相続財産の中に利用する予定がない「土地」があります。管理が大変なので手放したいと思いますが、一部の財産の「相続放棄」はできないので困っています。どうしたらいいですか?
配信日: 2025.04.14


執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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相続土地国庫帰属制度とは
この制度の背景には、「土地利用のニーズの低下等によって、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える者が増加している」「相続を契機に、望まずに土地を得た所有者の負担感が増加しており、管理の不全化を招いている」といった事情があり、相続土地国庫帰属制度が創設されました。
相続等によって、土地の所有権または共有持ち分を取得した者等から申請があった場合に、その土地が通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたものに当たらないと法務大臣(法務局)が判断したとき、土地の所有権の国庫への帰属について承認されます。審査手数料の金額は、土地一筆当たり1万4000円です。
土地の所有権について国庫帰属の承認を受けた方が、10年分の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属します。以後、普通財産として、国が管理・処分します。
管理コストの国への転嫁や土地管理をおろそかにするモラルハザード(倫理観の欠如)が発生するおそれを考慮して、土地の要件や負担金等一定の要件を課しています。この制度により、土地が管理できず放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防することが可能になります。
申請先は、帰属の承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)です。法務局や地方法務局の支局・出張所で、承認申請の受付はできません。
ただし、すべての土地を国庫に帰属させることができるわけではありません。次に土地の却下要件、不承認要件を確認しておきましょう。
土地の却下要件
土地が次のいずれかに該当するものであるときは、承認申請をすることができません。ただちに通常の管理・処分をするにあたり、過分の費用・労力を要すると扱われるからです。
1. 建物の存する土地
2. 担保権または使用、および収益を目的とする権利が設定されている土地
3. 通路その他の他人による使用が予定される土地(墓地、境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地)が含まれる土地
4. 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
5. 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
(出典:法務省 相続土地国庫帰属制度について)
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土地の不承認要件
費用・労力の過分性について個別の判断を要するものとして、次の場合は承認を受けられません。
1. 崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5m以上のもの)がある土地のうち、通常の管理をするに当たり過分の費用、または労力を要するもの
2. 土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木その他の有体物が地上に存する土地
3. 除去しなければ土地の通常の管理または処分をできない有体物が地下に存する土地
4. 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理または処分できない土地(隣接所有者等により現に通行が妨害されている土地、所有権に基づく使用収益が現に妨害されている土地)
5. 通常の管理または処分をするにあたり、過分の費用または労力を要する土地
負担金
国有財産の過去に要した管理費用を参考に、国が土地を管理するための10年分の費用の相当額として20万円が基本となります。ただし、以下に記したようなケースでは、土地の面積に応じるかたちで、20万円以上の負担金が必要になります。
●市街化区域等の宅地・農地
●森林
たとえば森林の場合、1500平方メートル 約27万円、3000平方メートル 約30万円などです。
まとめ
土地を国に引き取ってもらうためには、厳しい土地の要件を満たす必要があります。また、申請者は一定の負担金が必要になります。これらの条件をよく確認した上で、相続土地国庫帰属制度の利用を検討しましょう。
出典
法務省 相続土地国庫帰属制度について
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。