更新日: 2022.06.29 相続税
「月極め駐車場」でも相続税評価額が「大幅に減額」になるって本当? 相続の「小規模宅地等の特例」について解説!
小規模宅地等の特例は自宅や賃貸物件などにしていた建物や構築物の敷地に対して適用されます。そして、ある条件を満たせば月極め駐車場でも、この制度を利用することができます。本記事では、月極め駐車場でも小規模宅地等の特例が適用される条件などを解説します。
執筆者:八木友之(やぎ ともゆき)
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
相続の小規模宅地等の特例とは
相続の小規模宅地等の特例とは、被相続人が自宅や賃貸物件などで使用していた敷地を相続する場合、相続税評価額を80%、または50%減額できる特例です。減額幅が大きいため、利用できる人などの条件が詳細に規定されています。この制度を利用するためには、建物や構築物の敷地の用に供されている宅地等と決められています。そのため、敷地上に建物または構築物がないと制度を利用できません。
小規模宅地等の特例の適用条件
小規模宅地等の特例は、どのように相続財産を利用しているのかにより適用条件が変わります。相続財産を利用している区分は、自宅として使用していた敷地、賃貸物件として使用していた敷地、事業用として使用していた敷地の3区分です。本項では事業者ではなくても利用できる、自宅と賃貸物件として使用されている土地のケースを解説します。
自宅として使用していた土地のケース
被相続人の自宅として使用していた土地のことを、特定居住用宅地等と呼びます。特定居住用宅地等とは、被相続人が住んでいた宅地で、配偶者または一定の条件を満たす親族が取得した部分のことをいいます。特定居住用宅地等の主な要件は、図表1の通りです。
図表1
取得者 | 要件 |
---|---|
配偶者が相続する場合 | ・なし |
同居している親族が相続する場合 | ・相続開始時から相続税の申告期限まで被相続人の敷地を所有していること |
同居していない親族が相続する場合 以下の全ての要件を満たすこと | ・居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍の人であること ・被相続人に配偶者がいないこと ・相続開始直前に被相続人の自宅に取得者が住んでいないこと ・相続開始前から3年以内に、取得者または取得者の配偶者や3親等内の親族などが被相続人の自宅に居住したことがないこと ・相続開始時に被相続人の自宅を過去に1度も取得者が所有していたことがないこと ・相続開始時から相続税の申告期限まで被相続人の敷地を所有していること |
出典:国税庁 「No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」より筆者作成
適用条件を満たした場合、被相続人の自宅の敷地が330平方メートルを上限として、相続評価額が80%減額されます。
賃貸物件として利用されている土地のケース
相続開始の直前に被相続人などの貸し付け事業のために使われていた敷地を、貸し付け事業用宅地等といいます。貸し付け事業用地等の適用要件は図表2の通りです。
図表2
・相続開始前から営んでいた貸付事業を、相続税の申告期限まで継続して営んでいること
・賃貸物件の経営開始後3年以内に相続が発生していないこと
・賃貸物件の経営開始後3年以内に相続が発生した場合は以下の条件を満たせば適用可能
1.相続開始前3年を超えており事業的規模で賃貸経営をしている
2.賃貸経営者である被相続人が賃貸住宅を建て替えたり、賃貸物件を新築したりする場合
出典:国税庁 「 No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」より筆者作成
適用条件を満たした場合、被相続人が経営していた賃貸物件の敷地が200平方メートルを上限として、相続評価額が50%減額されます。
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月極め駐車場でも小規模宅地等の特例は利用できる?
被相続人が賃貸物件として月極め駐車場を3年以上経営している場合、貸し付け事業用地等として小規模宅地等の特例は利用できるのでしょうか。小規模宅地等の特例を利用するには、建物または構築物の敷地の用に供されている宅地等であることが必要です。そのため、月極め駐車場の上に、建物または構築物があれば利用が可能ということです。
月極め駐車場にアスファルト舗装がしてある場合は、アスファルト舗装が構築物として認められるため、小規模宅地等の特例の利用が可能です。一方、土地がむき出しの青空駐車場の場合は、構築物がないため制度を利用することができません。
まとめ
相続税は課税額が大きくなりやすい税金です。そのため、利用できる相続税の減税制度は、可能な限り活用していくことが大切です。相続の小規模宅地等の特例は、相続税評価額を50%もしくは80%も減額させることができるため、小規模宅地等の特例の条件を満たす場合は必ず申請を行うようにしましょう。しかし、小規模宅地等の特例は、内容が複雑なため、税理士などの専門家に相談した上で準備することをおすすめします。
出典
国税庁 No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
執筆者:八木友之
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター