年金生活になり、生命保険の保険料が負担になってきました。息子が「代わりに保険料を支払う」と言っているのですが、どのような方法がありますか?
配信日: 2025.03.17


執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
契約者変更
契約者は、保険契約上のいろいろな権利(契約内容変更の請求権など)と義務(保険料の払い込みの義務など)を持ちます。契約者は、被保険者および生命保険会社の同意を得て、契約上の一切の権利義務を第三者に変更できます。
契約者(保険料負担者)や受取人を変更することによって、適用される税金が変わります。変更した時点では、旧契約者から新契約者へ財産の移転があったものとは考えませんので課税されることはありませんが、その後、保険金や解約返戻金を受け取ったときに保険料負担者と受取人との関係で課税されます。
契約者変更後に新契約者が引き続き保険料を支払っていた場合は、保険料負担者が2人いるので2種類の税金がかかる可能性があります。
具体例で見てみましょう。
契約者(保険料負担者)および被保険者が父、死亡保険金受取人が子の保険契約の契約者を、次のように父が生存中に子に変更した場合の課税関係を考えてみましょう。
契約者:父→子
被保険者:父→父
死亡保険金受取人:子→子
変更後に子が生命保険契約を解約すると、契約者である子は解約返戻金を受け取れます。変更時には課税関係は生じませんが解約返戻金を受け取ったときに課税関係が生じます。
すなわち、解約返戻金受取額のうち父が負担した保険料割合相当額は、父から子への贈与として贈与税が課税されます。解約返戻金受取額のうち子が負担した保険料割合相当額は、一時所得に該当し所得税・住民税が課税されます。
なお、一時所得の金額の計算上、収入を得るために支出した金額は、契約者変更後に子が負担した保険料の額になります(所得税基本通達34-4)。
死亡保険金を受け取ったとき、変更後は死亡保険金受取額のうち子が負担した保険料割合相当額は、一時所得に該当し所得税・住民税が課税されます。父が負担した保険料割合相当額は相続税の課税対象となります。
保険料贈与
父親の保険料負担を軽減する方法として、保険料贈与という方法もあります。これは、子から贈与された現金で父親が保険料を支払う方法です。贈与額が年間110万円の基礎控除を超えなければ贈与税は非課税になり、贈与税申告も必要ありません。
ただし、保険料贈与を税務署に否認されないためには次の点に留意する必要があります。
■毎年贈与契約書を2部作成し、できれば公証役場で確定日付をもらう
■なるべく年間110万円を超える額を贈与し、毎年贈与税の申告書を提出し、保管して贈与の証拠を残しておく
■毎年、子(贈与者)は父親(受贈者)の銀行預金口座に現金を振り込み、かつ、その銀行預金保険料を支払うようにする
■贈与した保険料は、子(贈与者)は生命保険料控除の対象としない。生命保険料控除は父親が利用する
契約者(保険料負担者)および被保険が父、死亡保険金受取人が子、の保険契約で課税関係を考えてみましょう。
生命保険契約を解約すると、契約者である父親は解約返戻金を受け取れ、受け取った解約返戻金は一時所得に該当し所得税・住民税が課税されます。父親に万一のとき、子が受け取る死亡保険金は相続税の課税対象となります。
出典
国税庁 生命保険契約について契約者変更があった場合
公益財団法人生命保険文化センター Q. 契約者や受取人を途中で変更した場合の税金は?
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断