更新日: 2024.07.14 贈与
親と帰省の相談をしていたら「貯めたへそくりが150万円あるから来たときに渡すね」と言われました。銀行に預けるように言うべきでしょうか?
親に貯金を銀行に預けるように言うべきか、他に選択肢はないのか、というご相談です。
執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。
へそくりは問題なのか?
Aさんが心配している税金がかかるかどうかに関して、「へそくり行為自体」と「へそくりをもらった場合」に分けて考えます。
まず、へそくりそのものが必ずしも問題ではありません。給料から毎月いくらかを手元に残すなど、源泉徴収後のいわゆる「手取り額」からのへそくりは、給与振込額の一部を毎月銀行口座に預けるのと同じで、いわば保管場所の違いです。
問題になり得るのは、へそくりが他人からもらったお金だったり、公営競技の払戻金、配当金や家賃収入などであったりする場合です。フリマサイトでの売り上げも、事業とみなされれば対象になります。
もし、各種の課税対象になるのに確定申告せず、必要な所得税や贈与税などを納めていなければ、脱税状態となっているので問題です(※1)。
もっとも、親御さんの話の様子からは、コツコツと勤労所得から貯めてきたように思えます。そうであれば、手元に現金をおくこと自体は課税と結びつきません。それより、災害による逸失や紛失・盗難リスクに備えて、一定額以上は銀行に預けることを勧めてよいかもしれません。
このまま受け取った場合
親の言うとおりに150万円を受け取った場合、Aさんは贈与税を支払わないといけないかもしれません。贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた合計額から、暦年課税に係る基礎控除額110万円を超える額に課税されるからです(※2)。
なお、「贈与税がかからない財産」の一例として国税庁は次のケースを挙げています(※3)。
「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」
必要な都度、直接これらに充てるためのものに限られます。孫も対象になりますが、今回の場合は使途目的が明確ではないこと、必要な都度ではなく事前に一括して渡す予定であることから、要件を満たすのは難しいかもしれません。
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贈与にならないケース
贈与税がかからないケースとしては、祖父母など直系尊属から「教育資金」として財産を一括贈与する場合があります。一定の条件と手続きにより1500万円まで非課税となる特例です(※4)。
例えば、親に健康不安があり、まとまったお金を教育資金目的で早く渡したい場合には、検討対象になります。
また、暦年課税制度を利用し110万円を非課税で孫に直接贈与する方法も挙げられます。翌年以降も適切なタイミングで同様の贈与は可能です。孫がまだ幼い場合などは、代わりに親権者(Aさん)が贈与契約書の締結、財産管理を行うことになります。
ただし、贈与されたのはAさんの子なので、Aさんが子どものために自由に生かそうとしても、一定の制約が生じます。このように、「誰から」「誰に」「どんな目的で」「何の制度で」渡すか、その内容や組み合わせで、実現できることや課税の有無が異なってきます。なお、個別ケースの判断については、税理士など専門家にご相談してください。
親の気持ちを尊重するには
どのような方法であれば親御さんの思いに沿い、税金もかからないようにできそうでしょうか。
ひとつは、孫に直接、通常認められる範囲の支援をする方法です。生活費や教育費あるいは病気の治療費などの支援が必要になった都度、Aさんの親が直接支払うのです。
あるいは、親がAさんに必要額とともに依頼し、Aさんがそのまま購入などの費用に充てることも考えられます。その場合は両者の通帳にお金の流れを記録し、確証を残すことが最低限必要でしょう。
「いや、やはりまとまった金額を先に渡したい」ということであれば、Aさんが暦年課税制度を利用して受け取るのがよいでしょう。
今年は110万円を受け取り、来年以降は、定期贈与にならない適切なタイミングで別途受け取るなり、40万円はAさんの配偶者に贈与してもらうなどして、Aさんに託すことができます。やはり毎年贈与契約書を残したいものです。
この場合、Aさんにこのお金の使い道の制限はありません。生活費や教育費に限らず、家族の思い出づくりなど、親御さんからみて「孫のため」になるような使い方を自由に選択できるのではないでしょうか。
出典
(※1)国税庁 確定申告が必要な方
(※2)国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
(※3)国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
(※4)国税庁 財産をもらったとき
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員