈与を考える人もいるのではないでしょうか。生前贈与とは、その名のとおり生きている間に配偶者や子、孫などに財産を贈与することです。財産を贈与する際には、その贈与額に応じた贈与税を納める必要がありますが、非課税枠などを上手に活用すれば大きなメリットを得られるでしょう。
 
そこで、当記事では生前贈与の内容をはじめ、具体的にどんなメリット・デメリットがあるのかを解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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新井智美

監修:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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生前贈与とは

生前贈与とは、財産を所有する人が生きている間に「配偶者や子、孫などの自分以外の誰かを指定して無償で財産を引き渡すこと」です。法定相続人以外に財産を渡せるため、贈与者の死後に起こる親族間のもめ事を回避できる効果も期待できます。
 
財産をほかの誰かに譲るのだから相続ではないかと思う人もいるのではないでしょうか。確かに財産を渡す点について生前贈与と相続の目的は共通しますが、厳密には図表1のような違いがあります。
 
図表1

生前贈与の場合 ・財産を所有する人が生きている間に贈与を行う
・相続税の課税対象となる財産を減らし、相続税を軽減できる
相続の場合 ・財産の所有者となる被相続人が亡くなってから、相続人が財産を受け取る
・相続税が発生する

筆者作成
 

上手に活用すれば贈与税がかからないケースもある

生前贈与には、さまざまな控除や非課税の制度があります。これらをうまく利用することで、贈与税がかからずに節税効果が得られるケースもあります。この後、詳しく解説するのでチェックしていきましょう。
 

暦年課税

贈与税は、1月1日~12月31日までの1年間に贈与した財産をもとに税額を計算する暦年課税が基本です。これは、贈与額が基礎控除額の110万円の範囲内なら、贈与税は非課税になります。
 
例えば、1年間に500万円を贈与した場合、110万円を引いた390万円が贈与税の課税対象です。年間の贈与額を110万円以下にして数年かけて贈与すれば、贈与税の負担なしで数百万円の贈与も可能です。
 

配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦なら「配偶者控除」を利用できます。居住用不動産または居住用不動産取得のための資金を贈与する場合、暦年贈与の非課税枠(110万円)に加えて2000万円までは贈与税がかからずに生前贈与ができます。
 
適用を受けるためには以下の要件を満たす必要があり、一定の書類を添付して税務署への申告を行わなければなりません。

●居住用不動産または居住用不動産を購入するための資金の贈与
●婚姻期間が20年以上の夫婦
●同じ配偶者からの贈与は一生に一度しか適用されない
●贈与の翌年3月15日までに贈与を行った不動産または贈与資金で購入した不動産に住んでおり、その後も住み続ける見込みがある

 

住宅取得等資金の贈与税の特例

平成27年1月1日から令和3年12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅を取得するための資金の贈与を受けた場合、一定の金額までは贈与税が非課税になります。非課税限度額は住宅取得の契約締結日に応じて、図表2と図表3のように定められています。
 
図表2
住宅取得資金等の非課税限度額(消費税等の税率が10%の場合)

契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
平成31年4月1日~令和2年3月31日 3000万円 2500万円
令和2年4月1日~令和3年12月31日 1500万円 1000万円

出典:国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
 
図表3
住宅取得資金等の非課税限度額(消費税等の税率が10%でない場合)

契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
~平成27年12月31日 1500万円 1000万円
平成28年1月1日~令和2年3月31日 1200万円 700万円
令和2年4月1日~令和3年12月31日 1000万円 500万円

出典:国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
 
非課税の特例を適用するための要件は以下のとおりです。

●受贈者は贈与者の直系卑属であること
●贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
●贈与を受けた年の受贈者の所得が2000万円以下であること
●平成21~26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」を受けていない
●自己の配偶者、親族などから住宅用の家屋の取得をしたものではない
●贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築・取得等をする

 

