父の遺言で兄が「7000万円」の遺産をすべて相続…遺留分を請求する予定だけど、兄の負担する税金も払わなければいけない?
配信日: 2025.02.26

ただし、遺留分を請求したときは税金が課されないかの確認も必要です。今回は、遺留分の概要や、遺留分を受け取ったときの相続税などについてご紹介します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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遺留分とは
遺留分とは、民法第1042条で定められている、亡くなった方の兄弟姉妹以外の法定相続人が受け取れる、相続財産の最低保障額の割合です。両親だけなど直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の3分の1、それ以外は2分の1を受け取れます。ただし、遺留分はあくまでも「請求できる権利」なので、自分から請求しないと受け取れません。
また、民法第1048条によると、「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする」と示されています。
つまり、遺留分があっても相続開始から10年以内か、遺留分があったことを知ったときから1年以内に請求しないと、時効が成立します。遺留分があると知ったときはできるだけ早く請求しましょう。
遺留分にも税金はかかる?
遺留分も相続財産のひとつなので、相続税の課税対象になります。遺留分の請求をした際に課される税金の対応は、遺留分の受け取りが相続税の申告前か後かで変わるため、注意しましょう。
もし、相続税の申告前に遺留分を受け取ったときは、通常の財産を相続したときと同様に、法定相続人がそれぞれ受け取った割合を基に計算し、納税します。一方、申告をした後に遺留分を受け取ったときは、場合によって修正申告や期限後申告が必要です。
例えば、亡くなった父親に子どもが2人いて、「長男に全財産を託す」と正式な遺言書を遺し、長男が相続財産をすべて受け取ったうえで、相続税の申告まで終わらせたとしましょう。この場合、申告時点では長男が必要な税金もすべて支払っています。
しかし、遺留分を次男が請求すると、長男の相続財産額が減少するため、長男は多く支払いすぎた分の還付請求である「更正の請求」を行えます。もし、長男が更正の請求をすると、次男は受け取った財産の金額に対する相続税の修正申告や期限後申告を行い納税が必要です。
長男が更正の請求をしなければ、相続税はすべて支払われている状態なので、次男は修正申告や期限後申告は必要ありません。また、申告期限内に訂正をした場合は、加算税や延滞税などのペナルティーも課されないでしょう。
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遺留分をもらったときの相続税額はいくら?
国税庁によれば、相続税の計算手順は以下の通りです。
(1)正味の遺産額から基礎控除額「3000万円+法定相続人数×600万円」を引く
(2)法定相続分通りに分けた場合の各相続人の税額を求める
(3)(2)の合計を実際に相続した遺産額の割合に応じて各相続人で分ける
(4)(3)の金額から控除があれば引いた金額が、各相続人が負担する税額
今回は、以下の条件で次男が遺留分を受け取ったときの相続税額を求めましょう。
●正味の遺産額は7000万円
●法定相続人は長男・次男の2人
●申告期限内に次男が遺留分を受け取った
●基礎控除以外の控除はない
今回のケースだと、当初の税額は320万円で、長男が全額を負担しています。しかし、次男が遺留分を請求すると、正味の遺産額のうち1750万円は次男の相続です。
条件を基に計算をし直すと、長男は240万円、次男は80万円の負担になります。もし、長男が支払いすぎた80万円の相続税に対し更正の請求をすると、次男は相続した分に対する80万円の税金負担が必要です。
なお、この税額は次男が相続した財産に対する税金を支払っているだけなので、長男の分も負担しているわけではありません。しかし、長男が更正の請求により80万円を受け取ったことで、「次男が長男の税金を負担した」と感じる可能性はあるでしょう。
遺留分で支払うのは自分が相続した分に対する税金
遺留分は、亡くなった方の配偶者や子どもなど一定の相続人に対して、最低限保障されている相続財産の割合のことです。もし、遺言書で全額を子どものなかの1人に相続すると示されていても、遺留分は請求できます。
ただし、遺留分を受け取ったときは、受け取った相続財産の割合に対して相続税の納税が必要になるケースもあります。最初に相続財産を受け取っていた方が更正の請求をするのかしないのかで、遺留分を請求した際の対応が変わるので、確認しておきましょう。
出典
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第五編 相続 第九章 遺留分 第千四十二条(遺留分の帰属及びその割合)、第千四十八条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版) 財産を相続したとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
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