実家は隣の家との境が分かりづらいです。相続するときに不安なのですが、注意すべきことはありますか?

配信日: 2025.03.21

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実家は隣の家との境が分かりづらいです。相続するときに不安なのですが、注意すべきことはありますか?
帰省したときに、実家のまわりを散歩したAさん。ご自身の家は隣との境が明確なのですが、実家はどこまでがうちの敷地なのかよく分からなかったそうです。将来的には実家に戻ることはないので、相続したら売却を考えているそうですが、不鮮明な境界の場合にどのようなことに注意しておいたほうがいいのか知っておきたいとのことです。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

地籍・地籍調査とは

まず「地籍」とは、土地に関する戸籍のことです。そして地籍調査とは、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査することで、境界の位置や面積を測量しています。
 
日本人に戸籍があるように、土地についても「地籍」の情報がさまざまな場面で活用されています。
 
日本では、土地に関する記録は登記所において管理されていますが、土地の形状や位置等を示す情報として登記所にある地図・図面は、その半分ほどが明治時代の地租改正時に作られた地図などをもとにしたものです。
 
そのため、登記所にある地図や図面は、境界・形状などが現実の状態と異なっているケースが多くあり、土地の面積についても正確ではないことがあります。
 
そこで地籍調査を行い、土地境界をめぐる紛争を未然に防止することや、土地取引の円滑化や土地資産の保全を図るために行われています。そして、地籍調査が行われることにより、その成果は登記所にも送られて、登記簿の記載が修正され、地図が更新されます。

<調査の流れ>

1. 市町村において地籍調査の実施計画を作成
2. 調査実施地域の住民の方への地元説明会を行う
3. 土地の境界の確認(一筆地調査)
3. 確認した境界の測量(地籍測量)
4. 地籍簿の作成
5. 地籍調査の結果を確認(閲覧)
6. 地籍調査の成果を登記所へ送付

地籍調査自体は昭和26年から実施されていますが、土地境界の調査にあたっては、現地調査等において、土地の所有者等に現地での立ち会い等を得て実施します。ただし、その所有者等が現地調査等に協力してくれない場合は、当該土地は周辺の土地を含めて「筆界未定」なる可能性があり、令和5年末時点では53%しか進んでいません。
 
このような状況では、贈与や売買等で分筆したい場合に分筆できないなど、取引時にさまざまな問題が出てしまいます。
 

土地境界のみなし確認制度とは

土地境界のみなし確認制度とは、土地の現地調査等で複数回の通知を行っても土地の所有者や利害関係人等から反応がない場合、その土地の所有者等に筆界案を送付し、20日以上経過しても意見等の申し出がなければ、その所有者等が筆界の確認とみなし、調査ができることとした制度です。本制度は2024年6月28日に公布され、7月から施行されました。
 

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どのように変わったの? 流れはどうなるの? 費用は?

土地の境界を確認する現地調査等の通知に無反応な所有者等がいる場合、以下の流れで手続きを進められるようになりました。

1. 現地調査等の通知に反応がない所有者等に対して、地籍調査実施者(市町村等)が当該所有者等へ書留郵便等で図面等調査の通知を送付
 
2. (1の通知が届いているが所有者等から応答がない場合)地籍調査実施者(市町村等)が筆界(登記により区画された土地境界)に関する情報を総合的に考慮し筆界案を作成
 
3. 地籍調査実施者(市町村等)が筆界案を当該所有者等へ書留郵便等で送付
 
4. (当該筆界案が到達した日から20日間に当該所有者等が意見申し出をしない場合)当該所有者等による筆界案の確認があったものとみなす

 
※国土交通省 地籍調査Webサイト「土地境界のみなし確認制度(無反応土地所有者への対応)の創設」より

もちろん、「反応がない場合」の流れですので、立ち会いや図面等調査を積極的に拒まれる場合や、そもそも図面等調査の通知、および筆界案の到達が確認できない場合は対象外となります。また、調査等の費用は国や都道府県、市町村の負担となりますので、所有者等が費用を負担することはありません。
 

もし境界が不明だったら

Aさんは将来的には売却を考えているとのことですが、もし隣地の方と連絡が取れなければ取引ができなくなる可能性もあります。しかし、この制度ができたことにより、売買が困難な土地もスムーズに取引できるようになるかもしれません。
 
また前述のとおり、所有者等に対し費用はかかりませんので、その土地の自治体に問い合わせるようにしましょう。
 

出典

国土交通省 地籍調査Webサイト 土地境界のみなし確認制度(無反応土地所有者への対応)の創設
国土交通省 地籍調査Webサイト 地質調査の概要
国土交通省 地籍調査Webサイト 全国の地籍調査の実施状況
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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