更新日: 2019.05.17 その他暮らし

「家なき子特例」って?住宅の相続税が大幅減される特例とは

「家なき子特例」って?住宅の相続税が大幅減される特例とは
相続で住宅を取得した場合、相続税がいくらかかるのかということは最大の心配事です。
 
相続税の計算で、土地の評価額を通常の80%OFFにしてくれるのが「小規模宅地等の特例」です。
 
その適用対象の一つに、いわゆる「家なき子特例」といわれるものがあります。
 
高橋庸夫

Text:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

そもそも小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例(330平方メートルまで)とは、「亡くなった人(被相続人)が自宅として使っていた土地については、配偶者または同居していた親族が相続した場合には、相続開始時の相続税評価額から80%評価減する」という特例です。
 
夫が亡くなった場合は、相続した配偶者や子供は、通常これからも同じ家に住み続けます。そのため、土地に相続税をドカーンと課税してしまうと、相続税を払うために自宅を売却しなければならないということも有り得ます。
 
このようなことを防ぐために、配偶者または同居していた親族が相続する場合、相続税の負担を大幅に軽減するように特例ができました。
 
特例の効果は絶大で、例えば相続税評価額が1億円の土地を配偶者が相続した場合、宅地でない「更地」として相続すると評価額は1億円のままとなります。
 
しかし、「宅地」として相続した場合は、80%OFFの2000万円が評価額となります。
 
そして、この特例の対象として「家なき子」が該当します。
 

「家なき子特例」の対象と要件

被相続人に配偶者も同居していた親族もおらず、別居している親族が相続した場合も、特例を受けられることがあります。これが「家なき子特例」です。
 
なぜ「家なき子」かというと、「3年以上自分の持家に住んでいない親族」という要件があるからです。つまり、賃貸マンションや賃貸アパートに居住しており、持家に住んでいない親族であることが条件となっています。
 
要件をまとめると以下の3つになります。
 

1.配偶者も同居していた相続人もいないこと

「配偶者がいない」とは、配偶者が既に亡くなっている、離婚している、一度も結婚していないなどの場合が該当します。
 
また、「同居していた相続人がいないこと」とは、被相続人が一人で自宅に住んでいたことを指します。(相続人でない人と同居していた場合は要件を満たします)最も多く想定されるのは、地方の実家で母親が一人暮らしをしているケースなどでしょう。
 

2.相続人が3年以上、自分の持家に住んでいないこと

相続が発生する3年以上前から、相続人となる親族が別居しており、賃貸マンションや賃貸アパートに住んでいることを指します。
 
注意点としては、例えば被相続人の娘が相続する場合に、その夫が所有する持家に住んでいるとしたら、当然ながら特例には該当しません。
 
つまり、持家ありなしの判定は、相続人となる親族の「夫婦」で行うこととされていました。
 

3.相続が開始した日から10ヶ月間は所有し続けること

自宅を相続した人が、相続を開始した日から10ヶ月以内(相続税の申告期限)にその自宅を売却してしまった場合は、特例を受けることができません。
 

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税制改正による封じ手

これらの要件を全て満たすケースは、それほど多くないかもしれません。
 
しかし、80%評価減の特例を利用したいがために、自分が住んでいる住宅をわざわざ子供(被相続人の孫)に贈与して、自分が家なき子となって相続するケースもあります。
 
また、自宅を嫁の親が買い取り、借家として賃貸してもらうなど、無理やり建物の所有名義を変えて特例を受けてしまう事例なども発生しました。
 
このことを受けて、平成30年4月1日の税制改正において特例の適用要件が強化され、相続人に持家がなくても、3親等内の親族の持家や経営している会社が持つ家に住んでいる場合には、特例に該当しないこととなりました。
 
また、相続開始時に居住している家を過去に所有していたことがある人についても、特例が受けられなくなりました。これによって、自宅を嫁の親が買い取り、賃貸してもらう方法では、特例に該当しないことになります。
 
このように、これまでは特例に該当していたやり方が、税制改正によって該当しなくなる場合があります。相続対策などの検討に際しては、十分に留意の上、専門家である税理士等に相談することをお勧めします。 
 
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー,住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士

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