父が多額の「借金」を残して亡くなりました。「相続放棄」をしようと思いますが、注意すべきことはありますか?

配信日: 2025.02.11

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父が多額の「借金」を残して亡くなりました。「相続放棄」をしようと思いますが、注意すべきことはありますか?
被相続人が多額の借金を残して亡くなった場合、遺族(相続人)がその借金を相続する(民法896条)と、遺族の生活は困窮してしまいます。借金を相続しないためには相続放棄が唯一の方法です。相続放棄にはいくつか気を付けるべき注意点がありますので、相続放棄する前に知っておきましょう。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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相続放棄の前に知っておきたい注意点

相続放棄は各相続人が単独で行えます。相続人は、相続の開始(被相続人の死亡)を知ってから3ヶ月以内(熟慮期間)に、相続放棄をする必要があります(民法915条)。
 
相続人が熟慮期間内に相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認するのか放棄するのかを判断する資料が得られないケースには、相続の承認または放棄の期間の伸長の申し立てにより、家庭裁判所はその期間を延ばせます。
 
相続放棄をすると、はじめから相続人にならなかったとみなされます(民法939条)。その結果、先順位相続人が相続放棄すると、自動的に次順位相続人に相続が移ります。トラブルのもとですので、次順位相続人に相続放棄を連絡しておくとよいでしょう。
 
熟慮期間内に相続放棄をしなかったときは、単純承認したものとみなされます(民法921条2号)。また、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときも、原則として単純承認したものとみなされます(民法921条1号)。
 
相続人が相続の放棄をした後でも、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私的にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときも単純承認したものとみなされます(民法921条3号)。
 
相続の開始を知った日から3ヶ月以内であっても、家庭裁判所に相続放棄が受理されると撤回は認められません(民法919条1項)。あとから財産が見つかっても相続放棄の撤回はできないので、相続財産の調査はしっかりしておきましょう。
 
ただし、詐欺または脅迫により相続放棄などの場合は、相続放棄を取り消せます(民法919条2項)。
 

相続放棄の手続き

相続放棄は、各相続人(相続人が未成年者または成年被後見人である場合には、その法定代理人が代理して申述します)が、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して申述する必要があります(民法938条)。
 
申述に必要な費用として、収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手が必要です。
 

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相続放棄しても影響のない事例 1

生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産であり、民法上の相続財産ではないので、受取人が相続放棄しても受け取れます。
 
相続税の計算をする際、受け取った死亡保険金は、「みなし相続財産」として、遺産総額に含められます。相続放棄をした相続人にも課税される可能性があります。一般に、相続人が受け取る死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」まで税金がかかりません(相続税法12条)。
 
他の相続人が死亡保険金を受け取った場合、非課税金額の計算上の法定相続人数は相続を放棄した者も含まれますが、相続を放棄した者には、非課税金額の適用を受けることはできません。
 

相続放棄しても影響のない事例 2

納付する相続税額の計算をするとき、まず、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税される遺産の総額(課税遺産総額)を計算することになります。
 
基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算されます。法定相続人の数は、相続放棄をした人がいたとしても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数です。
 
次に、課税遺産総額を、各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものと仮定して、法定相続人ごとの法定相続分に応じた取得金額を計算します。
 
この法定相続人ごとの法定相続分に応じた取得金額に税率を乗じて算出税額を求め、法定相続人ごとの算出税額を合計し相続税の総額を計算していきます。この相続税の総額を、財産を得た各人の課税価格に応じ割り振って、財産を得た各人ごとの税額を計算します。
 
最後に、各相続人等の税額から未成年者控除、配偶者の税額軽減などの税額控除額を差し引いたり、相続税の2割加算などを加算して各人の納付税額を算出します。
 
法定相続人が未成年者の場合、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額を税額から控除できます。未成年者が放棄している場合でも未成年者控除の適用を受けられます。
 

まとめ

相続放棄で重要な点は、先順位相続人が相続放棄すると、自動的に次順位相続人に相続が移る点です。トラブルのもとですので、次順位相続人に相続放棄を連絡しておくとよいでしょう。
 

出典

国税庁 No.4152 相続税の計算
相続放棄に関する民法の条文
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

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