知っておきたい遺言書のこと。注目の自筆証書遺言書保管制度って何?

配信日: 2022.12.02 更新日: 2025.07.02
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知っておきたい遺言書のこと。注目の自筆証書遺言書保管制度って何?
遺言書は万が一の際、財産を誰に、どのように残すかなど、自分の意思を確実に伝える手段です。また、残された家族の「争族」を防ぐための対策の1つともいえるでしょう。
 
手軽に利用できる遺言書としては、自分で作成する自筆証書遺言がありますが、紛失や改ざんなどのリスクが指摘されていました。今回は、そういった問題点を改善すべく設けられた「自筆証書遺言書保管制度」について解説したいと思います。
廣重啓二郎

佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。

現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。

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自筆証書遺言書保管制度って何?

自筆証書遺言書保管制度とは、民法が定める自筆証書遺言の形式で作成した遺言書を法務局に預け、適正に管理・保管してもらえる制度です。
 
自筆証書遺言は公正証書遺言とは異なり、遺言書の保管場所は自由です。そのため、せっかく自筆証書遺言書を作成しても紛失や第三者による改ざんのほか、相続の際に発見されないリスクがあることなどが問題視されていました。
 
そこで、2020年7月10日から始まった自筆証書遺言書保管制度を利用することにより、法務局での自筆証書遺言書の保管が可能となっています。
 
自筆証書遺言書保管制度にはどんな特徴や注意点があるのか、まずは自筆証書遺言と公正証書遺言の違いから説明していきます。
 

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは?


 
遺言書を作成する場合、主に自筆証書遺言と公正証書遺言を利用することが多くなっています。それぞれのメリット、デメリットは表1のとおりです。
 
【表1】

自筆証書遺言 公正証書遺言
メリット ・自分で作成できるため、費用がかからない
・いつでも書き直せる
・遺言の内容を秘密にできる
・公証人という専門家が遺言書を作成するため、遺言が無効になる可能性が低い
・原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない
・家庭裁判所での検認の手続きが不要
デメリット ・一定の形式を満たしていない場合、遺言が無効になる可能性がある
・遺言書を紛失したり、忘れ去られる恐れがある
・第三者によって遺言書が勝手に書き換えられたり、破棄や隠ぺいされる恐れがある
・遺言者の死亡後、家庭裁判所に遺言書を提出して検認の手続きが必要になる
・証人が2人必要(証人は相続に利害関係がない第三者とする必要がある)
・作成に費用や手間がかかる

※筆者作成
 

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自筆証書遺言書保管制度の特徴

自筆証書遺言書保管制度は、これまでの自筆証書遺言のデメリットを軽減・解消できる以下の特徴があります。

(1)自筆証書遺言の形式に適合しているか、チェックを受けられる
(2)法務局での保管によって偽造や書き換えを防ぐことができる
(3)遺言書は原本の保管のほか、データでも管理されるので相続人は全国のどこの法務局でも閲覧できる
(4)家庭裁判所の検認が不要になる
(5)相続人全員に遺言書を保管していることを通知してくれる

なお、(5)の通知には「関係遺言書保管通知」と「死亡時通知」の2種類があります。
 
関係遺言書保管通知は、遺言者の死亡後、相続人のうちの誰かが遺言書を閲覧した場合や、遺言書情報証明書の交付を受けたとき、そのほかのすべての相続人に遺言書が保管されていることを知らせるものです。
 
一方、死亡時通知は遺言者が希望した場合に限り、あらかじめ指定した1人に対して、遺言者の死亡の事実が確認された際に遺言書の保管について通知が行われます。
 

自筆証書遺言保管制度の注意点

自筆証書遺言保管制度はメリットの多い制度ですが、利用する場合には注意しなければならない点もあります。
 

・遺言の内容はチェックしてくれない

自筆証書遺言書保管制度では、遺言書としての形式のチェックは受けられますが、遺言の内容についての確認や相談には応じてもらえず、遺言書の有効性が保証されるわけではありません。
 

・保管の申請は遺言者本人が法務局で行う

遺言書の保管の申請は、必ず遺言者本人が法務局(遺言書保管所)で手続きを行う必要があるため、例えば病院で寝たきり状態などの方は困難といえるでしょう。
 
なお、保管の申請時は遺言書1通につき、3900円の手数料がかかるほか、遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付を請求する場合にも所定の手数料が発生します。
 

まとめ

自筆証書遺言で遺言書を作成して自分で管理する場合、紛失や改ざんなどの危険性が伴いますが、自筆証書遺言書保管制度を利用することで、これらのリスクを回避できるメリットがあります。
 
ただし、遺言書の有効性が保証されるものではなく、必ず本人が申請を行うなど注意点もあるため、制度の内容を理解した上で利用することが求められるでしょう。
 

出典

法務省 自筆証書遺言書保管制度
 
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

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