更新日: 2022.06.22 相続税

相続が発生! ―円満家庭でも問題勃発の可能性あり―

相続が発生! ―円満家庭でも問題勃発の可能性あり―
相続問題には3つの対策が必要とされています。3つとは、争族対策、節税対策、納税資金対策です。
 
納税資金の準備不足が理由で、将来の二次相続に不安を残すこともあります。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

小規模宅地等の特例を使う場合、申告手続きは必要

「相続は大変」という話を聞くと、何が大変なのかが心配になる方もいるでしょう。
 
まず、故人が遺(のこ)した財産を“誰がどのように引き継ぐのか”を決めなければなりません。分け方によっては、税金も違ってきます。納税が必要な場合は、資金を期日までに調達しなくてはなりません。今回は2つの事例で考察します。
 

<Aさんの場合>

Aさんのお義母さんが亡くなり、相続の手続きを進めることになりました。困ったことに1人娘であるAさんの妻は入院中で、Aさん主導で事務作業をすることになりました。すでに父親は他界していることから、相続人は1人です。親族間で争族の心配はありません。
 
主な相続財産は自宅不動産で、亡くなった母親とAさん家族が同居していました。
 
父親が亡くなったとき(いわゆる一次相続)に、母と娘の2人で相続しましたので、今回は自宅不動産全体の2分の1にあたる部分が相続の対象です。基礎控除額は3000万円+600万円=3600万円です。
 
不動産などの相続財産評価を算出した結果、葬儀費用を差し引いたら3600万円より少ない金額になったそうです。自宅不動産なので小規模宅地等の特例を使うことができますが、今回はその必要はなくなりました。
 
税金は払わないで済むとしても、特例を使うのなら申告は必要です。そうなると、専門家に依頼するなどの負担も増えます。Aさんは「範囲内に収まったことで、早々に相続問題から解放され、妻の介護に専念できる」と話されています。
 

納税資金の準備不足で問題が拡大

<Bさんの場合>

Bさんのお父さんが亡くなり、遺産分割について話し合うことになりました。相続人は母、Bさんと弟です。
 
一次相続の遺産分割は、将来起こりうる二次相続(母親が亡くなった時の相続)のことも考慮して、行うことが肝要です。
 
父親の療養生活が長かったこともあり現預金は少なく、相続財産のほとんどが不動産です。内訳は、自宅以外に貸アパートと農地があります。評価額を計算した結果、約1億円の金額になることが分かりました。
 
Aさんはすでに独立していて、実家では母親と弟が暮らしています。法定相続分に沿って分割した場合は、母親2分の1、Bさんと弟が4分の1ずつです。
 
一般的に「不動産は分割しにくいので苦労する」「分割できないからと共有名義にしておくと、問題が先送りされて、将来に禍根が残る」などの懸念を抱く方もいらっしゃるかもしれません。確かに、“争族”を回避するために、注意深く対応する必要があります。
 
争族を回避するために、本来なら「3人が納得する分割方法はどのようなものか?」を話し合うことからスタートすることになりそうですが、Bさんの場合は少し違っています。
 
父親は入退院を繰り返していましたが、重篤な状況ではありませんでしたので、納税資金の準備ができていない状況で相続が起こりました。
 

相続の課税価格の合計が1億円と仮定すると、
基礎控除が3000万円+600万円×3人=4800万円
課税遺産の総額は 1億円-4800万円=5200万円

 
これを母親1/2、兄弟がそれぞれ1/4ずつ相続すると、母親には相続税はかかりませんが、兄弟の納付税額は145万円×2人と算出できます。145万円は大金です。手持ちの資金から支払えなければ、相続した不動産を売却して納税資金を作ることになりますが、そう簡単ではないのです。
 
相続税の申告期限(納期限)は、相続開始後10ヶ月以内と決まっています。もし、すべてを母親が相続すれば、配偶者の税額軽減が適用できますので、税金はかかりません。
 
しかし、母親が亡くなったときに起こる二次相続を考えると、その方法には課題が多いです。
 
二次相続の場合は、母親自身の財産も加算されますので、今回相続した財産がそっくりそのままの状態なら、さらに財産が増えることになります。相続人が減りますので基礎控除は4200万円で、配偶者の税額軽減も使えません。小規模宅地等の特例などを使っても、相当額の相続税を払うことになると考えられます。
 
Aさんの場合のようにスムーズに相続が進めばよいですが、Bさんのような事例も多いと思います。
 
分け方次第で次の相続時には大きな負担を担うことも考慮して、なおかつ納得のいく分け方を模索することになりそうです。筆者個人としても、相続の難しさを改めて知る事例となりました。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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