更新日: 2023.09.25 相続税
【平成30年改正で厳格化】小規模宅地の「家なき子の特例」ってなに?
本記事では、家なき子特例について解説します。家なき子特例をご存じでない方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
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「家なき子の特例」は「小規模宅地等の特例」の1つ
「家なき子特例」は通称であり、このような名称の特例があるわけではありません。実際は、租税特別措置法に規定する「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(通称「小規模宅地等の特例」)」のうちの1つです。
小規模宅地等の特例は、相続税に関する特例です。相続税を計算する上で基礎となるのは、相続した財産であり、より正確にいえば、その評価額です。この評価額が高ければ、相続税が課税される蓋然性(がいぜんせい)は高くなります。また、相続税は超過累進税率が採用されているため、評価額が高くなるにつれ高い税率が採用されます。
反対に、評価額が低ければ、相続税が課税される蓋然性(がいぜんせい)は低くなりますし、相続税が課税されたとしても、採用される税率が低くなる可能性があります。
小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たした土地について、相続税における評価額を減額しますという制度です。家なき子特例は、この小規模宅地等の特例を「家を所有していない子」にも適用するというものです。
「家なき子の特例」の概要
家なき子特例の適用を受けた場合、330平方メートルを限度に、その土地の評価額を80%減額することができます。ただし、先述のとおり、一定の要件を満たす必要があります。
小規模宅地等の特例は、相続開始の直前における土地の利用区分ごとに、要件・減額される割合・限度面積が規定されています。この利用区分の中に「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(特定居住用宅地等)」というものがあります。家なき子特例の適用を受けるためには、「特定居住用宅地等の要件」を全て満たさなければなりません。
家なき子特例の適用を受けるための要件は、以下のとおりです。
被相続人 | 配偶者がいない |
相続人(本人) | 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち、日本国籍を有しない者ではない |
相続開始前3年以内 | 日本国内にある以下の家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがない (1)相続人が所有する家屋 (2)相続人の配偶者が所有する家屋 (3)相続人の3親等内の親族が所有する家屋 (4)相続人と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋 |
相続開始の直前 | 被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいない |
相続開始時 | 相続人が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがない |
相続後 | その宅地などを相続開始時から相続税の申告期限まで有している |
※国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」を参考に筆者作成
このうち、平成30年の法改正で追加された要件は下記の2つです。これにより、改正前は可能となっていた、自宅の名義変更やリースバックといった方法で特例の適用を受けることが、改正後はできなくなっています。
1.相続開始前3年以内
日本国内にある以下の家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがない
(3)相続人の3親等内の親族が所有する家屋
(4)相続人と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋
2. 相続開始時
相続人が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがない
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まとめ
家なき子特例は、「小規模宅地等の特例」の1つです。家なき子特例の適用を受けることで、相続財産の評価をする際、330平方メートルを限度に、対象となる土地の評価額を80%減額することができます。
平成30年の法改正により、家なき子特例の要件は厳格化されました。とはいえ、適用を受けられれば、相続時に大きな恩恵を受けられます。相続対策の1つとして、参考にしていただければ幸いです。
参考・出典
e-Gov法令検索 「租税特別措置法」
e-Gov法令検索 「租税特別措置法施行規則」
e-Gov法令検索 「相続税法」
国税庁 「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
国税庁 「財産を相続したとき」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー