「故人のスマホが開けられず、サブスクを止められなかった」と友人から聞きました。私の親も70代、デジタル終活はどのように進めたらいいですか?
配信日: 2025.03.14

その後、クレジットカードの不明な利用を見つけ、カード会社に問い合わせると「解約したスマホのセキュリティのサブスクと思われる」とのこと。業者に問い合わせると、「ID・パスワードが分からない場合はすぐに解約できない」と言われて困ってしまったそうです。
私の70代の親もスマホを使っているので、ひとごとではありません。

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
パスワードが分からなくてデジタル遺品が開けられない
スマホには、電話やメール、メッセージやビデオ通話といった通信機能の他、写真や動画撮影などの便利な機能があります。データも保存できて、必要なときに取り出し楽しめます。パソコンを使えない方でも、スマホがあればインターネットを利用でき、ネット通販、ネット銀行、ネット証券等など、さまざまな契約ができます。
亡くなった方がパソコンやスマホを使用していた場合、パソコンやスマホにはさまざまなデータや契約情報が入っています。葬儀の際に使える情報や相続財産になる契約など、「デジタル遺品」となったデータの確認をしなければなりません。
被相続人が亡くなられた時点で所有していた、金銭に見積もれるすべての財産が相続税の対象になるからです。交友関係や写真など、葬儀に関わる情報も必要になります。
しかし、遺族がパスワードを知らされていない場合、スマホやパソコンを開けることが困難です。
ここで、「デジタル遺品」に明確な定義はありませんが、国民生活センター令和6年11月20日の報道発表資料では、「デジタル機器を通して確認できるデータやインターネットで契約したサービス(アカウントも含め)を指し、パソコンやスマホなどのデジタル機器そのものは含まない」とあります。
契約情報が分からないと解約ができない
スマホを開けられたら、次に「どこと何を契約したか」を見つけなければなりません。開けられなくても、カードの引き落としや契約書面で見つけられる場合もあります。株の取引のある・なしは、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求(有料)することで、証券口座の開設先を知れます。
故人がネット銀行やネット証券、コード決済などを利用していた場合、相続するために、死亡の事実や相続人が確認できる書類が必要になります。
相続税の申告は、亡くなった次の日から10ヶ月以内にしなければならないので、相続財産の確認が急がれますが、そもそもどこと契約していたのか分からないと相続財産の確認ができません。
また、サブスク契約は、解約しない限り請求が続きます。事業者は契約者が亡くなったことなど分からないので、相続人が解約手続きをする必要があります。契約に使ったスマホの解約をしても、サブスクや金融機関の契約はそれぞれ別の解約であるため、契約は続きます。
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デジタル遺品で困らないために、今やっておくこと
まず、万が一のときに遺族がパソコンやスマホのロックを解除できるようにしておくことが必要です。
ただし、第3者に知られないようにすることと、日頃から共有することはトラブルになることがあるので、国民生活センター「くらしの豆知識」(2023年版、2024年版)で、修正テープを用いた工夫を紹介しています。
<手順1>
名刺大の紙にパスワード等を記入し、パスワード部分に修正テープを2~3回重ね貼りしてマスキングして保管しておきます。または、実際のパスワードを書かず、家族にだけ分かる合言葉(「パートナーの誕生日」)などを記載する方法もあります。
そのカードを、万が一のときに見つかるようにサイフの中とかに入れておき、非常時に使えるようにしておくとよいでしょう。
<手順2>
遺族が必要なときにコインなどで修正テープ部分を削ってパスワードを知ってもらいます。もし、他者が修正テープ部分を削ってパスワードを見たり知ったりしたことに気付いた際は、パスワードを即時に変更するなどして対処するといいでしょう。
ネット上の契約については、ID・パスワードを整理しておくことが大切ですが、契約書面等で契約先事業者さえ分かれば、遺族が直接事業者に連絡すると解約等に応じてもらえます。
また、パスワードを管理する機能を利用する、エンディングノートに記しておく、自分のアカウントにアクセスできる人を登録しておくという方法もあります。
親御さんには以上の方法を参考にしてもらい、思い出は残しつつトラブルは残さないよう、遺された家族が困らないように早めに対策を立てもらいましょう。
出典
独立行政法人国民生活センター 今から考えておきたい「デジタル終活」 -スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-令和6年11月20日報道発表資料
国税庁 相続のあらまし
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者