息子の就職祝いに「ハスラー」を買ってあげました。 160万円ほどでしたが「贈与税」はかかりますか? 通勤用なら問題ないでしょうか?
配信日: 2025.03.15

しかし、親が子どもに自動車をプレゼントした場合、贈与税の対象となることがあるため注意しなければなりません。本記事では、親が子どもに車をあげた場合に贈与税はかかるのか、かかる場合はいくらかかるのか、そして回避する方法はあるのかを解説します。

執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
160万円の車に対する贈与税は? 家族間でも課税対象になる?
1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産が合計110万円を超えると、贈与税の支払い義務が生じます。「年間110万円を超えたら」といわれる理由は、贈与税には110万円の基礎控除があるからです。
例えば、1年間で合計200万円の贈与を受けた場合、200万円から110万円を引いた90万円が課税対象となります。110万円以下なら基礎控除で全て引けてしまうので贈与税がかからないということになります。
現金はもちろん、車や土地、貴金属などをもらった場合にも贈与税はかかります。そのため、160万円のハスラーも原則として贈与税の対象となる財産です。
贈与税は累進課税の仕組みになっており、贈与額が多いほど税率が上がります。課税対象額が200万円以下の場合、税率は10%です。160万円のハスラーをもらった場合は、「160万円-110万円」の50万円が贈与税対象となり、その10%にあたる5万円を贈与税として支払う必要があります。
ただし、親子や夫婦、兄弟姉妹などの扶養義務者からもらった「通常の日常生活に必要な費用」には贈与税がかかりません。今回のハスラーも「生活必需品」と認められる場合は、贈与税が発生しないことになります。
車は生活に必要なもの?
車が「通常の日常生活に必要な費用」に該当するかどうかを考えていきましょう。結論から申し上げると、その判断はその人の生活環境や車の種類によって変わってきます。
例えば、公共交通機関が発達しておらず、車がなければ通勤や生活が困難な地域では、車が「通常の日常生活に必要なもの」と認められる可能性は高いでしょう。そうした場合、今回のハスラーの贈与は、贈与税の対象とはなりません。
一方、都市部に住んでいて公共交通機関が充実している場合や、高級車を贈与された場合は、「生活必需品ではなくぜいたく品」とみなされ、贈与税が発生する可能性があります。
明確な線引きの基準があるのではなく、最終的には税務署が個別に判断することです。判断に迷う場合は、専門家に相談するのが無難でしょう。
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贈与税を回避する方法は?
「通常の日常生活に必要なもの」と認められなかった場合、160万円のハスラーは贈与税の対象となる可能性があります。ただし、贈与税を避けるための方法がいくつかあります。
その1つが、前記した通り、1年間の贈与額を110万円以下に抑えることです。贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、今回のケースのように160万円のハスラー購入費を渡したいのであれば、1年目に100万円、2年目に60万円を贈与すれば贈与税はかかりません(ただし購入できるのは受取額が160万円となる2年目以降となりますが)。
また、車の所有者を親の名義にしておき、子どもに貸すのも1つの方法です。所有権が親にある場合、車の譲渡とはみなされず、贈与税の対象にはなりません。
ただし、自動車保険の契約に注意が必要で、子どもが運転しても補償される保険契約にしておく必要があります。税金などの支払いについてもあらかじめ話し合い、負担のルールを決めておきましょう。
贈与に該当しないための対応が難しい、面倒だと思う場合、160万円の贈与に対する贈与税は5万円なので、潔く贈与税を支払ってしまうというのも賢い選択肢かもしれません。
税務署があとから贈与と認定した場合、本来の贈与税に加えて延滞税や無申告加算税が発生します。ずるずると対応を後延ばしにして、延滞税や無申告加算税などが発生してしまうよりは、最初から贈与として申告しておいたほうが安心です。
贈与税がかかるかどうかはケースバイケース
親から子どもへの110万円を超える車のプレゼントに対して、車が生活必需品と認められた場合は贈与税がかかりません。しかし、生活必需品かの判断は難しく、あとから「実は課税対象だった」となる可能性もあります。
2年に分けて基礎控除の範囲内で贈与する、プレゼントではなく貸与にするなど、生活必需品ではなくても贈与税がかからない方法も検討したいところです。また、160万円の贈与に対する贈与税は5万円なので、いっそ贈与税を払ってしまうのも1つの選択肢です。
思わぬ負担を避けるためにも、自分に合った対策を考えましょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士