その税金対策は本当に「節税」になっていますか? 相続税で損しないために親子がやるべきこととは?
配信日: 2025.02.04

本記事では、そういう人こそ、まずやってほしいことを解説するので、ぜひ参考にしてください。

執筆者:秋口千佳(あきぐちちか)
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士
母親の財産の書き出し
相続について筆者のもとに相談に来る人のなかには、「節税対策をしたいのでどんなことをしたらよいか教えてください」と焦っている人もいます。事情を聞くと、先立った父親の相続時に相続税の支払いが大変だったので、母親からの相続のときは納めたくない、という内容です。
このような考えをもっている人は、例えば保険会社から「相続税に係る課税財産を非課税とできる制度」(※)の説明を受けると、非課税の限度額の限度まで、保険商品を購入してしまうといった行動をとってしまったりします。もちろん、この制度は節税対策にはなります。
しかし、この制度を使う前にしてほしいことがあります。それが、「相続の対象となりそうな財産の書き出し」です。母親名義の預貯金や金融資産、不動産などの一覧表を作ります。目的は、母親の今後の生活費は足りるのか、さらには相続税額が生じるのかを把握するためです。
一覧表の作り方は簡単で、図表1のように表にまとめておくと便利です。初めて作るときは少し大変ですが、その後の更新は、毎年金額を訂正するだけでよいので、初回は頑張ってやってみましょう。
図表1
筆者作成
母親の今後の生活費は足りるのか
では、この一覧表を使って分析していきましょう。
まず1つ目は、母親の今後の生活費は足りるのか、を考えてみます。
母親の年齢が80歳、毎月の収入が年金12万円、毎月の生活費や医療費、孫へのお年玉やお小遣いなどを合わせると、支出は平均して20万円と仮定する場合、毎月8万円が不足していて、年間96万円を取り崩すことになります。つまり、毎年100万円近くを預貯金から使っていかなければなりません。
では、100歳まで生きると仮定すると、残り20年間で2000万円が必要となります。そのため図表1のうち普通預金と定期預金は、ほぼ日常の生活で消えてしまうと考えられます。
そのため、母親に今後介護が必要になるなどのことも考えると、株式や投資信託をそのまま保有するのではなく、これらの金融資産は売却をして現金化しておくことなどを検討する必要もあります。こういった判断が簡単にできるので、この一覧表は大切です。
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相続税額が算出されるのか
次に、この一覧表を使って分析するのは、相続税額が算出されるのかということです。もちろん、相続税額の計算は簡単にできません。最終的には税理士に試算してもらう必要はありますが、この一覧表を使って、相続税額の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人)を超えるかどうかだけは確認できます。
先ほどの母親の生活費が足りるのかを考えずに財産総額を見ると、約5000万円です。子が1人であれば基礎控除額は3600万円、子が2人であれば基礎控除額は4200万円です。
一覧表だけで判断すると、財産総額が基礎控除額を超えるので、相続税額は発生する可能性があると判断できます。
しかし、よく考えてみましょう。
今の財産一覧表から、母親のこれからの生活にかかる費用を考えたうえで相続税額が発生するか考えると、ほぼ預貯金がなくなり、株式と投資信託の財産と土地と家屋が残るだけになると仮定できました。
そうすると、財産総額が基礎控除額を超えないので、相続税額が発生する可能性は低くなります。つまり、節税対策をする必要はない、という判断もできます。
安易に「節税対策」をしない
相続税の節税対策と相続対策とは異なります。
「節税対策」は、相続税額が発生する可能性が高いため、生前贈与や生命保険の非課税を使って税金を減らす対策です。「相続対策」は、今保有している財産について、今後の引き継ぎ先を考える対策のことをいいます。
「相続税額を支払いたくない」というのは分かりますが、現状を正しく分析することをせず、安易に節税対策をしてしまうと、母親の生活費が足りない、という矛盾したことが起こり、子が母親の生活費を負担しなければならない、といった事態になりかねません。
こういったことにならないように、まずは財産の一覧表を作り、その後に親の生活費がどれぐらい必要なのかも考慮したうえで、それでも相続税額が発生する可能性が高いのであれば、節税対策をする、といった流れで考えてください。
決して、安易に生前贈与や生命保険の非課税を使わないようにしましょう。
出典
(※)国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士