更新日: 2024.07.09 贈与

相続税の生前贈与の加算期間の延長は実質「増税」!? 65歳の「定年前」に備えておくべきことはありますか?

相続税の生前贈与の加算期間の延長は実質「増税」!? 65歳の「定年前」に備えておくべきことはありますか?
2024年1月より、生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されました。相続税の課税対象が広がったため、実質的に増税といえるでしょう。
 
保有している財産が相続税の基礎控除を超えており、相続税対策を検討している方もいるのではないでしょうか。今回の法改正を受けて、早い段階から計画的に生前贈与を行う重要性が高まりました。
FINANCIAL FIELD編集部

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2024年1月以降は生前贈与加算が7年以内に

2024年1月1日より、生前贈与をしてから7年以内に贈与者が死亡した場合、贈与した財産を相続財産に持ち戻して計算します(生前贈与加算)。つまり、贈与が行われなかった形で相続税を計算しなければなりません。
 
2023年12月31日までは、持ち戻しの期間が7年以内ではなく3年以内でした。生前贈与加算の制度には、専ら相続税の節税だけを目的とした生前贈与を防ぐ目的があります。
 
具体的に、被相続人の相続開始日と加算対象期間は以下のとおりです。

●令和8年12月31日までに相続が開始:相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)
●令和9年1月1日~令和12年12月31日までに相続が開始:令和6年1月1日から死亡の日までの間
●令和13年1月1日より後に相続が開始:相続開始前7年以内(死亡の日からさかのぼって7年前の日から死亡の日までの間)

持ち戻しの期間が長くなった(相続税の課税対象が拡大した)ため、2024年1月以降は相続税の負担が重くなる可能性があります。今後、相続税の負担を軽減するためには、計画的に生前贈与を行う必要があるでしょう。
 
「今後7年間は生きていられる」という保証はない以上、相続税の負担を抑えたい場合は、早い段階から生前贈与を検討してみてください。
 

孫への贈与が有利になる可能性

生前贈与加算は、将来相続人になる人への贈与が対象です。具体的には、配偶者や子、直系尊属への生前贈与が持ち戻しの対象となります。
 
そのため、将来相続人にならない孫への贈与は、持ち戻しの対象にはなりません。 亡くなる直前に孫へ贈与した場合でも、相続財産へ持ち戻す必要がないため、相続税の節税効果を得られます。
 
ただし、被相続人の子がすでに死亡しており、孫が代襲相続する場合は孫が相続人となります。つまり、贈与した分を持ち戻して計算しなければなりません。
 
ほかにも、遺言書で孫に遺産を相続させる場合も、孫へ行った贈与は生前贈与加算の対象になります。遺言書で財産を与える旨の記述をすると「相続または遺贈により財産を取得した人」に該当するためです。
 
また、生命保険金を孫が受け取る場合も「相続または遺贈により財産を取得した人」に該当し、生前贈与加算が適用されます。
 
状況次第では、孫への贈与が必ずしも有利とはならないため注意しましょう。
 

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相続時精算課税制度を活用する

相続時精算課税制度を活用して、生前贈与を行う方法もあります。相続時精算課税制度とは、子や孫へ累計2500万円まで非課税で贈与できる制度です(相続時に贈与した分を相続財産に足し戻して精算する)。
 
2024年1月より、相続時精算課税制度に年間110万円までの非課税枠が新設されました。年間110万円まで非課税で贈与でき、さらに将来相続が発生しても非課税の範囲内における贈与分は相続財産に足し戻す必要がありません。
 
例えば、相続時精算課税制度を活用して500万円の贈与を行った後に相続が発生したとき、110万円を超える390万円を相続財産として足し戻します。つまり、110万円分の相続財産を減らせるわけです。
 
生前贈与加算のように、7年以内の贈与を足し戻すというルールはありません。贈与を行うタイミングに関係なく、年間110万円までは完全に非課税で贈与できます。
 

まとめ

相続税が実質的に増税となり、計画的に生前贈与をする必要性が高まりました。
 
しかし、孫への贈与や改正された相続時精算課税制度を活用すれば、相続税負担を抑えられます。相続税対策を検討している方は、こちらの記事を参考にしながら最適な対策を実践してみてください。
 

出典

国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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