更新日: 2024.07.21 贈与
父が「今から相続に向けて準備したい」と、毎年100万円を贈与してくれるそうです。「税金がかからなくて得」らしいですが、本当に大丈夫なのでしょうか…?
本記事では、父から毎年100万円の贈与を受ける場合に贈与税が課されないのかどうか、また生前贈与のメリットや注意点などを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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贈与を受ける人には年間110万円までの非課税枠がある
生前贈与とは、贈与する側(以下、贈与者)が存命中に、贈与を受ける側(以下、受贈者)に対して財産を贈与することを指します。
贈与税には所定の非課税枠があり、「暦年贈与」「相続時精算課税制度」のいずれを選択しているかで適用される非課税枠が変わります。
誰でも最初は「暦年贈与」という仕組みが適用されており、この制度の非課税枠は年間で110万円です。
1年間に100万円ずつ生前贈与される場合には暦年贈与の非課税枠の範囲内であるため、贈与税がかかりません。
なお、1年で110万円の非課税枠は贈与者ごとに110万円ではなく「受贈者ごと」にカウントされる点に注意が必要です。
例えば、父と母から贈与を毎年100万円ずつ受けた場合、その合計額である200万円に対して贈与税がかかります。このケースの贈与税は9万円となります。
生前贈与には将来の贈与税・相続税を節税できるメリットがある
生前贈与を上手に活用することで節税効果が期待できます。まず、前述のとおり生前贈与では受贈者1人につき年間110万円までの贈与なら贈与税がかかりません。
また、生前贈与は相続税の節税にも効果があります。相続税は亡くなった人が死亡時点で所有していた財産の価格に応じて課税の有無や金額が決定され、所有していた財産が多いほど相続税も高額になっていきます。
生前贈与を行うことで死亡時点の財産を減らすことができるため、定期的に生前贈与することで節税対策につなげることが可能です。
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生前贈与にはデメリット・注意点もある
暦年課税はもちろん、現在では相続時精算課税制度でも年間110万円の非課税枠ができています。父から子どもに毎年100万円ずつ贈与する場合、基本的に贈与税はかかりません。ただ、生前贈与を受ける場合には以下のような注意点もあります。
暦年課税の場合、亡くなる7年以内の贈与は相続税の対象になる
暦年課税では、相続開始前の一定期間以内に贈与された財産は相続財産に加算するという「生前贈与加算」というルールがあります。
以前の生前贈与加算は「相続開始前3年」が対象でしたが、現在では「相続開始前7年」になっています。つまり、生前贈与してから7年以内に贈与者が死亡した場合、贈与税の非課税枠である年間110万円の非課税分も含め、相続財産に持ち戻して相続税を計算する必要があります。
生前贈与加算は亡くなる前に贈与によって財産を移すことで相続税を逃れようとするケースへの対策として必要な制度です。
生前贈与加算を避けるためには「相続時精算課税制度」を選択するという方法があります。現在の相続時精算課税制度では年間110万円の基礎控除があり、相続時精算課税制度は持ち戻しの対象外です。
定額贈与とみなされると贈与税の課税対象になる
暦年贈与を活用して1年ごとに生前贈与する場合の注意点として「定額贈与とみなされないように気を付ける」ということがあります。
定額贈与とは、毎年贈与することがあらかじめ決まっている贈与のことです。税務署から定額贈与だと判断されれば、年間110万円以下の贈与であっても贈与税が課せられる可能性があります。
「毎年贈与があるたびに贈与契約書を作成する」「毎年の贈与時期や金額をこまめに変更する」など、定額贈与と判定されないための工夫が必要になるでしょう。
まとめ
贈与税の課税制度には「暦年課税」「相続時精算課税」があり、現在ではどちらを利用しても年間110万円の非課税枠があります。
非課税枠の範囲内なら毎年贈与しても基本的に贈与税は発生しません。贈与者が贈与したいと決めた人に確実に贈与できたり、財産を減らすことで相続税を節税できたりする効果が期待できます。贈与者と受贈者でよく話し合って、可能なら生前贈与を検討してみましょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 財産をもらったとき
国税庁 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー