父の財産が1億円もあるらしい…!相続税が高くならないか心配なのですが、「生前贈与」を活用した方が支払う税額を抑えられるのでしょうか?

配信日: 2025.01.09

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父の財産が1億円もあるらしい…!相続税が高くならないか心配なのですが、「生前贈与」を活用した方が支払う税額を抑えられるのでしょうか?
親から相続する財産が多いと、納付する相続税額も高くなります。あらかじめ相続財産について伝えられている場合は、相続時に全額を受け取るのではなく、一部を生前贈与で受け取ると税金を抑えられるかもしれません。
 
ただし、生前贈与を活用する際は、基礎控除額や受け取り方による違いを知っておきましょう。贈与税の金額が相続税額を上回る可能性もあるためです。今回は、生前贈与の活用で相続税額がどれくらい変わるのか、また生前贈与の注意点などについてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

一部を生前贈与にすれば税額が減る可能性がある

相続税の対策として、亡くなる前に生前贈与の形で渡す方法があります。贈与税の基礎控除額は年間110万円なので、超えない範囲で毎年受け取れば贈与税もかからず、相続税の負担を軽減できる可能性があるためです。
 
そこで、生前贈与を活用し、一部財産を贈与してから残りを相続した場合の税額を比較しましょう。条件は以下の通りとします。


●相続するのは子ども一人
●相続開始日は令和13年1月1日以降
●1億円以外に相続・贈与がない
●基礎控除以外の控除は考慮しない
●贈与は暦年課税を選択、基礎控除額内で毎年受け取っているとし、贈与税は考慮しない
●生前贈与を受けた場合は、相続開始前の7年以内には毎年100万円を受け取っている(計600万円が相続財産に加算)

相続税は基礎控除額が「3000万円+法定相続人数×600万円」のため、今回の条件では相続金額から3600万円を引いた金額が課税金額です。条件を基にすると、生前贈与された金額別の税率や税額などは表1のようになります。
 
表1

財産合計 1億円 1億円 1億円 1億円
生前贈与額 0円 3000万円 5000万円 7000万円
生前贈与の
相続財産加算分
0円 600万円 600万円 600万円
相続財産 1億円 7600万円 5600万円 3600万円
課税金額 6400万円 4000万円 2000万円 0円
税率 30% 20% 15% なし
控除額 700万円 200万円 50万円
税額 1220万円 600万円 250万円

※筆者作成
 
表1からも分かるように、生前贈与で受け取った金額が多いほど相続税額は低くなります。今回のケースだと、生前贈与で7000万円以上受け取っていれば相続財産が3600円以下になるため、相続税はかからないでしょう。
 

全額をまとめて生前贈与で受け取ると税額は高くなるケースがある

基礎控除額内ではなく、生前贈与としてまとめて相続したい財産を受け取ると、相続したときよりも税額が高くなる場合があるので、一度計算することがおすすめです。
 
例えば、先ほどと同じ条件で1億円を贈与されたときの税額を計算しましょう。まず、基礎控除額を引いた9890万円が課税対象になります。条件を基にすると、贈与税率や控除額、また贈与税額は以下の通りです。


●贈与税率:55%
●控除額:640万円
●贈与税額:4799万5000円

同じ金額の相続と贈与では、3579万5000円の差になります。
 

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生前贈与の注意点

節税のために毎年同じ金額を贈与として受け取っていた場合、贈与税の計算基準が通常と変わる可能性があるため、注意しましょう。
 
国税庁によると、毎年その金額を何年も連続で受け取ることが事前に約束されているときは、約束をした年に「総額を分割して受け取る権利」を贈与されたと扱われると示しています。
 
一度に税金がかからないようにするには、毎年お金を渡すたびに贈与契約を結ぶ必要があります。贈与契約書のように書面に残しておくと、もし、税務署に指摘されても説明しやすいでしょう。
 
また、生前贈与を受け取っていた際、相続開始前の3年〜7年以内に受け取った贈与財産は相続財産として加算されます。加算される期間については、相続開始日によって以下のように異なります。


●~令和8年12月31日:相続開始前の3年間
●令和9年1月1日~令和12年12月31日:令和6年1月1日~相続開始日
●令和13年1月1日~:相続開始前の7年間

ただし、4年以上前~7年以内までの贈与分については、100万円まで加算の対象外です。
 
例えば、亡くなるまでの10年間で毎年100万円を受け取っていた場合、7年間の金額(700万円)から100万円を引いた600万円は相続財産になります。基礎控除額を超えていれば、相続税額が増えるため、計算時に間違えないようにしましょう。
 

生前贈与をうまく活用できれば相続税の節税につながることがある

相続税は、課税金額が多いほど税率も高くなります。そのため、生前贈与を活用することで相続財産の金額を減らせば、税額も減らせるでしょう。
 
ただし、贈与税は基礎控除額が110万円のため、基礎控除額を超えた分に対して税金がかかります。もし、1年間に受け取る生前贈与の金額が大きいと相続税額よりも贈与税額が高くなる可能性があるため、基礎控除の範囲内で受け取るなど一部を分けた方がいいでしょう。
 
なお、同じ金額を何年にもわたって受け取る場合、初年度に総額を受け取る契約をしたと判断される可能性があります。課税されないためには、贈与契約書を毎年作るといった対策が必要です。また、亡くなる7年前までの贈与は相続財産になる点にも留意しておきましょう。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
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