教育資金の一括贈与

令和5年3月31日までの間に、30歳未満の人が父母や祖父母などの直系尊属から教育資金として一括贈与を受けた場合、1500万円まで贈与税が非課税(学校以外については500万円)となります。
 
教育資金の範囲は以下を参考にしてください。

●入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費
●入学や入園試験の検定料
●学用品の購入費、修学旅行費、学校給食費
●教育に関する役務の提供の対価や施設の使用料
●スポーツまたは文化芸術に関する活動、その他教養向上のための活動に係る指導への対価 
●通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費

 

結婚・子育て資金の一括贈与

平成27年4月1日~令和5年3月31日までの間に、18歳以上50歳未満の人が父母や祖父母などの直系尊属から結婚・子育て資金に充てるための贈与を受けた場合、贈与税が非課税になります。非課税限度額は1000万円までですが、そのうち結婚資金は300万円が上限です。
 
結婚・子育て資金の範囲は以下のとおりです。

●挙式費用、衣装代などの結婚披露宴にかかる費用(婚姻日1年前の日以後に支払われるもの)
●一定の期間内に支払われる家賃、敷金等の新居・転居費用
●不妊治療・妊婦健診費用
●分べん費・産後ケアにかかる費用
●子どもの医療費、幼稚園・保育所などの保育料、ベビーシッター代

 

相続時精算課税

相続時精算課税とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳(令和4年4月1日以降は18歳)以上の子や孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
 
贈与額2500万円までは何回かに分けて贈与しても贈与税が課税されません。2500万円を超えた部分に対し、一律20%の贈与税が課される仕組みです。
 
相続時精算課税制度の適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。また、この制度を選択した場合、選択に係る贈与者から贈与を受けた財産は、選択をした年分以降のすべてにおいてこの制度が適用されます。暦年課税への変更はできません。
 

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生前贈与のメリット

生前贈与には以下のようなメリットがあります。

●親族以外にも財産を渡せる
●節税対策になる
●財産がすぐにもらえる

【親族以外にも財産を渡せる】
相続は、財産を所有する人(被相続人)の死後に法定相続人の間で分割して相続されます。
 
しかし、生前贈与は相続ではないため、法定相続人の権利は適用外です。贈与者が指定する人なら、血縁関係のない相手でも問題ありません。
 
相続の場合、遺族間で遺産をめぐるトラブルもありがちですが、生前贈与なら面倒なトラブルが起こる心配はないでしょう。
 
【節税対策になる】
生前贈与を行う大きなメリットは、節税効果です。一定条件の範囲内の贈与なら、贈与税は非課税対象になります。
 
【財産がすぐにもらえる】
生前贈与なら財産を所有する人が生きているうちに財産を贈与できます。相続に比べて早く財産をもらえる可能性が高いでしょう。受贈者側の立場からすると、その譲り受けた財産を早くから活用することができます。

 

生前贈与のデメリット

生前贈与のデメリットは以下のとおりです。

●贈与とは認められない場合がある
●親族間でもめる原因になる可能性がある

【贈与とは認められない場合がある】
定期贈与とみなされるなど、税務署から生前贈与と認められず相続税対策として失敗する可能性があります。生前贈与のたびに、贈与者と受贈者の間で贈与契約書を作成するなど、定期贈与とみなされないように対策をしてください。
 
【親族間でもめる原因になる可能性がある】
特定の相手に多額の贈与をすると、親族間でもめる原因になる可能性があります。生前贈与をするに当たって、親族に生前贈与の理由や考え方を説明しておくとよいでしょう。
 

生前贈与を計画的に行おう

生前贈与は多額のお金に関わることです。生前贈与を検討しているなら、贈与する側が相続対策について考えられるうちに、実行したほうがよいでしょう。大切な財産を賢く引き継いで有効活用してもらうために、贈与する相手の経済的事情なども考慮して計画的に行ってください。
 
生前贈与に関する専門知識がなくて「どのように行えばよいのだろう」と悩んでいる人は、税理士などの専門家に相談するのも効果的です。
 

出典

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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