【相続トラブル例】実家を複数の相続人が共有した場合の対処法は?
配信日: 2019.02.02 更新日: 2019.06.28
しかし、実家(1つの不動産)を複数の相続人(子供など)が相続した場合、トラブルになるケースは少なくありません。
以下に、1つの不動産を複数の相続人が共有することで発生しかねない相続トラブルと対処法について、具体例を挙げてお話しします。
執筆者:中田真(なかだ まこと)
CFP(R)認定者、終活アドバイザー
中田FP事務所 代表
NPO法人ら・し・さ 正会員
株式会社ユーキャン ファイナンシャルプランナー(FP)講座 講師
給与明細は「手取り額しか見ない」普通のサラリーマンだったが、お金の知識のなさに漠然とした不安を感じたことから、CFP(R)資格を取得。
現在、終活・介護・高齢期の生活資金の準備や使い方のテーマを中心に、個別相談、セミナー講師、執筆などで活動中。
https://nakada-fp.com/
実家の相続トラブルの例
たとえば、以下の家族構成だとします。
・母
・兄(母の息子。普段は離れて暮らしている)
・妹(母の娘。母と実家に同居している)
母が亡くなったため、母の財産である実家の土地、建物、預貯金を法定相続に従って兄と妹が半分ずつ相続することになりました。兄と妹が実家の2分の1ずつを取得したケースです。
その後、兄がビジネスで失敗し、借金返済のため実家を売りたいと言い出します。しかし、妹は実家に居住しているので、売却したくはありません。このような場合、実家を売却しなければならないのでしょうか?
答えは「NO」です。
複数人で共有している不動産を売却する場合、共有者全員の承諾が必要になるためです。
では、兄の希望に沿うには、妹はどうしたらいいのでしょうか?たとえば「兄と一緒に実家を売却する」「兄の持分を妹が買い取る」などが考えられますが、いずれの選択肢も現状を考えると妹にとっては難しいものになります。
結果、実家の相続をきっかけに、兄と妹の仲が悪くなってしまうこともあります。
実家の相続トラブル対処法は?
実家の相続トラブル対処法としては、以下の方法が考えられます。
1、遺言で分け方が指定されていれば、納得しやすい
実家の所有者である被相続人(上記の例では母)が、生前に遺言書で分け方について明記しておくことで、実家の相続トラブルを回避できる可能性があります。
2、代償分割を検討する
代償分割とは、相続した遺産が不動産など分割しにくい場合、特定の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人に対して金銭などを支払う方法です。
「でも、そんなお金はない」という場合、被相続人が生前に生命保険を契約して「保険金」を代償分割にあてるという方法があります。上記の例の場合、妹に「実家の土地と建物」、兄に「法定相続分の実家の土地と建物に相当する金額(生命保険金の受取人を兄にする+預貯金)」とすることで、実家の相続トラブルを回避できます。
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相続する実家を複数人で共有することは避けたい
上記の例のように、兄と妹だけであれば相談することも可能ですが、その下の世代以降も相続した場合、実家を共有する人数が増えますので、不動産の売却はより困難になります。
たとえば、上記の例で兄に配偶者と子1人がいる場合は、兄が亡くなるとその配偶者と子1人が相続することになります。
その結果、実家の所有者は妹、兄の配偶者、兄の子の3人となり、売却するには3人の承諾が必要となります(持分は妹2分の1、兄の配偶者4分の1、兄の子4分の1)。そして、その次の世代が相続したら…。相続が発生するたびに所有関係がより複雑になり、実家を売却したくても所有者全員の承諾・合意は得にくくなっていきます。
事前に実家の相続トラブルが予想できる場合は、トラブル例や対処法を知っておくことで、実家の相続トラブルを回避できるかもしれません。
執筆者:中田真(なかだ まこと)
CFP(R)認定者、終活アドバイザー