更新日: 2022.05.23 相続税
孫のために積み立てていた合格祝い。渡したら贈与税がかかるケースがあるって本当?
贈与税を負担するのは、贈与者ではなく受贈者となります。したがって、贈与者・受贈者ともに、どのような状況であれば贈与税がかかるのか把握しておくことは大切です。
そこで本記事では、贈与税が発生する条件や贈与税の計算方法などについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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贈与税とは
贈与とは、財産をあげる人(贈与者)と財産をもらう人(受贈者)が双方同意したうえで成立する契約です。贈与は口約束でも成立しますが、贈与契約書を用いて書面に残す場合もあります。
贈与税は、受贈者が贈与者から取得した財産に課される税金です。1年間に受け取った贈与額が一定額を超えた場合に贈与税がかかります。
贈与税が発生する場合は、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日(日程が異なる場合あり)の間に確定申告を行う必要があります。
年間110万円までは贈与税はかからない
1年間(1月1日~12月31日)の贈与額が110万円を超えていない場合は、贈与税は発生しません。贈与税には110万円の基礎控除があるからです。そのため、年間の贈与額が110万円以下だと非課税、110万円を超える場合は贈与税がかかります。
もし、親や祖父母から祝い金などをもらったとしても、数万〜数十万円などの社会通念上相当の金額であれば、贈与税はかかりません。
贈与税率と計算方法
贈与税の税率は「一般贈与財産(一般税率)」と「特例贈与財産(特例税率)」の2つに分かれています。
特例贈与財産(特例税率)は、親や祖父母などの直系尊属から20歳以上の子どもや孫へ贈与する場合に適用されます。一般贈与財産(一般税率)は、特例贈与財産(特例税率)には該当しない贈与での適用です。
一般贈与財産(一般税率)と特例贈与財産(特例税率)の税率と控除額は、図表1のとおりです。
【図表1】
一般贈与財産(一般税率) | 特例贈与財産(特例税率) | ||||
---|---|---|---|---|---|
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 | 基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - | 200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 | 400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 | 600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 | 1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 | 1500万円以下 | 40% | 190万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 | 3000万円以下 | 45% | 265万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 | 4500万円以下 | 50% | 415万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 | 4500万円超 | 55% | 640万円 |
出典:国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)より筆者作成
上記のとおり、一般贈与財産と特例贈与財産はどちらも税率が10〜55%ですが、特例贈与財産のほうが基礎控除後の課税価格と控除額は大きいです。そのため、同じ贈与額であれば、一般贈与財産より特例贈与財産のほうが贈与税は少なくなります。
贈与税の計算方法は「(贈与額−基礎控除110万円)×税率−控除額」です。税率と控除額は、基礎控除後の課税価格(贈与額−基礎控除110万円)を計算して、図表1から調べます。
例えば、年間の贈与額が500万円で一般税率の場合の贈与税は「贈与額500万円−基礎控除110万円)×税率20%−控除額25万円」となり、贈与税は53万円です。特例税率の場合は「贈与額500万円−基礎控除110万円)×税率15%−控除額10万円」となり、贈与税は48万5000円となります。
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教育資金は1500万円まで非課税
平成25年度の税制改正によって「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」が新設されました。
これにより、親や祖父母などの直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合は、受贈者1人につき1500万円まで非課税となります。適用期間は令和5年3月31日までの贈与分となります。また、学校など以外に支払う金額については非課税限度額が500万円となっている点に注意が必要です。
なお、1500万円の非課税を受けるには、金融機関との間で教育資金管理契約を締結し、教育資金非課税申告書を金融機関経由で税務署へ提出する必要があります。
合格祝いが110万円を超える場合は贈与税がかかる可能性がある
贈与税は基礎控除が110万円あるため、社会通念上相当の金額であれば、贈与税はかかりません。一般的に、合格祝いが110万円を超えることはほとんどないため、孫に合格祝いを渡しても贈与税はかからない可能性が高いです。
ただし、合格祝いとほかの贈与との合計が年間110万円を超えている場合は、贈与税が発生するため注意してください。なお、教育資金の一括贈与に該当する場合は、1500万円まで非課税となります(令和5年3月31日まで)。
申告などの手間はありますが、非課税は大きなメリットなので、ぜひこれらを生かして教育資金をうまく贈与しましょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4512 直系尊属から教育資金及び結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度の主な相違点
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁 贈与税の申告
国税庁 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部