久しぶりに帰省したら父から相続した土地が荒れていました。売れそうもない土地…… どうしたらいいですか?
配信日: 2025.03.21

しかし、友人の話を聞いていると、なかなかハードルが高い制度ということまでは分かったのですが、実際にご自身の土地が当てはまっているかどうかが分かりません。
今回は「相続土地国庫帰属制度」について見ていきます。

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈により土地の所有権や共有持分を取得した場合、一定条件を満たした土地にかぎり国が引き取るという制度で、令和5年4月27日に施行された制度です。
特に、その土地が遠方にあり利用する予定がない場合や、所有による維持管理費用の負担が多い、Aさんのように放置してそれを維持するには手間や労力がかかる場合などがその対象となりやすいです。申請には審査手数料および負担金が必要で、申請は土地の所在する法務局の本局に申請します。
大まかな流れは、まずは法務局への相談、その後申請書類の作成・提出、そして負担金の納付となります。その際の登記については国が行いますので申請者(所有者)が行う必要はありません。
申請できる人は? どのような土地が申請対象なの?
申請できるのは、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した場合で、売買など自ら土地を取得した人や、相続等で土地を取得することができない法人は、基本的に利用はできません。
また、 相続等で土地の共有持分を取得した共有者は、共有者の全員が共同して申請を行うことができ、この制度の前に同様な方法で取得した場合も申請は可能です。
土地の管理にかかる費用を不当に国へ負担させたり、モラルハザードの発生を防止したりするため、国庫帰属の条件が法律で具体的に定められています。以下の条件のいずれかに該当する土地は、却下または不承認となり国庫帰属ができません。
まず、却下となる(申請することができない)場合は以下のとおりです。
●建物がある土地
●担保権や使用収益権が設定されている土地
●他人の利用が予定されている土地
●土壌汚染されている土地
●境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
次に、不承認となる場合は以下のとおりです。
●一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
●土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
●土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
●隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
●その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
申請方法や費用は?
申請方法は、法務局の窓口または郵送で、帰属の承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の不動産登記部門に提出します。
申請書類は、
(1) 申請書
(2) 承認申請に係る土地の位置および範囲を明らかにする図面
(3) 承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
(4) 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
(5) 申請者の印鑑証明書
これ以外にも必要書類がある場合がありますので事前の相談で聞くことをお勧めします。
また、費用として「審査手数料」が土地一筆当たり1万4000円かかり、申請時に申請書に審査手数料の額に相当する額の収入印紙を貼って納付します。
注意点は、審査手数料は土地一筆ごとに納付が必要であり、隣接した複数の土地について申請を行う場合であっても合算はできず、納付後に申請を取り下げた場合や審査結果で却下や不承認となっても、審査手数料を返還されません。
そして、土地所有権の国庫への帰属の承認を受けた場合、承認された土地について、国有地の種目ごとに管理に必要な標準的費用の10年分を基準として算定された「負担金」を納める必要があります。
この10年分の管理費用相当額の納付が必要となるのは、帰属の承認を受けたときの一度のみです。ちなみに、宅地や田畑の場合は面積にかかわらず原則20万円です。
実際の費用はこれだけで済みません
上記のとおり、境界が明らかでないと申請はできません。つまりその時点で境界が不明あるいは決まっていない場合は決めなければいけませんし、それ以外にもさまざまな費用が発生します。実際に申請が認められるかどうかも分かりませんが、とにかく行動してみないと先には進みません。
ただ、せっかくの制度ですので、専門家等に相談しながら進めていくことも考えてみてはいかがでしょうか。
出典
法務省 相続土地国庫帰属制度のご案内[第2版]
内閣府 政府広報オンライン 相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表